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半導体研究「LSTC」、2ナノの先見据え開発・育成主導

最先端の半導体研究を手掛ける技術組合「LSTC」(技術研究組合最先端半導体技術センター)が本格的に始動した。国内外の産学プレーヤーを集めた研究プロジェクトの主導役を担う。最初のチャレンジは2つ。最先端の「2ナノ(ナノは10億分の1)」世代とその先を見据えた製造技術、先端半導体の搭載に向けた設計技術の開発だ。

LSTCは先端半導体の製造を目指すラピダスに加え、産業技術総合研究所、理化学研究所などを組合員に、東京大学や名古屋大学などを準組合員とした組織だ。ラピダスが創業した2022年に設立し、24年2月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業「先端半導体製造技術の開発」の実施事業者に選ばれた。

「技術開発だけでなく、アプリケーションの開発、さらにはそれを生み出す人材の育成までやっていく。日本で新しいものを目指すエンジンができた」。今回の公募事業での採択を受け、LSTC理事長を務める東哲郎氏は2月9日の記者会見でこう力を込めた。プロジェクトは2029年までの5年で製造技術には170億円、設計技術の開発には280億円が投じられる。

1つめの製造技術は、最先端半導体を、より短い時間で製造するための装置や素材も含む技術開発がテーマとなる。

  • >>6775

    2ナノ世代の半導体を製造する技術的ハードルが新たな素子構造だ。回路の微細化で、一種の漏電(リーク電流)を抑えにくくなった。水(電気)が流れるホースで例えると、3方向から押さえ水を止めていた現在の構造から、全方向から押さえ込む「GAA(ゲートオールアラウンド)」という新構造への切り替えが必要になった。

    微細化や複雑化によって、半導体の製造工程は伸び続けている。新たな構造の素子をどれだけ短期間で作れるかが2ナノ世代の製造立ち上げを掲げるラピダスの課題だ。基礎的な研究開発だけでなく、素材、装置など要素技術の協調が欠かせない領域となる。

  • >>6775

    研究開発の再委託先として国内外の企業が並ぶ。米装置大手アプライドマテリアル(AMAT)の日本法人に加え、ウエハー(基板)のSUMCOや台湾グローバルウェハーズの日本法人、他に人工知能(AI)開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)や半導体メモリー製造のキオクシアなどだ。

    加えて国際連携先として、ベルギーのimec、仏CEA-Leti(原子力・代替エネルギー庁電子情報技術研究所)などの名前も挙がる。

    東氏は「ラピダスの事業化がある程度確立した段階で、より広範な形で先端の技術分野に(対象を)広げていく」と語る。GAAの次世代構造も既に議論や開発が進んでいるテーマとなっており、LSTCでもこうした「2ナノ以降」の技術世代も視野に入る。

    2つ目のプロジェクトである設計技術の狙いは「最先端半導体を使いやすくする」ことにある。LSTCは最先端半導体の有望な活用先として、エッジ(端末)側のAI処理を想定する。現場で稼働するロボットなどがネットを介さず処理を済ませ、遅延なく自律的に動かすような用途だ。産総研、東大、ラピダスに加え、海外からは米新興のテンストレントが参加する。

    テンストレントのジム・ケラー最高経営責任者(CEO)は後日開いた会見で「ロボットやゲームなど、エッジ側でリアルタイムのAI処理を必要としている最終製品は多い」と語った。ただ、「AI用カードに2000ドルもするようなものは買われない。安価で手に入りやすい製品を迅速に提供する必要がある」と指摘する。

  • >>6775

    ソフトウエアの基盤も整備

    半導体を最終製品に組み込む企業にとって、欠かせないのがソフトウエア側の基盤だ。まずは半導体の機能ごとの「設計図」にあたる回路設計データ(IP)が必要になる。このIPを用途やコストに適した回路を作り上げていく。加えて、半導体を動かすには、プログラム群やシミュレーターなどソフト側の基盤も整えなければならない。

    LSTCの新産業創出部門、大内真一氏は「世界的に使われている開発環境と、新たなハードをつなぐプロジェクトだ。様々なユーザーが開発に使える技術にしていく」と話す。先端設計に関する人材が「日本で非常に不足している」(大内氏)中で、教育プログラムも含め検討しているという。

    LSTCで得られた研究結果は、組合員企業が優先的に導入し、他のメーカーなどにも展開していく考えという。焦点は、プロジェクトに参加するプレーヤーの足並みをそろえられるかだ。装置・素材、ソフトとも膨大な企業群がエコシステムを築いてきた。必要な知見は散在しており、先端の要素技術は各プレーヤーの競争力の源泉でもある。

    LSTCでは知的財産管理室を置き、知財の管理などを担う。世界の半導体関連企業が参加するimecのような国際的機関との協力では、技術だけでなく、知財や仕組み作りの面などからも学ぶべき点は多い。