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AIのウィンブルドン現象 日本の勝ち筋は「産業データ」

コンピューターがヒトの能力をあらゆる面で上回る「シンギュラリティー(技術的特異点)」の提唱者で、人工知能(AI)研究者のレイ・カーツワイル氏が6月に新刊を出版する。

「シンギュラリティは近い」という19年前の著書の続編で、「近い(ニア)」の部分を「より近い(ニアラー)」に改めてタイトルにするそうだ。米テキサス州で3月に開かれた技術や音楽・映画の催し「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で明らかにしている。

米IT(情報技術)産業の熱気を象徴する本かもしれない。生成AIは爆発的な勢いで世界的に利用が拡大し、日本でも「GAFAM」など各社が大型投資を表明する動きが続く。

  • >>6464

    巨額投資を促す経験則

    AI学習に不可欠なデータセンターへの投資額は日本向けだけで年明け以降、約4兆円(米企業が発表した計画の合計)にのぼるという。海外勢に圧倒され、国内勢の影が薄い、という点では1990年代のインターネットの普及期と似ている。AIの時代も、このテニス界に由来する「ウィンブルドン現象」、門戸を開いたことで海外勢の席巻を招いてしまう可能性がありそうだ。

    米国勢が巨額投資をする楽観論の背景には、本欄でも以前触れた機械学習における「スケーリング則」と呼ばれる経験則がある。

    「チャットGPT」のオープンAI、グーグルなどが公開した資料によれば、学習の計算量、データの量、AIの性能・規模を示すパラメーター数の3つが大きくなればなるほど、AIを動かす大規模言語モデル(LLM)はより正しい答え(文章なら、文脈に応じて後に続く的確な単語など)を絞り出せるようになる。

    例えば、計算量では「10の22〜24乗」を超えるあたりから、AIの推論能力は飛躍的に向上するという。「エマージェント・アビリティーズ(能力創発)」と呼ばれる現象で、理由はまだはっきりわからないが、とにかく計算回数などが一定のレベルを超えるかどうかが、生成AIの進化を左右する。ある温度を境に水が氷になったり、蒸気になったりする「相転移」と似た現象だ。

  • >>6464

    日本勢は「特化型」で勝負

    AIの進化はアルゴリズム(計算手法)の良しあしにもちろん影響される。だが、より重要なのは、3つの要素がそろって大きくなること、さらには能力創発の波に乗ることで、それらを満たせば、どれぐらいの投資をしたらAIがどの程度進歩するか、がかなりの確度で予測可能になることだ。

    だからこそ、GAFAMやオープンAIは巨額を投じて、他の企業が追随不可能な域にまで真っ先に到達してしまおうと動く。投資の目的は大規模言語モデルの一段の大規模化で、突き詰めていえば、学習に使う米半導体大手、エヌビディアの高額な画像処理半導体(GPU)を大量に調達したり、新たな高性能チップを開発したりすることにある。

    日本企業はおそらく、そうした投資競争にまともについていくのは難しい。財務基盤に大きな差があるほか、学習に使えるインターネット上のデータ量でも米国勢が優位にある。

    主要企業でいえば、ソフトバンクNTT、プリファード・ネットワークス(PFN、東京・千代田)がLLMの開発を進めたり、サービスを始めたりしているが、やはりGAFAMに真正面から競争を挑もうとしているわけではない。

    PFNの岡野原大輔・代表兼最高研究責任者は「日本として世界水準の技術を持つべきだから、米国勢の動向には注目していきたい」とする一方、「収益の追い方は色々考えられる」と話す。

    LLMとしては、まず「中規模をめざす」(同)という。注目するのは法人需要だ。企業や自治体には自社向けなどに特化し、安全性と競争力を備えた「特化型LLM」を持ちたいというニーズが大きいとされる。

    ひとつの戦略だろう。米国勢を考えれば、まずはスケーリング則の限界を探ろうとするような投資の仕方が目立っており、顧客に近づく収益モデルは必ずしも確立されているわけではない。

    一方で、日本は自動車など製造業が強く、研究開発や生産、販売現場から日々生まれるデータが豊富だ。戦う場所を絞りやすいかもしれない。

  • >>6464

    データ持つ企業との連携カギに

    ただし、「産業データ」は難しい世界でもある。企業にとって価値の源泉であり、普段はクラウド上でデータを保管・管理しつつも、外部の企業に簡単に渡すことはしない。例えば、半導体の性能を左右するシリコンウエハーの大手メーカーの中には、データの取り扱いがとりわけ慎重で、技術者の論文全般を外部に公開することさえ禁じている企業もある。

    どんなに優れたLLMでも、公開情報が存在しない最先端分野では何もできない、という一例である。データを持つ企業と連携し、そこをどう新市場に変えていけるかだ。

    GAFAMが築いたネット時代の勝ち筋は、個人向けの広告や電子商取引、アプリ販売だった。AI時代は顧客企業と一緒に、ネット上より情報量が多いともいわれる産業データから付加価値を生み出す。そういう戦いになるのではないか。日本がウィンブルドン現象をはね返せるかどうかも、主導権をそこで握れるか否かにかかっている可能性がある。