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郵船、エコシップけん引「国内造船復権最後のチャンス」

日本郵船が国内造船会社の次世代エコシップ開発をけん引している。中国勢など海外勢に頼る液化天然ガス(LNG)船などの発注先や開発パートナーを日本の造船会社に切り替え始めた。有事に備え国内の建造力を底上げし、アンモニアや電気運搬船の開発や運航などで先行し世界標準(デファクト)を目指す。

4月24日。スタートアップのパワーエックス(東京・港)が蓄電池を積んだ船から電気を系統電源につなぐ取り組みに関する覚書を東京電力パワーグリッドや横浜市と交わした。洋上風力でできた電気を横浜の臨海部まで運び、東電の系統につなぐ計画だ。

  • >>6421

    世界初となる電気運搬船を開発するパワーエックスには大手電力や商社に加え、日本郵船も出資者に名を連ねる。大手商船会社のなかで出資するのは郵船だけだ。建造は造船最大手の今治造船だ。

    「電気運搬船の開発はチャンスだ。日本の造船業が主導権を取れば復権につながる」と郵船の長沢仁志会長は話す。

    郵船はアンモニア燃料船の開発でも先頭を走る。アンモニアは燃やしても二酸化炭素(CO2)が発生しないため、次世代エコシップの有力候補として期待されている。1月に今治造船と国内2位のJMUの共同出資会社、日本シップヤード(NSY)やジャパンエンジンコーポレーションなど国内4社で26年に世界初のアンモニア燃料船を完成させると発表した。

    これに続き、4月に川崎汽船や三井E&Sなど6社も共同開発すると発表した。同船は中国の大連船舶重工や韓国のサムスン重工業なども開発を進めている。日本勢は「オールジャパン」の体制で開発を急ぎ、デファクトを狙う。

  • >>6421

    「復権のラストチャンスだ」。長沢会長は国内造船に対して言い切る。電気運搬船やアンモニア船以外にも、日本郵船は液化水素や液化CO2運搬船など世界初の船種開発に国内造船会社を巻き込んで取り組んでいる。

    アンモニアは毒性があり、船室などに漏れれば乗務員などに影響がでる。電気運搬船も漏電のほか、バッテリーが重いため、船のスペック(性能)をどう設定するか難しい。船の開発や建造が難航する懸念もあるほか、投資もかさむ。

    ただ、新型コロナウイルス禍に伴う「コンテナ特需」で厚みを増した財務が日本郵船のこうした「先行投資」を可能にしている。コロナ禍の20〜22年度での累計フリーキャッシュフローは1兆円を超す。これらを原資に26年度までの4年間で次世代エコシップの開発に2900億円をあてる。

    重油を燃料とする従来の船に比べ投資回収までに時間はかかるが、「CO2はこれからコストとなる。次世代エコシップをいち早く航行させることで排出量取引などで相殺して負担を軽減する」(同)という戦略を描く。

  • >>6421

    さらに長沢会長が国内造船とタッグを組む必要性を強調するのは、経済安全保障の問題が日増しに高まっているからだ。

    資源や食料など貿易の99.5%(重量ベース)で海上輸送に依存する日本にとって海運は不可欠な産業だ。日本の海運会社に属する商船隊の総重量もギリシャや中国に次いで世界3位を占める。

    だが、肝心のエネルギーの海上輸送は脆弱だ。なかでもLNG運搬船に関しては韓国と中国でほぼ100%のシェアを握っており、一方の日本勢は16年から受注ゼロの状況が続く。台湾有事などが起きれば中国製のLNG運搬船の調達はほぼできなくなる。22年のロシアによるウクライナ侵略では各国の制裁の影響もあり、ロシア海運大手との合弁会社でロシア側の出資分を買い取り合弁を解消した。「国対国の制裁となると企業では全くどうしようもない」と長沢会長は危機感を強める。

    LNGは運ぶにはマイナス162度まで冷やす必要があるため、専用の貯蔵タンクの製造が鍵を握る。折からのLNG船ブームで独自の技能をもったエンジニアを中韓勢が引き抜いた。このため日本勢は人員やノウハウが枯渇、受注が中韓勢に流れた経緯がある。

  • >>6421

    こうした状況を打開するため、日本郵船は21年にLNGを燃料に使う自動車専用船を新来島どっく(愛媛県今治市)とNSYに発注した。受注した造船会社の採算がとれるように両社に6隻ずつまとまった量を発注した。この結果、鍵を握るLNGの燃料タンクも中国からの輸入から切り替えて、新来島とNSYは内製化できるように設備を新設した。将来的には日本国内の造船所でのLNG運搬・燃料船の建造にこぎ着けたい考えだ。

    日本郵船以外の海運各社も思いは同じだ。商船三井も23〜25年度までの3年間でエコシップ開発を含めた船の脱炭素化に3500億円を投じる。21〜23年間の910億円から大幅に増やす。川崎汽船もエコシップ開発に26年度までの5年間で2500億円を投じる。「オールジャパンの取り組みを推進したい」(明珍幸一社長)と語る。

    長沢会長は「日本の造船会社を支援するためにも技術開発などで連携する形はあるだろう。中国の造船所に全て頼れないことは海運各社で共通している」と指摘する。

    23年7月に国際海事機関(IMO)は国際海運の温暖化ガスの排出削減目標を「50年までに50%以上」から「50年ごろまでに実質ゼロ」にすると改定した。既存船の更新需要の高まりなどで国内造船の各ドックは活況だ。ただ、規模に加え、技術力でも中韓勢は力をつけている。国内造船にとっても次世代エコシップに投資できる余力が商船会社にあるうちに抜きんでた技術を蓄積できるかが勝負となる。