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Tokyo mixと勝負した奴 出てこい がはは^ ^の掲示板

>>25275

そんなときに、今でいうところのクイックマッサージが流行しはじめた。30分いくらとか安いけれども全然効かない。効かないけれども、お姉ちゃんに押してもらうのは気持ちがいい。それで気分転換がてら、ちょくちょく通っていると、あるとき、熊みたいなお兄ちゃんが出てきた。「なんだ、男か」と思ったけど、やってもらうと、ものすごくうまい。たくさんの人に触られてきたから、術者の技量はすぐに分かる。間違いなくうまい人だった。しかも、この熊さん、うまいだけじゃなかった。「お客さん、どこか調子の悪いところありますか」というから、気になる症状を伝えた。すると、「絶対店に言わんといてくださいよ」と言って、私の足首のこのあたりを爪でぎゅっと押し始めた。痛かった。でも施術後、腰の不調が明らかに楽になった。こんな体感は初めてだった。「何をしたの?」と聞くと、「実は自分は鍼灸師で、今ここでバイトをして開業資金を貯めています。店長からは『気持ちいいだけの施術をしておけ』と言われているのですが、僕としては人を根本から治す施術がしたい」と。詳しく聞くと、店の規定として、『マッサージはあくまで心地よいリラクゼーションを提供するものであり、症状を治すような治療的施術は無用』というのがあって、店長から「お前に技術があることは分かっている。しかしどれだけ技術があっても、気持ちいい、の状態で帰せ。本気出して治すなよ」と釘をさされていると。

熊(と仮に呼びます)は私より一回り年下の若者だったけれど、何かを感じて「開業したら知らせてください」と連絡先を渡した。

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    すると何か月かして、熊から連絡があり「開業しました」と。施術を受けたい旨を伝えると「往診で行かせてください」という。それ以後、月2回うちに来てもらうようになった。それで腰痛が大幅に改善した。

    あるとき、冗談半分で熊に「弟子入りしたい。教えてくれるか?」すると、「教えます。ただ、この業界、とりあえず免許があったほうがいいです」ということで、料理人をしながら専門学校に通い、鍼灸師の免許をとった。それが51歳のこと。
    当時フランス料理店をやっていて、夜だけオープンの店だったから、昼間は空いている。空いてた部屋に折りたたみベッドを置いて、すぐに開業届を出した。
    熊のところは開業して以後、たちまち評判になった。「難病が治った」との口コミが広がり、今や予約のとれない人気店になっている。

    熊に弟子入りしたとはいうものの、彼は手取り足取り教えるタイプではないし、そもそもこの世界、教えたからといってできるようになるものではない。熊の流儀は脈を細かくとりながら施術していくスタイルなんだけど、術者の感性が大事。マニュアルで「こういうときにはこうする」的なものではないんだ。だからどうしても、「見て盗め」とか「考えるな。感じろ」という教え方になる。熊には私以外に何人も弟子がいたけれども、みんなやめていった。