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株の掲示板

弊社のNY金融筋によれば、「米FRBのmandate(使命)は『最大雇用』であり完全雇用に達するには複数年かかるとの見通しであり、それまで財政出動をベースに米経済成長率を引上げる。長期金利上昇についてFRBが抑制的なメッセージを送っていないのは足元の長期金利上昇が『悪い金利上昇』に至っていない証左」という。

米2月雇用統計のNFPL(非農業雇用者数)は前月比+37.9万人と予想(+21.0万人)を大幅に上回ると共に予想外に失業率が6.3%から6.2%へと小幅低下し、行動規制緩和でレジャー・接客業中心に就業者が増えワクチン普及や追加経済対策が年後半に一段の雇用回復を後押すと米長期金利が上昇、高PER(株価収益率)株中心にハイテク株が売られたものの労働市場改善を受けダウ平均は史上最高値を更新した。

米長期金利は雇用統計の発表直後に前日比0.06%高の1.62%と昨年2月以来の高水準を付けハイテク株など高PER銘柄の重荷となるも、その後は1.5%台半ばに低下、「CTA(商品投資顧問)の債券ポジションは債券購入縮小による市場混乱Taper Tantrum時を下回り、海外投資家の米債券売りは既に昨年がピークだった可能性」(外銀リサーチ)が高い。

30数年にわたり機関投資家の人気エコノミストのトップに君臨するエバーコアISI率いるエド・ハイマン会長が21年1-3月期GDP成長率を6.0%に下方修正する一方で、4-6月期10%成長予想に加え、従来6.0%としていた7-9月期成長率を10.0%予想へと大幅に上方修正した。つまり、米経済は4-6月期、7-9月期の2期連続2桁成長を経て21年通年で7.1%という中国など新興国を上回る「Massive Boom」(大好況)を迎えるという。

むろん、NY賢人エコノミストの誉高きエド・ハイマン会長の米21年4-6月期と7-9月期にわたる2期連続の10%2桁成長予想の源泉は、既に米国の実質GDPがコロナ危機前の97.5%まで回復したにも拘わらず名目GDPの9%分に相当、かつ米需給ギャップの3倍を上回る大規模なバイデン財政出動に他ならない。

言うまでもなく、追加対策の目玉は現金給付であり、既に議会は2回給付で1人当たり1800ドルを支給済みだが、NY連銀の調査では消費に回ったのは26%にすぎない。だが、バイデン政権が雇用回復へ巨額対策を急ぐ背景には、戦後最悪の格差拡大があり、ここで経済支援の手を緩めれば米政治と社会の分断を加速しかねない焦りがある。

ワクチン接種を急ぐ米国でも接種が行き届くのは初秋との見方が支配的で感染拡大が止まる「集団免疫」に目途がつくまで休業を強いられるサービス業などの雇用を財政で下支え、社会分断の深刻化に歯止めをかける必要がある。

異例の金融緩和による「資産効果」で富裕層は一段と潤ったが、対照的にコロナ禍で低所得層は雇用危機に直面し、労働参加を諦めた長期失業者が失業者全体の4割に及ぶ。ハーバード大学サマーズ名誉教授らの「財政出動は過大(Too Big)」との批判に対し、労働経済学の泰斗イエレン財務長官が「経済対策は大胆に(Go Big)」と所得移転バラマキに邁進するのもバイデン財政出動が極めて政治的な判断たる所以である。

結局、ジョージア州上院決戦投票を控えて最大の争点は「現金給付の規模」であり、結局、2000ドルの給付を宣言したバイデン率いる民主党が勝利し、大統領就任式を待たず1月14日に残り1400ドルの給付や失業給付上乗せを含む1.9兆ドル規模の追加経済対策を発表、景気過熱覚悟の所得移転のバラマキ公約の有言実行に及んだ。

軌を一にして年明け1月以降も米国のコロナ感染者数が増加の一途を辿り、1月下旬までにコロナ死者数が40万6000人を超え、第2次世界大戦で亡くなった米国人の数に匹敵する凄惨な事態となり、一部の都市封鎖や経済制限強化によりエンターテインメントなどサービス産業が甚大な打撃を受けた。

巨額のバイデン財政出動は、政権交代の代償であり、景気過熱に長期金利が上昇すればFRBが米国債購入を増やし金利を冷やすしか術はない。なお、21年半ばまでの米「過剰貯蓄」は2.4兆ドル(名目GDP11%相当)に達し、ワクチン普及によりコロナ禍が収束し経済「正常化」が進めば消費主導で米景気は力強く回復が見込まれる。

NY賢人エコノミストのハイマン会長は21年通年の米経済成長率を7.1%と予想、米金融大手ゴールドマンサックスは7%を予想、著名投資家ポール・チューダー・ジョーンズ氏は「Massive Boom」(大好況)と表現する。長期金利上昇に伴う株式市場からの資金流出の転換点「Tipping point」は成長率がピークを迎える7-9月と未だ当分先のようだ。