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銅が2年ぶり高値 けん引役はグリーンからAIへ
2024/05/14 07:42 日経速報ニュース 1444文字

 【NQNニューヨーク=三輪恭久】代表的な産業用金属である銅の国際価格が騰勢を強めている。欧米市場ではおよそ2年ぶりの高値圏にある。主要な鉱山の閉鎖などで鉱石供給が伸び悩む一方、世界的な製造業の回復機運が相場を押し上げた。そこに重なったのが人工知能(AI)ブーム。市場では、銅の需要をかさ上げするとの観測が浮上している。
 
 国際的な指標となるロンドン金属取引所(LME)3カ月先物価格が4月下旬、2022年4月以来となる1トン1万ドル台に上昇した。ニューヨーク市場でも期近物がおよそ2年ぶりの高値を付けた。2023年末以来の上昇率は13日時点で約24%となる。同期間の上昇率は、3月に最高値を更新した金(13%)や米ダウ工業株30種平均(5%弱)を上回っている。
 
 銅相場は2月半ばごろから徐々に水準を切り上げてきた。電線や電子部品といった産業用途が多く、世界の製造業の景況感が上向き、需要回復の期待が高まった。供給は不足しているとの見方が根強い。新型コロナウイルス禍で鉱山からの供給が伸び悩んだ影響が残り、23年にはパナマの銅鉱山が地元住民の抗議活動などをきっかけに閉鎖に追い込まれた。
 
 HSBCのポール・ブロクサム氏は「新規鉱山への投資はあまり強くない」と指摘する。向こう4年間の投資計画は「スーパーサイクル」と呼ばれた強気相場後の11〜14年の半分にも満たないという。環境対応が拡張ペースを遅らせ、開発コストを押し上げている面もある。
 
 アナリストの間では、短期的に一段高を見込む声が増えている。シティグループのアカシュ・ドシ氏は「現物需給の引き締まりから、この数カ月の上昇の勢いが続く」と指摘。LME銅が1トン1万500ドルに上昇すると予想する。
 
 需要面では中国のインフラ以上に注目されるのが脱化石燃料の流れだ。銅は電導効率が高い金属で、電気に関わるところでは不可欠と言ってよい存在。国際銅研究会によると、電気自動車(EV)に使う銅は1台当たり83キロとガソリン車(23キロ)のほぼ4倍になる。

  • >>71696

    つづき・・

    太陽光や風力といった再生可能エネルギーでは、発電設備そのものに多くの銅を使う。多くの発電所は電力の消費地から離れており、新たな送電網も構築も多い。洋上風力発電の世界的な拡大は、海から陸へと電気を運ぶためにより多くの送電ケーブルを必要とする。
     
     銅は脱化石燃料に不可欠な「グリーンメタル」の1つに挙げられて久しいが、その構造は変化しつつある。新たな潮流がAIだ。全世界的にデータセンターの建設投資が拡大しており、バンク・オブ・アメリカ(BofA)は「データセンターとAIが鉱物資源に与える影響への注目度が高まっている」という。発電設備や送配電といった電力に関わる分野に加え、データセンター内で使う半導体を含む電子機器・部品で幅広く銅を使うからだ。
     
     AI向けのデータセンターは通常に比べ銅の使用量も増えるとの見方がある。ゴールドマン・サックスのニコラス・スノードン氏らは、AI向けデータセンターの銅需要が24年の8万トンから、ピークとなる26年には16万トンに増えると予想する。年間3000万トン弱とされる世界需要に占める比率は低いものの、需要を押し上げているのは間違いない。
     
     銅はその値動きが世界の景気動向を敏感に映すとされ「ドクター・カッパー(銅博士)」の異名を持つ。足元の銅相場の上昇は、経済のけん引役がグリーンからAIへと移り変わって来たことを示しているのかもしれない。