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米国株を楽しむ!の掲示板

2022-01-29 08:25
見通し
【Market Winコラム】6月QT織り込む市場の「QT tantrum」

弊社のNY金融筋によれば、「ブラックマンデーが起きた1987年以降に数回あった『FEDプット』発動前の米S&P500指数の高値からの下落率は平均約24%だが、名目成長が高くインフレ高止まりが懸念される今回は過去と市場環境が異なり安易な『FEDプット』期待は危険」とされる。

何より、今回の米FRBの利上げと「QT」はコロナ危機への無制限QE(量的緩和)という未曾有の過剰流動性供給の回収であり金融政策の正常化に他ならず、とりわけ過去と異なり名目成長率が高くインフレ高止まりが懸念されるだけに軽々にFRBはインフレ退治の手綱は緩められず、ましてや大幅な株安にも「FEDプット」発動は期待できないという。

2013年5月に米FRBバーナンキ議長が「Tapering」(量的緩和縮小)を示唆して国際金融市場に大きな波乱を巻き起こした際、マーケットの癇癪(かんしゃく)「Temper tantrum」の「Temper」を「Taper」に置き変えて「Taper tantrum」という造語が作られ、今回はパウエル議長の1月26日FOMC後の会見を受け量的引き締め「QT」(Quantitative Tightening)による「QT tantrum」に置き換わった。

パウエル議長は会見で「毎回の会合で、利上げする可能性は排除しない」、「金利を引き上げる余地はかなりある」、「バランスシート縮小は相当規模で必要」と発言し金融引き締めに積極的な「タカ派」姿勢を示し、特に「QT」に関して「(利上げ開始後)少なくとも1回の会合で議論する」と最短で6月「QT」開始を示唆した。

何より、これまで「FEDプット」の体現者だったパウエル議長だけに、その「タカ派」発言がヘッドラインで伝わる度にアルゴリズム(コンピューター取引)が株式・債券売りで反応し、市場の「QT tantrum」を刺激し、株安・債券安を促した。

そして、同議長は会見で株安について「FRBの金融引き締めの方針と、その結果としての金融環境の引き締まりを織り込みつつある」と謂わば株安を是認し米国株に「冬の時代」到来を告げた。

因みに、米FRBが株価下支え「FEDプット」へ動く条件として、1)株安によるクレジットや住宅など他市場の大幅調整、2)株安が実体経済の悪化を促しインフレ鈍化を鮮明にする—等が指摘されるが、今のところそうした兆候は時期尚早とされる。

1月26日発表された米10-12月期実質GDP成長率は6.9%と予想の5.5%を大幅に上回る堅調さを維持し、米FRBの拙速な金融引き締めが景気を冷やす「Over kill」懸念を払拭した。

さらに、金利が低いほど将来利益が高く評価されて上げ相場が続いた成長期待が大きいグロース株が利上げモード入りで売られているが、利上げにより現在価値が下がり株価が下落するのは当然の帰結とされる。

一方、バイデン大統領は1月19日の会見でFRBに対し「物価高騰を定着させない重要な仕事は、雇用最大化と物価安定という2つの使命を持つFRBに委ねられる」とし緩和脱却に支持を表明した。

過去の米大統領の多くが常にFRBに利下げ圧力を加えてきたが、約40年ぶり7%インフレが国民の最大関心事となった以上、バイデン政権はFRBの急進的な金融引き締め政策を支持せざるを得ない。

ある米系投資家が「既にQT tantrumにありながら過去と異なり大幅な株安阻止のFEDプットが期待できない米国株式市場にあって、丁度1年前に早すぎる米国株バブル崩壊リスクに警鐘を鳴らしたバブル研究家ジェレミー・グランサム氏が改めて想起される」と打ち明ける。

大統領府から強い政治圧力を受けるFRBだけに、過去の「FEDプット」発動に至る米S&P500指数の平均24%下落以上の下げとなっても、インフレ退治の手綱を緩められず、とりもなおさず機動的な「FEDプット」発動にも慎重にならざるを得ない。