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欧米 金融政策の掲示板

しかしFRBは2008年以降、超過準備に金利を払っている。08年3月に440億ドルだった超過準備は、24年3月には3兆5000億ドルに膨れあがった。

つまりFRBが利上げを行うと、銀行システムに支払われるマネーが創造され、流動性が押し上げられる。「FRBが『利上げ』を行っても最終的な決済のビッドアスク・スプレッド(買い気配値と売り気配値の差)は実質ゼロで変わらない。

要するに、引き締めとは名ばかりなのだ」とリー氏は説明している。この意味で言うと、金融引き締めは実際には金融緩和だということになる。

米経済の高金利への感応度が低下した理由は、他にも2つある。
アポロ・グローバル・マネジメントの首席エコノミスト、トルステン・スロック氏は、住宅購入者も企業も、金利が最低だった時期に資金を借り入れていたと指摘する。米国の住宅ローンは大半が期間数十年の固定金利なので、住宅購入者は利上げの影響を免れているのだ。

一方、米大企業はパンデミック中に債務の年限を延長した。投資適格級企業の社債市場は2009年の3兆ドルから現在は9兆ドルに拡大しており、スロック氏によると米企業は短期的な金利変動の影響を受けにくくなっている。

同時に、大企業は預金の金利収入が増えている。FRBの利上げ後、米企業の利払いが差し引きで減少したという興味深い事実の理由が、これで説明できる。

金融引き締めの状況下でも米経済が強さを保っている第2の理由は、政府による異例の大盤振る舞いにある。2023年の米連邦政府の財政赤字は1兆7000億ドルと、国内総生産(GDP)の6.3%に相当した。これが経済成長と雇用、企業収益に強い追い風を吹かせている。