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想うことの掲示板

■ UBI実証実験の課題

すでに他国のパイロット・プロジェクトでもそうであったように、実験結果の意味合いは限定的になる可能性が高く、実験の成果に最初から疑問を持つ批判も多い。その最大の理由は、実証実験プロジェクトの期間が限られているため、参加者には従来の仕事を続ける意欲が最初からあることである。

3年後には、自分たちの仕事だけで生計を立てる必要がある。したがって、参加者はプロジェクトの実施段階で既存の収入源を維持することに関心を持つ。創造的な仕事を選択し、社会貢献をめざす人が増えるというUBIの効果は、3年間の期限付きでは実証することは難しい。人々が基礎所得を得ているにもかかわらず従来からの仕事を続ける理由は、いずれ3年後には給付されなくなるUBIの期限を反映した対応である。

第二の資金調達の問題では、UBIを提唱する人たちによって、費用は小規模なものに限定されている。しかし、UBIが少なくとも社会的・文化的な生存水準をカバーするのであれば、その費用は実際には膨大なものとなる。今ある年金や児童手当、失業保険の受給権などがUBIによって消滅し、今日のすべての社会保障を現状のUBIだけで実現することは困難であるため、実際の社会支出は大幅に増加するだろう。

そして、最大の問題が残っている。ドイツが一方的にベーシックインカムを導入すれば、それが引き金となる国際移住についての問題である。もし一国だけでUBIを導入するとしたら、移住者にとっての影響は非常に大きく、国境を厳格に守らなければならないという議論を呼ぶ。同時に、企業は生産拠点を海外に移せば、国は税収基盤を失うことになる。そのため、UBIが国際的に調整され、多くの国で同時に導入されない限り、この制度は急速に瓦解する可能性がある。

UBIの重要な主題は、税金、資金調達、金額、実施モデルではなく、すべての人が生涯にわたって無条件に保護されることである。一つはっきりしているのは、UBIは、誰もが自分のお金を増やすためのものではなく、誰もがより安全になるということなのだ。

無条件の基礎所得という考えは確かに良い考えだ。しかし、善意から好結果への道のりは長く険しいことが多い。限られた時間での実験では、UBIの好結果を確実に把握することは困難だろう。UBIを幻想に終わらせないためには、その可能性と課題をめぐる議論に抜本的な視点の変化が必要なのである。