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猫に札束
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猫に札束の掲示板

消えた「本田副総裁」起用案 日銀人事の舞台裏 ①

4月8日に任期満了となる黒田総裁を再任する人事案を国会に提示した。
副総裁に日銀の雨宮正佳理事と早大の若田部昌澄教授を充てる。
この人事案はアベノミクスを支えてきた金融緩和政策の出口を許さないとの安倍首相のメッセージにほかならない。

「黒田さんにも財務省の血が流れていると感じる時があるんだよね」
首相は時折、親しい議員から黒田氏について尋ねられるとこう答えていた。
「手腕を信頼している」との首相の言葉とは裏腹に複雑な感情が垣間見える。

この5年間のアベノミクスは黒田氏抜きには語れない。
黒田氏の交代はアベノミクスの失敗とも受け取られる恐れがある。
これが黒田氏再任が本命という逆説的な理由だが、永田町、霞が関では黒田氏再任は無風とはみられていなかった。
その根拠が2015年2月の経済財政諮問会議での黒田氏の発言だった。
20年度の基礎的財政収支の黒字化というのは非常に重要。
もっと本腰を入れてやらねばいけないほど危険な状況だと主張。
政府に財政再建への取り組みを迫った黒田氏のこの発言に「財務省のDNA」を感じ取ったという風聞が流れた。

首相には財政再建を最優先する財務省に疑心があるといわれている。
5%から8%に消費税率を引き上げた際の「経済対策を打てば、消費は戻る」という同省の説明に、今なお納得していない。
この首相と財務省とのすきま風は日銀の正副総裁人事にも影を落とした。
首相と親しいリフレ派の本田悦朗スイス大使の副総裁起用が取り沙汰されたのは、その一端だ。

首相は昨年10月、12月と本田氏起用を支持する藤井内閣官房参与らと会った。
藤井氏らはデフレからの脱却速度を上げるための方策として一時的な景気過熱を容認する「高圧経済」などの考え方を説明。
それを実行するための人事として本田氏起用を提言した。
首相も「面白い考え方だね」などと応じた。
こうした動きに財務省や日銀は警戒を強めた。
「本田氏起用は十分あり得る」
昨年12月上旬、財務省は焦りを募らせていた。
財務省は伝統的に日銀人事の舞台回しを担ってきた。
今回も首相の元に伊藤コロンビア大教授ら5人ほどの副総裁候補の名を伝えた。
首相周辺からは早々に「財務省の推薦は受け付けない」と言い渡されていた。
本田氏の名は当然、財務省のリストにはなかった。