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銅、EV・AI需要で最高値 「新時代の石油」巡り争奪戦
2024/05/21 日本経済新聞 朝刊 2ページ 1219文字

 銅の国際価格が20日、一時1トン1万1100ドル台となり最高値を2年ぶりに更新した。電気自動車(EV)の普及や、生成AI(人工知能)開発に必要なデータセンターの建設ラッシュで電線需要の増大が見込まれており、マネー流入が加速している。新産業の成長に不可欠な素材として銅を「新時代の石油」と呼ぶ向きもある。世界各国による囲い込みや争奪戦も始まっている。

中長期的に銅の需要が増大するとの見立てから、マネー流入が続いている。まず脱炭素社会への移行だ。銅は電気を通しやすくEVの心臓部にあたるモーターやワイヤハーネス(組み電線)などに銅素材が使われる。EVの場合、ガソリン車の約4倍の銅が必要だ。
 太陽光発電と風力発電でも大量の送電ケーブルに使用する。米ゴールドマン・サックスの5月時点の試算によれば脱炭素向け需要は25年に世界の銅需要の12%にあたる403万トン、30年には695万トンに伸びる。
 次に生成AIの開発競争も需要増大の思惑を生んでいる。世界各国ではAI普及を見込んでデータセンターの増設が進んでいる。データセンターへの電力供給などに銅を使った送電ケーブルが大量に必要になる。
 あらゆる製造業で使われる銅は、価格動向が世界経済の変調をいち早く映すとして「ドクターカッパー」と呼ばれてきた。ここにきて新たな異名が注目を集める。ゴールドマンが指摘した「カッパー・イズ・ザ・ニューオイル」論だ。21年のリポートで「銅無くして脱炭素無し。銅需要の急増は在庫を枯渇させるリスクがある」と述べた。
 銅の需要増大と価格上昇は資源ナショナリズムの高まりを招く。インドネシアが23年に未加工の銅鉱石の輸出を禁止する方針を打ち出した。今後の銅相場は石油と同様、世界景気や地政学リスクに揺さぶられやすくなりそうだ。