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死神についての掲示板

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  • 2021/04/03 12:38
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

  • 中央銀行のあり方が変わってきている

    ―中央銀行のあり方が変わってきています。ETF買いによる市場介入の長期化などは典型例ですが、例えば、スイスの中央銀行は個別株投資にも熱心で、GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のようなITの大型株を大量に購入しています。もはや経済の原理原則はどこかに行ってしまい、中央銀行は教科書で学んだような独立性を果たしているとは思えません。

    相場氏:昔、若い市況担当記者の作る記事を読んで、本質を端的にまとめるリード文をつくっていましたが、その時の感覚で、現在の株価高騰に関するニュース解説を見ると、疑問符が並ぶことが多いです。「いやそうじゃないだろ、カネが余っているからだろ」と。そうでないと説明がつかないことが多すぎます。

    草刈氏:おっしゃる通りです。金融緩和が続いてきた中で、さらにコロナ禍がやってきて、各国政府や中央銀行がさらに金融緩和を進めています。とにかく大盤振る舞いで、これ以上やることがない、というような状況になっています。なのに、2018年、19年に比べて、取り立てて経済がよくなっているわけではない。

    相場氏:最近、思い出すのは、バブルの絶頂ともいえる1989年の大納会の時の先輩記者たちの雰囲気です。日経平均は3万9000円の史上最高値で、世の中は浮かれていた状態でしたが、大蔵省や日銀担当の先輩記者たちの表情が妙に暗かったんです。後から思えば、年明けから引き締めが始まることを察知していたのだろうと思います。

    澤上氏:今は、ひょっとしたら同じようなタイミングなのかもしれません。それでも、世界的なカネ余りや各国の中央銀行がETFなどで相場を支えているような状態は、今までにはなかったことです。

    相場氏:元日銀総裁の白川方明さんは、当時「ETF買いは臨時の措置」とコメントしていたそうです。それが常識的な判断だと思います。ところが、それが今や日銀のETFの購入規模は10倍くらいになっています。

    草刈氏:今では、中央銀行が市場の催促に応えて、買いに入っているような状態になっています。政策当局も慎重な姿勢はあったと思います。ただ、コロナ禍が一種の免罪符として作用してしまった面があります。結果的に、誰も責任を取れなくなる危険性があります。

    14歳の息子に株式投資を勧められる時代
    ―いったんタガが外れると、麻薬ではありませんが、止まらなくなる。中央銀行マンのプライドや矜持はどこかに行ってしまったといった嘆きの声さえ聞こえてきます。

    相場氏:1997年に日銀法が改正されて、独立性が担保されたのですが、それが逆に悪く働いている面もあるのかもしれません。それ以前は、日銀は大蔵省の外局のような位置づけでした。ゆえにタガが外れることはなかったように思います。独立性が高まったことで、逆にバランスを崩してしまったという面もあるのではないでしょうか。

    ―今、これまで投資に触れたことのなかったような初心者、素人の投資家が参入している状況も見受けられます。『金融バブル崩壊』に詳しく書かれていましたが、米国では手軽に株式投資ができる「ロビンフッド」のようなスマホアプリが大人気です。コロナ禍で得た失業給付金などで以前より多くの人が株式投資をするので株価が上がりやすくなっている。分かりやすい銘柄に飛びつく米国の個人投資家が、新型ゲーム機を発売したソニーや、任天堂の株高を支えているという指摘もあります。これもバブルのような過熱につながる現象なのでしょうか?

    草刈氏:先日、14歳の息子に株を勧められた、これは危険な兆候だ。という英フィナンシャルタイムズのコラムニストの記事を読みましたが、まさしくその通りだと思います。

    澤上氏:やはり、当然あるべき「労働の対価」といった基本が忘れられていると思います。

    ―「自分が理解できないものに投資するな」とは、投資家のジム・ロジャーズ氏が書籍『危機の時代』で語った言葉です。何が起きているのかよく分からないが、とにかく上がっているので株を買おうといった危なっかしい投資家も生まれてきている状況のようですね。次回は、そうした状況下で生活や財産を守るために必要な考え方についてお話をお聞きしたいと思います。

  • テスラのビットコイン爆買いは“金融バブル”の象徴

    コロナ禍が長引く中、日経平均株価が3万円台に乗せ、バブル崩壊後の高値を更新し続けている。しかし、空前の低金利や日銀の株式ETF(上場投資信託)買いに支えられた高値相場が崩壊するリスクも高まっている。株式市場では何が起きているのか、金融バブルがはじけたら何が起きるのか、どう行動すべきなのか。異常な金融政策が生んだ金融業界の危うさに迫る小説『Exit イグジット』の著者である相場英雄氏、『金融バブル崩壊』の著者であるさわかみ投信の澤上篤人会長と草刈貴弘最高投資責任者の3人が語り合った。鼎談の第1回では、バブル期以来の株高と金融政策、経済の現状をどう見るかについて、3人が議論する。

    ―コロナ禍が長引く中、日経平均株価が3万円台に乗せ、バブル崩壊後の高値を更新し続けています。本日は、金融業界をテーマにした最新刊を執筆された3人にお集まりいただき、語り合っていただきます。まず、世界中で株価が高騰するなど過熱感も指摘される市場環境をどうご覧になっているか、率直な意見をお聞きしたいと思います。

    草刈貴弘氏(以下、草刈氏):2月8日に米EV(電気自動車)メーカーのテスラが15億ドル(約1600億円)のビットコインを購入していたと報道されましたが、これは金融バブルを象徴するようなニュースだったと感じています。創業者のイーロン・マスク氏は、これまでイノベーションを推進するために資金を調達することはあっても、資産を運用して儲けるようなことは一切してこなかったと思います。

    澤上篤人氏(以下、澤上氏):確かに、今回のニュースは、利益の最大化を目的にした行動のようにも思えますね。マスク氏本人の意志ではなく、社内の誰かがやっていることなのだろうとも思いますが、書籍『金融バブル崩壊』でも書いたように、やはり、バブルが進行している端的な証拠なのだろうと思います。

    ―私自身もマスク氏を何度か個別取材して、世界を変えるようなイノベーションに強い情熱を持って取り組んでいるという印象を持っていました。それまでは調達した資金を次の技術革新のために投資してきただけに意外です。米ツイッターもビットコインの保有を検討しているというニュースが出て、株価が急騰しました。お金が余っているので、企業が本業と関係ない“財テク”に走り、投資家がそれを材料視して株価が上がるなら、日本のバブル期のような現象が起きている可能性もあります。金融業界を舞台とした作品を手掛けてこられ、当時の事情にも詳しい相場さんは現状をどうご覧になっていますか?

    相場英雄氏(以下相場氏):私は、金融記者として、1990年代から2006年まで兜記者クラブ(東京証券取引所)などにいて、市況や国内や外資系の金融機関を取材していました。マーケット全般を見ていましたから、情報源として少し怪しげな人たちも取材していました。

     実は新作の『Exit イグジット』にも登場する金融コンサルタントでフィクサーの古賀遼という人物を主人公にした『不発弾』という小説を2017年に出しています。「飛ばし」「損失隠し」という問題を取り上げたのですが、この小説は、兜記者クラブで得た知識や経験を元にして書き上げました。証券会社に勤め、高リスクの商品を扱っていた古賀は架空の人物です。当時取材をしていた、怪しげなセールスマンなど複数の人物をモデルにしました。不発弾で取り上げた飛ばしや損失隠しのような取材は、大っぴらに聞ける話ではありませんので、六本木のカラオケボックスに別々に入って、個室で解説をしてもらうなどして、聞いた情報をベースにしています。

     なぜ、このお話をするのかというと、どの業界でも、あるいは会社でも、絶対に侵してはいけないことがあります。「タブー」と言い換えてもいいのかもしれませんが、翻って、今の金融業界、あるいは、金融政策のあり方をみていると、国というレベルで「この一線を越えてしまっている」ところがあるように思うからです。それが今回『Exit イグジット』で描いた点です。

    基本に戻れば、明らかにおかしい現状
    ―タブーなき世界に入っているということですね。元金融記者の目から見て、最近の状況は明らかにおかしいのでしょうか?

    相場氏:そう思います。『Exit イグジット』にも書きましたが、昔は、金利が存在し、日本銀行が決める「公定歩合(中央銀行が民間の金融機関に資金を貸し出す際の基準金利)」がどう動くかを記者たちは追いかけていたものです。しかし今では公定歩合という言葉さえ耳にしなくなりました。異次元の金融緩和が常態化し、「ゼロ金利」がすっかり当たり前の世界になってしまったからです。

     私のように兜記者クラブに詰めていた証券担当の記者は、大蔵省(現・財務省)や日銀の担当に比べると地味な存在でした。地道に市況を追っかけて報道するのですが、「すっぱ抜き」「スクープ」というような派手なネタはほとんどないからです。

     それでも先輩記者たちは誇り高く、若手記者は厳しく教育されました。経済の原理原則に基づき、一見難しいロジックで変動する相場を、中学生にも理解できるように解説する、というスキルをたたき込まれました。考えてみれば、これがたいへん勉強になりました。本質を分かっていないと、読者に分かりやすく説明する記事など書けないからです。しかし当時学んだような金融や経済の原則が、通用しないおかしな世界になっている。

    澤上氏:なるほど。作品を読んで、こんなに金融業界に精通した作家がいるんだ、と驚いたんです。失礼な話ですが…(笑)。金融の知識はもちろん、市場や、市場関係者の機微などまで、深く理解されている。

    ―本質を理解した上で分かりやすく伝える。人に何かを伝え、心を動かすためには必要ですよね。それは例え話の上手さに表れます。イエス・キリストも、ブッダも、例え話が上手だったと言います(笑)。

    相場氏:例え話でいうと、澤上さんが今回の本でも書かれている「金利は経済の体温だ」という話は、すごく刺さりました。

    澤上氏:本質といえば格好がいいですが、至極、当たり前のことを当たり前と捉えられるかどうか、が大切なのだと思います。金利は、経済のインセンティブで、それが原動力ともなりますから、金利がないというのは、「体温がない」、いわば経済が死んでいる状態とも言えるわけです。

    相場氏:今日のテーマにも関わりますが、「日銀の株式ETF(上場投資信託)買いにプロの目を入れるべきだ」というご意見には、膝を打ちました。

    澤上氏:日銀によるETF購入は、今回の金融バブルを下支えするような“力技”の1つだと思いますが、日銀がETFに直接投資する形では、競争原理が働かない。しかし、さまざまな運用会社を競わせる形にして投資するようになれば、話は違うと思います。日銀の株式購入にも市場の競争原理が働くようになるし、今よりは健全な状態になるように思います。

  • 野草を採って食いつなぐ大学生
    ―専門家ではない一般の人たちも投資に関するリテラシーを高めないといけないのでしょうか。

    相場氏:情報を発信するメディアの側に身を置く者として、自分自身も含めて、この点については反省することしきりです。今の経済状況がおかしい、と考えているメディア人は少なくないと思いますが、新聞もテレビ報道も、それを具体的に解説することができていないように思います。一般市民の経済を見る目や知識などのリテラシーは、結局、メディアからの的確、かつ、信頼性の高い発信を通してしか高まっていきません。強くそう思うのは、何かがはじけた時に、しわ寄せを受けるのは市井の人たちだからです。

    ―そのためにも今から武装しておく必要があると。

    草刈氏:講演などでは「自分の頭で考えてください」と、いつも申し上げています。それは難しいことではなく、まず自分を取り巻く現実の環境を見てください、ということでもあります。社会保険料が上がって、消費税も上がって、どんどん可処分所得が減っている。それなのに、なぜか危機意識を持ちにくいというのが、今の日本のように思います。多くのサラリーマンは税金や社会保険料を源泉徴収されていて、給与明細を細かく見ることがないからかもしれませんが。

    相場氏:先日、テレビで、大学生が野草を採って食いつないでいる、というエピソードを取り上げているバラエティーのような番組が放送されていました。面白おかしく取り上げているようにも感じられましたが、日々の食いぶちに困っている層が広がっている証拠に思え、決して笑い事では済ませられないと思いました。本当に食べるのに困っている層がどんどん広がっている可能性が高いからです。

    草刈氏:優秀な大学院生に支援金を給付するという政策が打ち出されていますが、それだけではなく、考え方の幅をもっと広げて、日本を背負っていく若者や子育て世代に手厚く援助が届くようにしていく必要があるのかもしれません。

    ―気になるのは、コロナ対策という大義名分があるため、国や自治体のお金の使い方がずさんになっていることです。本当に困っている人や、将来の日本を背負う人々への支援が不足する一方で、「アベノマスク」のように大半の人が使わない無駄なものに税金が投入されている。その時々に、思い付きのようにお金をばらまいているようにさえ見えます。

    澤上氏:ここまでくると、極論に聞こえるかもしれませんが「がらがらぽん」と、社会全体が一回ひっくり返った方が早いのかもしれません。そういうときの方が、若い人たちにチャンスがあるし、バイタリティを生かすことができます。

    草刈氏:私は就職氷河期世代で、貧乏役者をやっていました。当時からの友人で、今でも下北沢界隈の小劇場で役者をやっている仲間もたくさんいます。しかしコロナ禍が長期化して公演できず、困窮しています。我々、就職氷河期世代には、正社員として就職できずに仕事の経験を積めなかった人もたくさんいます。そのようなケースでは、元々発射台が低いので、反発力も小さいのではないかと、危惧しています。何もかもあきらめるしかない。そんな人たちが増えてしまっている現状を心配しています。

    ―私も就職氷河期の1990年代半ばに就職活動したのでよく分かります。優秀なのに希望するような就職がかなわなかった友人が何人もいました。海外留学して外資系の企業で活躍するケースもありましたが、非正規社員として働き続けることになった友人もいました。20代に仕事のスキルを磨くチャンスがないと、キャリアを築くのは大変です。景気が悪くなると、そのような非正規社員に真っ先にしわ寄せがきます。

    澤上氏:そこで問われるのが生命力ある人間だと思います。経済が大変な状況になると、もちろん支援が必要になりますが、そんな逆境からはい上がってくる人たちは、どんな時代でも、きっと出てきます。

    現実におかまいなしのマーケット
    草刈氏:変な言い方かもしれませんが、手に職がもう一度見直されると思います。例えば、自動車業界をみると、EV(電動自動車)がブームになっていますが、これまでの自動車とは基盤になっている技術が違います。整備や修理する際にも、新しい技術が必要となります。ただし、すぐに切り替わるわけではない。結果として、むしろ、機械技術が分かっている自動車整備士が足りなくなっていると聞きます。

    相場氏:私は雪国の生まれなので、現状の電池性能がベースでは、EVは怖いと思ってしまいます。雪の中で立ち往生して閉じ込められたときに、充電切れで凍えてしまいそうです。ガソリンさえ補給すれば動き続ける内燃機関の方が、私にとっては信頼感、安心感があります。もちろん、今後、イノベーションが起きて、性能の良い電池が生まれてくるのだと思いますが、一気に進化するわけではありません。

    澤上氏:そう。けれども、投資するための理由が欲しい今のマーケットは、そういった技術革新の現実にかまうことはないのが実態です。

    相場氏:そうなんです。そこがすごく気持ちが悪い。1980年代のバブルの頃は、本業が構造不況業種でも好立地の土地や建物を持っている企業だと、「含み資産があるから買い」と言っていたのと、ダブってしまいます。まさにいつか見た風景です(笑)。

    澤上氏:今こそ、実体経済を凝視しないといけません。国内を見ても、約1億2500万人が生活をしているわけですから、必ず経済はそこにあります。そこに立脚して物事をとらえ、経済を考えていくことが肝要です。

    相場氏:経済危機を受け止め、ソフトランディングさせる余裕が社会になく、弱い人にしわよせがいくようなったのはどうして? と考えています。雇用形態が変化して、非正規雇用の労働者が増えたのが原因ではなかろうか、というのが私の仮説の1つです。収入が不安定で、消費が減って、モノが売れないから、経済が収縮する。どういう力が働いて、今に至ったのかを掘り下げてみたいと思っています。

    澤上氏:考えれば考えるほど、小説のテーマになりそうな話題が出てきますね。何より、1人ひとりが自分の頭で考えて行動することが大切だと思います。

  • 「ドラえもん」からも学べる借金の恐ろしさ

    コロナ禍が長引く中、日経平均株価が3万円台に乗せ、バブル崩壊後の高値を更新し続けている。しかし、空前の低金利や日銀の株式ETF(上場投資信託)買いに支えられた高値相場が崩壊するリスクも高まっている。株式市場では何が起きているのか、金融バブルがはじけたら何が起きるのか、どう行動すべきなのか。異常な金融政策が生んだ金融業界の危うさに迫る小説『Exit イグジット』の著者相場英雄氏、『金融バブル崩壊 危機はチャンスに変わる』の著者であるさわかみ投信の澤上篤人会長と草刈貴弘最高投資責任者の3人が語り合った。鼎談の第2回では、金融バブルが崩壊したときに備える見方、考え方について、3人が議論する。
    (司会はクロスメディア編集部長 山崎良兵)

    ―「自分が理解できないものに投資してはいけない」と、投資家のジム・ロジャーズ氏が書籍『危機の時代』で語った言葉について前回の記事(「テスラのビットコイン爆買いは“金融バブル”の象徴」下記関連記事参照)で触れました。米国では、コロナ対策の給付金や失業保険などを使って、スマホアプリで株式投資を始める人が増えているというニュースもあります。何が起きているのか良く分からないが、とにかく株価が上がっているので投資しようといった初心者も目立つようです。鼎談の2回目では、リスクも懸念される投資ブームが起きているような状況下で、生活や財産を守るために重要な考え方などについてお聞きしたいと思います。

    草刈貴弘氏(以下、草刈氏):2004年頃の話ですが、あるロシア人が米国に視察に行って、景気の良さに驚いて、その理由を聞いたら「家を売り買いしているんだ」という答えが返ってきたそうです。「明らかにおかしい。そんなことで経済は成り立たないだろう」と。「この国はそれで成り立っているのか」と思っていたら、その4年後にリーマン・ショックが起きて経済が崩壊しました。

    相場英雄氏(以下、相場氏):経済小説を書く作家という私の経歴もあるのかもしれませんが、よく投資関連のターゲティング広告が送られてきます。「私はこれで短期間に儲けました」という体験談のたぐいが掲載されているちょっと怪しげな広告も少なくありません。先日びっくりしたのは、そんな中に「プットオプション」の購入を勧める広告があったことです。さも、手軽に儲けられる、というような売り文句。これは危ないと思いました。ご承知の通り、プットオプションはリスクが高いデリバティブ商品で、投資教育を受けていない人たちが手を出すべきモノではありません。

    ―一般の人が理解しにくいような投資商品でも、儲かりそうなら「バスに乗り遅れるな」とばかりに投資するような状況が生まれているのかもしれません。

    澤上篤人氏(以下、澤上氏):投資のプロである我々でも理解できないような状況です。利回りやリスク、そういったことは何も考えていない、としか思えない投資家も見受けられるようになってきています。

    相場氏:先日、恵比寿の街で、フェラーリやランボルギーニを乗り回して騒いでいる30代くらいの集団に出会いました。なんだか既視感があるな、と思いました。そう、1980年代後半のバブル時代に見た六本木の街の光景です。そういうおカネの使い方をしている人たちが出始めている。若い人が元気なのは悪いことではないけど、おカネを手にしたときの行動原理は、昔と全く変わっていないのかもしれない(笑)。もちろん、彼らが、元々、富裕層である可能性もありますが、本当のお金持ちは普通ならそんなことをしないはずです。

    澤上氏:全くそう思います。昔から成金の資産は軽いと言われています。だからお金が飛ぶようになくなっていく。本当の資産家の資産はもっと重みのあるものです。本当にすごいのは、こういう時に保有株を売って現金化して、しばらく何もしないで待つことができる投資家。金融バブルが崩壊したときには、その現金が大きな力を持つことを知っているからです。そういう人はなかなかいないけど。

    理論が通用しない事態は、これまでにも多々あった
    ―最近は国が借金を増やしてどんどんお金を供給する際の理論的な裏付けとしてMMT(現代貨幣理論)があって、それが財政赤字を膨らませても問題ないという各国の財政政策の説明に利用されているような印象があります。

    相場氏:理論的に問題ない、というのがどこかで通用しなくなる、という経験は、これまでもみんなが体験してきていることではないでしょうか。そこにつきる気がします。過剰な借金のツケは必ず回ってきます。

    草刈氏:マンガの「ドラえもん」に、のび太が未来の自分からお金を借りられる「ムリヤリキャッシュカード」という秘密道具を使いすぎて、金欠になった未来の自分が困ってしまうというストーリーがありました。今の状況は、まさにそれだと思っています。未来にどんどんツケを回している。

    ―そもそもドラえもんの第1巻は、大人になったのび太が背負った多額の借金のせいで悲惨な生活を送る子孫のセワシ君が、運命を変えるために未来からドラえもんを送り込むところから始まっています。「きみののこした借金が大きすぎて、100年たっても返しきれないんだよ」というセワシ君のセリフは、国も企業も個人も借金を膨らませて未来が危うくなっている今聞くと耳に痛いです(笑)。

    澤上氏:借金の恐ろしさがよく分かります。お金の流通量が増え続けると、結果的に貨幣価値を下げることにつながりますので、インフレを招きます。原点に立ち返って考えれば、国債は、ただの紙。その発行が増えているだけです。それで経済が本当に良くなるわけがない。

    ―やはり異次元と言われる金融緩和政策が、こういう異常事態を増幅させてしまっているのでしょうか?

    澤上氏:私は、そもそも1990年代のバブルの処理に端を発していると思います。バブル崩壊で不良債権を抱えた銀行や企業を日本はきちんと処理しなかった。当時はやった財テクなどに貸し込んで不良債権を抱えた銀行は、傷んでいない本業部分を新しい勘定に切り分けて再生させ、バブルの残骸は旧勘定に回して経営責任を問う。そういう処理を厳密にしていれば、経済の新陳代謝が促進されて良かったはずですが、現実にはそうはしなかった。経営が失敗しても生き延びる、いわゆるゾンビ企業を多数生み出してしまいました。金融機関も同様です。直近30年間の日本では、そのツケが1番大きいのではないかと思います。

    草刈氏:2008年秋のリーマン・ショック以降は、同じことが世界規模で起こったとも言えます。日本の場合、本当は金利を上げて、新陳代謝を加速した方が、経済が再生する可能性が高かったのではないか、とも思います。雇用は、そうすることで生まれる新しい産業が担えるはずですから。

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