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カブニャンのひゃくれつ株日記の掲示板

6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送り観測など明るい材料を見いだそうとする株式市場で、視界が晴れないのが暗号資産(仮想通貨)業界だ。交換業最大手バイナンスが米国で直面する逆境が、投資家心理に重くのしかかる。

米証券取引委員会(SEC)は5日、バイナンスと同社のチャンポン・ジャオ最高経営責任者(CEO)らを証券法違反で提訴した。SECは、バイナンスが米国以外で運営している交換所「バイナンス・ドット・コム」を米国の顧客が使えるように違法に誘導したなどと主張している。バイナンスは「事業を守る」との声明を発表し、争う姿勢を示した。

仮想通貨交換業で圧倒的シェアを持つバイナンスにSECの矛先が向いたことで、仮想通貨市場には動揺が走った。米仮想通貨情報サイトのコインデスクによると、ビットコイン価格は5日、一時前日より約6%安い2万5000ドル台半ばまで下げた。米地銀シリコンバレーバンクの破綻を受けて市場のリスク回避姿勢が強まった3月半ば以来の低さだ。

関連銘柄も下落した。大手仮想通貨交換業で唯一上場している米コインベース・グローバルの株価は5日、前週末比で9%安、マイニング(採掘)のマラソン・デジタル・ホールディングスは8%安とそれぞれ大きく下げた。SECは3月、コインベースに提訴を想定した強制措置を講じる前の通知を送っている。

「我々は準備ができている。出入金のシステムは安定している」。ジャオ氏は米メディアがSECの提訴を相次いで報じた後、ツイッターで顧客に冷静な対処を呼びかけた。米商品先物取引委員会(CFTC)も3月にバイナンスとジャオ氏を提訴しており、米当局によるバイナンスへの視線は厳しさを増す。

SECによる提訴は、バイナンスのジャオ氏の後継者報道が出た矢先のことだった。米ブルームバーグ通信は5日未明、バイナンスで米国外を統括するリチャード・テン氏が、ジャオ氏の後継として最有力のCEO候補となっていると報じた。テン氏はシンガポール証券取引所などでリスク管理や規制対応の要職を歴任しており、当局対応に適任と目される。バイナンスが当局への守勢を強める表れでもある。

米債務上限問題や米利上げに対する懸念の後退は「ビットコイン相場にとっても追い風となる可能性があった」(米オアンダのエドワード・モヤ氏)。しかし、現状ではその恩恵を享受できていないようだ。

デジタル資産運用会社の英コインシェアーズによると、6月2日まで7週連続で仮想通貨などデジタル資産への資金が流出超となった。純流出額は累計で3億2900万ドル(約460億円)にのぼり、ファンドなどが運用するデジタル資産の運用残高の1%に相当するという。

直近の流出は「利益確定の売り」(コインシェアーズ)というが、ビットコインに対する投資意欲がそがれれば、流出が続く可能性がある。2022年11月の大手交換業FTXトレーディングの経営破綻から続く仮想通貨の冬は終わりが見えない。