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株式週間展望=政権リスク深まる、下値模索も―日経平均予想レンジ:2万7300-2万8500円
8:03 配信

 根強い米国の金融引き締めリスクと岸田政権の政策スタンスへの懸念を背景に、日本株相場の傷口が広がっている。今週の日経平均株価は14日に当欄の予想レンジ(2万8000-2万9000円)の下限を一時割り込み、2万7889円まで下落。内憂外患の様相が鮮明化する中、日銀による出口戦略をめぐる警戒感もじわりと高まり、選別物色の傾向がよりシビアになっている。

<内憂外患に冷え込む市場心理>

 投資家のマインドは今週米国で相次いだ重要イベントのうち、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の指名公聴会(11日)と12月消費者物価指数(CPI、12日)、同生産者物価指数(PPI、13日)を無難に乗り切った。しかし、最後に待っていたブレイナードFRB副議長の指名公聴会で再び早期利上げとバランスシート縮小への不安が拡大、13日の米株が急落し、翌14日の東京市場を直撃した。

 従来はグロース(成長)株と反比例していた米10年債利回りも今回は低下し、日米金利差の広がりを意識して一時上昇していたドル・円は一転して円高方向にフレた。リスクオフモードが全開となる中で、株式からの資金逃避が一段と加速した格好だ。

 さらに、日本に関しては独自の悪材料も上値の重さに一役買っている。従来からマーケットは分配重視の岸田政権に懐疑的だったが、それを一段と深めるような要人の発言が浮上。岸田内閣の経済再生相で、岸田首相が標ぼうする「新しい資本主義」の政策を担当する山際大臣は、13日に出演したテレビ番組の中で「(新しい資本主義は)株価を意識してはやりません」と語った。

 山際大臣は日本経済の長期成長へ向けたビジョンの中で、「もちろん大事だが」と前置きした上で、結果は後からついてくるものだという意味合いで株価に言及した。それでも新しい資本主義が、少なくとも短期的にはマーケットへの逆風になるということが、改めて印象付けられた。当該部分だけが切り取られ拡散した様子もあり、個人投資家を中心に市場心理を冷え込ませた。

 また、金融政策の転換が日本にも及ぶとの見方も買い意欲を削いだ面がある。通信社が14日午前に、日銀が2%の物価目標を達成する前に利上げを開始できるかを議論すると報じた。これを受けて、この日の日本の10年債利回りは上昇した。

<内閣支持率高く増税不安>

 株式市場が嫌う、増税の確度も高まりそうな情勢だ。直近1月のNHKの世論調査によれば、岸田内閣の支持率は57%と前月比で7ポイント上昇し、与党第一党の自民党の支持率も約41%(同6ポイント上昇)となった。両数値の合計は98(同13.2ポイント上昇)と、前任の菅首相の就任直後の2021年9月調査(102.8)以来の高水準。7月の参院選の結果に反映されれば、岸田首相の権勢はより強固になるだろう。

 暗雲を前に、積極的に上値を買い上がる動きは起こりにくい。米株の上げ下げに応じた一過性の反発こそ想定されるものの、これまでの下落過程で生じた戻り待ちの売りも滞留している。政治や金融政策をめぐる不安要素を相場が乗り越えるためには、国内外の景気や企業業績の明確な改善期待がより必要になってくる。

 こうした中、割高感が薄く、収益面でも期待値が高い銘柄に資金が向かいやすい状況が続いている。代表格のトヨタ自動車 <7203> は波乱となった14日も高値を更新した。脱炭素や防衛の分野で優位に付ける三菱重工業 <7011> も堅調に推移し異彩を放った。

 来週は17、18日に日銀の金融政策決定会合があり、21日には12月会合分の議事要旨の公表も控える。最近さほど関心の高いイベントではなかったが、前述の報道があったことでいつもより重要性が増しそうだ。海外では中国で17日に12月の工業生産、小売売上高、都市部固定資産投資や10-12月期GDP(国内総生産)が出る。このほか、米国(17日は休場)で18日に1月NY連銀製造業景気指数、19日に12月住宅着工件数、20日に12月中古住宅販売件数が発表される。

 日経平均の予想レンジは21年10月安値の水準を下限に2万7300-2万8500円とする。株式市場の頼みの綱である企業業績についても、海外で10-12月決算の開示が本格化する。19日は半導体露光装置の有力メーカーであるオランダのASMLホールディングス、米金融大手のバンク・オブ・アメリカやモルガン・スタンレー、20日に米ネットフリックスなどが予定されている。

提供:モーニングスター社