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bondの掲示板

米国株など世界株高が一服となるなか、米国債への「余剰資金流入」も減退が注視される。一段の金利上昇要因となるものだ。2020年春以降の世界株高では、世界の各種投資家による運用総額の増加に連動して米国債配分が拡大したほか、株式資産の時価増額に対応して、リスク分散の資産構成比率に合わせた米国債保有の拡大が進んできた。

世界株高の一服は、米国債配分の縮減につながりやすい。一段の株安は安全逃避の米国債シフトを促すが、こうした要因による資金流入減や、損失穴埋め・現金化などによる米国債処分の余地も残る。

「米国株は2020年3−4月以降の上がれば買う、買えば上がるという好循環に、短期的には調整逆流の残存余地が注視される」。
米国系資産運用ファンドの幹部は、このように注意を払う。

2020年3−4月からはコロナ危機への政策総動員もあり、米FRBによる実質ゼロ金利政策や無制限の資産購入が米国株を始めとした世界株を押し上げてきた。そうした緩和策は3月のFOMCにかけて、「本格的な終わりの始まり」が意識されつつある。当座は未曽有の過剰流動性相場から、過剰部分の行き過ぎ修正や、実際の経済成長や企業業績に即した業績相場に向けて、乱気流を経ながらの落ち着き所の模索が注目されやすい。

米国株などの世界株高一服は、米国債への「余剰資金流入」も減退となる可能性をはらむ。2020年春以降の世界株高では、世界の各種投資家による運用総額が肥大化し、運用資産の増加に連動して米国債への配分が拡大してきた。FRB緩和と株高などによる余剰マネーの増加も、米国債への滞留に寄与。さらには株式資産の時価が増額されたため、リスク分散の機械的な資産構成(ポートフォリオ)比率に合わせて、米国債は応分で積み増しされるというリバランスが進んでいる。

その中での世界株高の一服は、米国債「応分配分」の縮減につながりやすい。一段の米国債金利の上昇要因(米債価格は下落)として注視されるものだ。

もちろん、米国株など世界株安が一段と深刻化すると、安全逃避の米国債シフトと米国債金利の低下(米債価格は上昇)へと波及していく。しかし、その前段階や市場混乱の度合い次第では、株高と米国債配分の好循環一服による資金流入減や、損失穴埋めと現金化などによる米国債処分の余地が無視できない。

ブルームバーグ算出による世界の株式時価総額(世界取引所時価総額)は、ドルベースの合計で昨年12月末に121.5兆ドルとなった。直近最低はコロナ危機直後である2020年3月の68.5兆ドルであったが、そこから+53.1兆ドル増、+77.5%増という急膨張になっている。連動する形でのポートフォリオ・リバランスや余剰資金の拡大などにより、米国債にも資金シフトが応分進展してきた(金利は低下や上昇抑制)。

しかし、世界の株式時価総額は日中ベースで、昨年11月17日の122.5兆ドルをピークに騰勢の勢いが鈍化しつつある。最新1月18日は119.5兆ドルとなり、ピーク比−3.0兆ドル、−2.4%の小幅減に転じてきた。

時価総額の前年同月比・増減率でいえば、すでに昨年3月の+57.5%が最高ピークとなり、1月は18日時点で+15.5%と勢いが鈍化している。最近では2017年2月に+20.7%まで急拡大したあと、同年7月の+15.6%へと時価総額の増加モメンタムが鈍化する場面があった。その7月にかけて米10年債金利は、「株式時価増=米債配分増」の一服もあって金利が上昇へと移行(米債価格は下落)。月間最高金利の前年比変化幅では、+0.77%の上昇が観測されている。

その前では時価総額の前年比が2013年3月の+21.4%をピークとして、同年9月には+15.2%と現在と同程度の減速場面があった。その同年9月の米10年債金利も、前年同月比では+1.11%幅の上昇という相関実績が見られている。

すでに世界株式時価総額は短中期のトレンドを示す週足テクニカルで、13週移動平均線の下抜けと方向角度の下向き化へと移行し始めた。同時進行で世界株の参考となるMSCI先進国株指数(ドルべース)も、同様に13週線の下抜けと下向き化に直面しつつある。2021年前半や2020年3−4月以降の株高モメンタムの勢い一服と、短期的な調整株安が焦点になってきた。

最近では2018年後半から、世界株高と時価総額増のモメンタム一服が観測された。当時の米10年債金利は一旦の急上昇を経て、安全逃避などで低下に転じている。当時の金利上昇局面では2018年10月に3.26%方向に上昇したが、週足テクニカルでは140週移動平均線を中央値としたボリンジャーバンドで、バンド上限3.25%方向に接近したところで上昇一服となっていた。

その他、2016年12月に2.64%方向まで金利が急上昇した際は、やはり同バンド上限が位置していた2.74%が天井の上限として機能。2013年12月に3.02%方向に急上昇した際には、同バンド上限が3.12%に位置しており、重要な上限メドとなっている。

足元では昨年以降、140週移動平均線が重要な上限抵抗ラインとして機能してきたが、昨年10月からは上抜け突破となってきた。このまま上抜け状態が定着している限りは、過去実績として先行きバンド上限(1月21日週時点では2.26%)方向まで金利上昇が進む可能性は無視できない。

しかも現在の米10年債金利は、FRBによる資産(米国債など)購入の減額と購入終了と、資産圧縮(QT、量的引き締め)の前倒し観測も金利の上昇要因となってきた。2020年3−4月以降はFRBの資産急増と米国株などの世界株高、米国債金利の低下や抑制(米債価格は底堅さ)が連動進展しており、その反転逆流の行方が注視される。
過去には2013−2014年の量的緩和終了局面で、米10年債金利は2013年5月の1.61%を最低として、2014年1月には3.05%方向へと急上昇した。8カ月間で+1.44%幅の金利上昇という前例実績がある。

過去の経験則ではFRBによる利上げ局面を含めて、米10年債金利が上昇する局面では、月間最高金利の比較で最低でも「前年同月比+0.8%から+1.0%前後」という上昇パターンが繰り返されてきた。昨年は過去比で金利上昇が抑制されたが、それでも金利上昇の局面では、昨年10月に前年同月比+0.83%前後、4月に+0.97%前後の上昇幅が観測されている。

その前では2018年11月に+0.81%前後、2017年7月に+0.77%前後、2013年12月に+1.19%、2010年1月に+1.01%前後といった前年比上昇の実績が見られてきた。その点、昨年の米10年債金利の月間最高は、2月が1.61%前後、3月が1.77%前後、4月が1.75%前後などとなっている。控えめに「前年比+0.5%から+0.8%の上乗せ」と試算しても、今年4月以降に向けては2.2%から2.6%方向への上昇余地が残されている。