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日本市場 全般の掲示板

歴史的に日銀が金融緩和に踏み込んできたのは円高・株安が進んでいる局面であり、それは米国が利下げ局面にあることが多かった。こうした状況は、あたかも日銀の金融政策が米金利(FRBの金融政策)を念頭に置いた通貨政策と化しているような状況であった。

現在に目を移せば、円高防止ではなく円安防止を念頭に置いて通貨政策化が進むような構図にある。

 2008年かから2012年にかけて白川体制の日銀は「為替との戦い」と苦心惨憺(くしんさんたん)したが、2013年以降は同様の場面を経験することなく時が経過してきた。

 しかし、ここにきて日銀の「為替との戦い」は再び注目されつつある。

 財政ファイナンスのテーマ化が最悪のシナリオ

5月7日の岸田首相との会談後、植田総裁は「今後、基調的物価情勢にどういう影響があるかみていく」と述べていた。その事実と今回の買いオペ減額決定を合わせ見れば、必然的に6月14日会合での再利上げ期待はどうしても高まる。

 仮に6月の追加利上げがなかったとしても、円安容認と受け止められた4月と同じ轍は踏まないように植田総裁は円安けん制を意図したタカ派色の強い会見を心がけるだろう。とはいえ、「会見はタカ派、運営はハト派」は通らない。6月を現状維持で乗り切っても7月の展望レポート会合ではまた投機の円売りが引き締めを催促するはずだ。

今後は漸次的に利上げが重ねられる可能性が高い。その後、ある程度の利上げ幅がたまってくれば、今度は政府債務の利払い増加にまつわる様々な試算が跋扈するだろう。

その時、財政ファイナンスがテーマ視されるような状況になることが、為替に限らず、債券や株も含めた円建て資産全般に懸念されるリスクシナリオである。

最近、円安になるほど株が売られるという動きがみられているのは、
(1)円安→(2)利上げ→(3)株安

という連想が働いているからだが、
財政ファイナンスがテーマ視される状況では
(2)の予想が極端に引き上げられ、
円金利の急騰と政府債務の利払い不安が相互連関的に起きやすくなる。

そのような状況では日本株も円も売られるだろう(要するにトリプル安が続く)。 

唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト