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イスラエル・イラン報復「当面は双方自制か」 米専門家

2024/04/20 11:58  日経速報ニュース    1387文字  画像有  


 【ワシントン=坂口幸裕】イスラエルとイランの応酬は中東でさらなる紛争拡大につながるのか――。米国の中東専門家は、当面は双方が自制する局面に入るとの見方を示す。不測の事態が起こるリスクはくすぶり続けるとの見方もあり、緊張緩和につながるか予断を許さない。

 中東問題に詳しいゴードン・グレイ元米国務次官補(中近東担当)は19日、日本経済新聞の取材に「イスラエルもイランもこれ以上エスカレートして対立が深まれば、得るものは少なく、失うものは大きい」との認識を示した。
 イスラエルのネタニヤフ首相は攻撃に反対する米国と大規模報復を求めるイスラエルの極右連立政権の間で「バランスをとる必要があった」と指摘した。同首相が「限定的な攻撃で双方に配慮し、針の穴を通すことができると結論づけた」と分析する。
 イラン革命防衛隊幹部は18日、イスラエルがイランの核施設を攻撃すれば、イスラエルの核施設を「最新兵器で攻撃する」と警告した。イスラエルは18日の攻撃で核施設を標的にしなかった。歯止めがかからない報復合戦に陥る最悪の事態を回避しようとする姿勢がうかがえる。

イスラエルが攻撃したのはイラン中部イスファハンで、核の研究や訓練施設がある核開発計画の中心地とされる。グレイ氏はイランを抑止するため、核施設を標的にする能力を持っているとの「メッセージを送る狙いがあった」と断言した。
 リスクも残る。グレイ氏は「短期的に最も脅威となりうるのは、どちらか一方による誤算の可能性だ」と言及。「中期的には両国の指導者の交代で軍事的な対立に傾斜するおそれがある。イスラエルもイランも強い指導者ではないからだ」と説いた。
 安全保障や中東政策に詳しい米戦略国際問題研究所(CSIS) のシャーン・シャイク氏は19日に公表したリポートで「イラン革命防衛隊はイスラエルの攻撃をかわしたと主張しているが、イランの能力を考慮すればあり得ない」と断定した。
 一方、イラン側が被害はなかったと誇示しているのは「反撃しないことを示唆している」と分析した。今後の中東情勢を巡っては「米国などがより安定した安全保障環境のために、地域の緊張をどう緩和できるかが問われている」と唱えた。
2023年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃して以降、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやイエメンの親イラン武装組織フーシなど代理勢力によるイスラエルや中東に駐留する米軍への攻撃が相次ぐ。イランが制御できるか見通せない面もある。
 米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのアンドリュー・ミクタ戦略・安全保障センター所長は「イスラエルはイランとその代理勢力への抑止力を強化したいのであれば、報復する以外に選択肢はなかった」と解析する。
中東の緊張が「他の地域のパワーバランスにも影響を与えるだろう」とみる。米欧を中心とした西側諸国と、中国やロシアなどを巻き込む事態に発展することも念頭に「国際システムが維持されるか、本格的な総力戦に突入するかは中東の地域バランスを維持できるかどうかで決まる」と提起した。