良い風呂の掲示板

続き
これがこの目的を全く意図していなかったと言う事はその社会にとって彼がこれを意図していた場合に比べて必ずしも悪いことではない。

社会の利益を増進しようと思い込んでいる場合よりも自分自身の利益を追求する方がはるかに有効に社会の利益を増進することがしばしばある。

社会のためにやるのだと称して商売をしている輩が社会の福祉を増進したいというような話は未だかつて聞いたことがない。

もっともこうしたもったいぶった態度は、商人の間では通例あまり見られないから彼らを説得してそれをやめさせるのは別に骨の折れることではない。

自分の資本をどういう種類の国内産業に用いればよいかそして生産物が最大の価値を持ちそうなのはどういう国内産業であるかを個々人誰しも自分の自身の体自分自身の立場に応じてどんな政治家や立法者よりもはるかに的確に判断できることが明らかである。

他人に向かって彼らの資本をどう使ったらよいかを指図しようとするような政治家がいるとすれば彼はおよそ不必要な世話を自ら背負い込むばかりでなく、一個人はおろか衆議院や国会に対してさえ安んじて委託ができないような権限をまたわれこそはそれを行使する適任者だと思っているような人物の手中にある場合に最も危険な権限を、愚かにも、そして僭越にも自分で引き受けることになるのである」

アダム・スミス「国富論」(第二巻　第二章)