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司馬懿の独り言の掲示板

横光利一の『欧洲紀行』
とても興味深い(青空で読める)
エッセイ風ながら比較文化論っぽく
錚々たる著名人も登場する
 
その中でも塔の方のくだりが印象的で
横光利一がパリでフランス語が分からず
鬱々としているところに、塔の方と
出会ったそうな
元気で明るい塔の方に助けられ
憂鬱、孤独感が和らいだ横光は
「すっかりパリファンになった」
小説『旅愁』に出てくる欧化主義者久慈
のモデルは塔の方なんだそう
 
【さて夕暮になって立ち上った。若い男女の二人が、喧嘩をしていると見えて、黙って立っているその上に、白い蝋燭を立て連ねたようなマロニエの花叢が、風に重々しく揺れ動く。岡本君は巴里の屋根の下を「若者よ、愛せ。」とフランス語で唄いながら、その前を行き過ぎる。すると、若い男女の二人は前からの争いのまま、どちらからともなく不機嫌そうに接吻した。鶯が衰えた声で濃密な葉の中で鳴いているのを聞きつつ、私はこれをこの日の終りとした】~欧州紀行より~

司馬懿の独り言 横光利一の『欧洲紀行』 とても興味深い(青空で読める) エッセイ風ながら比較文化論っぽく 錚々たる著名人も登場する   その中でも塔の方のくだりが印象的で 横光利一がパリでフランス語が分からず 鬱々としているところに、塔の方と 出会ったそうな 元気で明るい塔の方に助けられ 憂鬱、孤独感が和らいだ横光は 「すっかりパリファンになった」 小説『旅愁』に出てくる欧化主義者久慈 のモデルは塔の方なんだそう   【さて夕暮になって立ち上った。若い男女の二人が、喧嘩をしていると見えて、黙って立っているその上に、白い蝋燭を立て連ねたようなマロニエの花叢が、風に重々しく揺れ動く。岡本君は巴里の屋根の下を「若者よ、愛せ。」とフランス語で唄いながら、その前を行き過ぎる。すると、若い男女の二人は前からの争いのまま、どちらからともなく不機嫌そうに接吻した。鶯が衰えた声で濃密な葉の中で鳴いているのを聞きつつ、私はこれをこの日の終りとした】~欧州紀行より~