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トルコ リラ / 日本 円【tryjpy】の掲示板 2020/05/20〜2020/06/15

日経速報ニュース。日本人の理解を超えていると思うが、
宗教が支える国だと実感する。
・・・・・・・
新型コロナウイルス禍に揺れるトルコで、経済的に余裕のある人が
低所得層に手を差し伸べる「共助」の動きが広がっている。
財政不足で十分に歳出を増やせない行政当局も両者をつなぐマッチングの仕組みを
設けるなどして後押しする。通貨リラが史上最安値を付けるなど
経済は苦境に陥るが、イスラム教の信仰や強い共同体意識に裏打ちされた
伝統的な絆が危機に立ち向かうトルコ社会の底堅い支えとなっている。
 画面上に並ぶのは、金額だけが書かれた無記名の「請求書」アイコン――。
トルコ最大都市のイスタンブール市は5月上旬、低所得世帯が抱えるガス
・水道代を、別の誰かが肩代わりするためのマッチングサイトを立ち上げた。
いずれかの請求書を選ぶと、その料金をクレジットカードで支払いができる。
肩代わりした人、された人のいずれも匿名で互いが誰かは分からない。
 「困難な時には余裕がある人間が協力すべきだ」。エンジニアの
ムスタファさん(41)は4件、計約700リラ(約1万1000円)分の
料金を支払った。人口1500万人のイスタンブールで、
こうして肩代わりされた請求書はこれまで16万件以上、計3億円分を超える。
 「棚の上の請求書」と名付けられたこの活動は、近所の貧しい人を
援助することが推奨されるイスラム教の断食月(ラマダン)が4月下旬に
始まったこともあって評判を呼び、首都アンカラや第3の都市イズミルにも
広がった。
 インターネットを使った活動ではあるが、その仕組みには原型がある。
「棚の上のパン」と呼ばれるトルコの伝統的な食料支援のやり方で、
近所のパン屋で余分にお金を払うと、その分のパンが店の棚の上にプールされる。
困窮する人が無償で受け取ることができる。
 トルコではこれまで中東では最多の15万人以上が新型コロナウイルスに感染し、
3月下旬以降、外出制限や店舗の閉鎖などで経済活動が著しく停滞している。
政府は4月、企業に対して解雇を3カ月禁止すると同時に、従業員に
無給の休暇を取らせることができるようにした。感染拡大はピークを越えたが、
現在も都市間移動の制限や飲食店の閉鎖などが続く。
 政府は550万の低所得世帯などに1000リラを給付するなど
国内総生産(GDP)の5%相当の経済対策を打ち出した。
ただ、行政の歳出増には限界があり、庶民の生活を支えるには
心もとないというのが実情だ。その代わりに目立つのが、
経済的に少しでも余裕のある人が困っている人を直接、支える民間の共助だ。
 ラマダンの期間中、イスラム社会では裕福な人がお金を出して低所得層などに
「イフタール」と呼ばれる日没後のごちそうをふるまう光景がしばしばみられる。
今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、公の場でのイフタールは控えられた。
そこでアンカラ市は、低所得層に食料を配るための寄付サイトを作り、
ラマダンの1カ月間で市内外に計50万セットの食事を配布した。
全国で9000店を展開する大手スーパーチェーンのA101は、
ネットや実店舗を通じ、篤志家がほかの人に商品券を贈れる仕組みを導入した。
 ボアジチ大名誉教授の歴史学者、セルチュク・エセンベル氏は
「トルコでは歴史的に、貧しくても飢えるということが少ない」と話す。
イスラム教が信仰の義務の一つとして掲げる収入の一部を貧しい人へ寄付する
「喜捨」に加え、親族や近所の絆が強く、経済的に支え合うという文化が
生きているという事情もあるためだという。
 トルコでは、こうした共同体の絆は国民レベルの連帯にも拡大しやすい。
100年前、共和国建国の父ケマル・アタチュルクが率いた独立戦争の記憶は
今も根強い。独立戦争中の国民議会の発足を記念した4月23日の祝日には、
外出禁止で自宅にこもることを余儀なくされた人々が窓辺に寄って国旗を掲げ、
国歌を高らかに斉唱する姿が全国的にみられた。
 エルドアン大統領も「国民連帯キャンペーン」として基金を立ち上げ、
中央銀行や企業、国民から計20億リラ強の寄付を集めた。その際、エルドアン氏は
独立戦争中に国民がアタチュルクの国民議会政府に対して物資を供出した故事を
引き合いに出した。
 もっとも、現在のトルコではエルドアン氏が率いるイスラム教保守派と
世俗派の分断が深まっており、多くの寄付が集まる裏には、支持者による
政治的な競争意識もある。ペンション経営者のボアチさん(41)は
自らも収入を失ったが「イスタンブールのイマモール市長に成功してほしい」と
世俗派野党が主導する「請求書サイト」に計500リラ分を寄付した。
 トルコ経済は市場経済に移行した1980年代以降、たびたび危機を迎えたが、
100%を超える高い穀物自給率などもあり、そのたび国民は
たくましく乗り越えてきた経験がある。
 新型コロナウイルスに見舞われた今年は国際通貨基金(IMF)をはじめ
トルコ経済のマイナス成長を予想する声も多い。通貨リラは5月に
史上最安値を付け、3~4月の財政赤字は史上最悪の水準を記録した。
それでもトルコでは暴動などの社会不安が目立たない。
背景には社会全体を下支えする草の根の助け合いの存在がある。