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水素の力、エアバッグにも――安全守り「3代目」なるか(サーチライト)
2015/08/11 日経産業新聞 9ページ
「2015年は水素社会元年」。そう聞いて、すぐ頭に思い浮かべるのはトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「ミライ」だろう。実は日本でもう一つ、水素を使う新製品がお目見えした。エアバッグだ。
自動車の安全部品で世界首位のオートリブ(スウェーデン)が開発した。水素と酸素を別々の容器に詰めてあり、クルマの衝突をセンサーが検知すると着火。化学反応でできた水が熱で瞬時に水蒸気となり、このときの体積の爆発的な増加でエアバッグを膨らます。
独フォルクスワーゲン(VW)が7月に発売した中型車「パサート」に採用された。国土交通省によると、水素で膨らむエアバッグの認可は日本国内で初めてだという。
エアバッグが乗用車に初めて搭載されたのは1980年代の半ば。当初はアジ化ナトリウムを原料に使う火薬が多かったが、強い毒性があった。このため工場の従業員の健康管理が大きな課題となった。
2000年代になると大手メーカーは火薬原料を巡り2派に分かれる。
タカタは爆発力が強く作動時に生じるカスが少ない硝酸アンモニウムを選択。だが扱いが難しく、その後の大規模リコール(回収・無償修理)に発展した。
一方のオートリブや米TRWオートモーティブ(現・独ZF)は硝酸グアニジンを選んだ。硝酸アンモニウムのような異常な爆発は起きない一方、狙った通りに膨らまないリスクを指摘する専門家もいる。
水素で膨らますエアバッグはこれらに続く3代目として定着していくのだろうか。タカタが使う硝酸アンモニウムの弱点が明らかになったのは搭載から10年余りを経てからだ。水素についても、引き続き安全性についての慎重な検証が求められる。(藤村広平) -
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