東西、東西――。
毎度ばかばかしいお笑いを一席……とはまいりません。本日は株式市場の片隅、讃岐高松に生まれし油圧クレーンの名門・タダノ(6395)の掲示板へ、講釈師が見立てた一席をお届けいたします。
(パン、パン!――張り扇の音)
時に2026年、秋の空。
タダノの株価を眺めてみれば、業績好転の兆しという「絶好の好材料」がこれほど揃っているというのに、日経平均全体の地合いの悪さに引きずられ、あれよあれよとボックス圏の下限・千二百五十円近辺まで叩き売られる体たらく!
ホルダー諸兄におかれましては、「なぜこれほど良い材料があるのに下がるのか」と、歯噛みをして画面を睨みつけておられることとお察し申し上げます。なれど、講釈師が見るに、事態はさにあらず。
全体の地合いで理不尽に押された今こそ、水面下で進む「大いなる時代の転換」を肚に据えるべき好機でございます!
(パン、パン!)
さあ、工業会の最新出荷統計をしかとご覧じろ!
建機全体を眺むれば、土を掘り起こす「油圧ショベル」や「ミニショベル」は息切れし、前年割れの月が目立ち始めている。
ところがどうだ、我らが「建設用クレーン」の輸出統計!
ある月は前年比六割増、またある月も六割増と、怪異なる跳ね上がりを見せているではありませぬか!
これぞすなわち、「造成から建屋へ」。
いま世界を席巻する人工知能(AI)のインフラたるハイパースケール・データセンター!
これまで広大な大地を掘り起こし、整地していたショベル隊の時代は過ぎ去り、いよいよ頑丈無比なる重量鉄骨を組み上げ、巨大な空調・特高変電設備を屋上へと吊り上げる「クレーンの出番」へと、工事の主役が鮮やかにバトンタッチされたのでございます!
(パン!)
AIの心臓部は重い。並大抵の機械ではビクともせぬ重量機材を、百トン、数百トン級のオールテレーンが天高く軽々と吊り上げる。
国内では印西や関西の現場で大型機が払底し、海を渡れば北米の大地でタダノの青いブームが唸りを上げてフル稼働。
「土掘り」が終われば「吊り上げ」が来る。これぞ建築サイクルの必然! クレーンにとってこれ以上の強烈な追い風がどこにありましょうか!
(パン、パン!)
為替の円高リスクや欧州拠点の再建といった重石はあるものの、いまや株価はボックスの下限。
足元を見れば、PBR零点七倍台という解散価値割れの超割安水準に、三%を超える手堅い配当利回りがガッチリと錨を下ろしている。
好材料にフタをして地合いで売り叩いた連中も、この下値の岩盤を前にしては、もはやこれ以上の売り玉は続きませぬ。
地合いの波に飲まれて沈んだ今こそ、絶好の仕込み場か、はたまた耐え忍ぶ刻(とき)!
全体の霧が晴れ、次の決算や還元策の一撃が飛び出したあかつきには、天高くブームが伸びるがごとく、ボックスの上限・千四百円のフタを突き破って青天井へと駆け上がる相場を、じっくりと見届けようではありませぬか――。まずはお粗末。タダノホルダーに幸あれと願いつつ、一席の打ち止めと相成ります。
(パン、パン!)
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