プロフィール
伊藤亮太FP事務所代表、スキラージャパン株式会社代表取締役。ファイナンシャル・プランナーとして、年間平均約100~200件の相談(資産運用、相続、保険の見直し、住宅ローンなどのローン相談等)を行うほか、証券外務員やFP資格取得講師、金融経済情勢、富裕層顧客開拓スキル、ドクターマーケット開拓、年金、四季報活用講座などの研修講師を行う。
株式投資で利益を出すには、株価や時価総額の意味を理解しておく必要があります。テレビやインターネットのニュースでも当たり前に出てくる用語ではありますが、実際には何を意味しているのかよくわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、株価や時価総額の意味を初心者向けに解説していきます。株価の決まり方・分析方法なども紹介するので、参考にして株式投資を始めてみましょう。(監修者:ファイナンシャル・プランナー 伊藤亮太)
まずは、株価の意味や決まり方についてしっかり押さえておきましょう。
株価とは、各企業が発行している株式1株あたりの値段のことです。株価は企業によって100円未満〜数万円以上と、大きな幅があります。
株価は日々変動しており、日によっては10%以上、長期的に見ると2倍、あるいは半減することもあるものです。購入した時の株価よりも高い金額で売ることで利益を生み出すことができます。
株価の決め手は、需要(買い手)と供給(売り手)のバランスです。買い手が多いと株価が上がり、売り手が多いと株価が下がります。
自分が欲しいと思った会社の株でも、みんなが欲しいと思っていなければ株価は上がりません。企業の成長性や安定性、財務内容などが良いからこそ、多くの投資家から注目され株価に反映されます。株を選ぶ際には、他の投資家がどう思っているかを考えることも必要です。
株価はさまざまな要因によって変動します。主な株価の変動要因は、個別要因、市場要因、経済的要因の3つです。
個別要因は、個別企業の業績が主な要因としてあげられるでしょう。企業の業績が良いと判断されると株価が上がり、悪いと判断されると株価が下がることが多いです。企業の業績は、各企業が3カ月ごとに発表する「四半期決算」によって判断されます。
業績の良し悪しは、単に売上や利益の増減だけを見ているわけではありません。企業の業績予想や調査会社の業績予想を満たしているかなど、さまざまな要素から判断します。
決算が悪くても株価が上がることはありますし、決算が良くても株価が下がるのはめずらしいことではありません。
市場要因は、株式市場全体での傾向が個別の株価に影響することを指し、とくに外国人投資家の動向が要因になることが多いです。東証の中で有名企業が集まる東証プライム市場では、外国人投資家の売買比率は60%以上です(売買金額ベース。2022年12月19日〜23日時点の概算)。
一般的には外国人投資家のほうが投資資金や取引量がはるかに大きく、国内の投資家(個人投資家)が短期売買で外国人と対等に渡り合うのは難しいでしょう。海外のニュースによっても日本の株式市場は変動するため、海外の経済的、政治的な動向にも気を配る必要があります。
経済的要因は、景気や金利、為替の動向などがあげられます。たとえば、2022年12月に日銀が「長期金利の上限を0.5%にする」と発表した際、銀行株は大きく上昇しました。金利が上がることで、銀行はお金の貸し借りで利益を出しやすくなると予想できるからです。
政治的な要因も間接的に影響しているといえるので、株価を見るうえで、世界の政治・経済の動向をチェックすることも重要です。
株価と時価総額には、密接な関係があります。時価総額は企業の価値や規模を示すもので、計算式は「株価×発行済株式総数」です。たとえば、株価が500円、発行済株式総数が1,000万株である企業の時価総額は50億円になります。時価総額の増減は、企業価値の増減と同じ意味です。三菱UFJと三井住友など、同じ業種で比較するのが望ましいでしょう。
ただし、一時点だけの時価総額だけを比較してもあまり意味はありません。1年前と比べてどうだったか、また今の業績を見て1年後はどうなるのかなど、時価総額の推移を考えて企業成長を見ることが大切です。
株価について正しく理解するために、株価指数の意味もチェックしましょう。たとえば、ニュースでは、日経平均株価が取り上げられることが多くあります。株価と同じ意味だと捉えている方もいるかも知れませんが、日経平均株価はあくまで株価指数の一つであり、個別企業の株価とは異なります。
株価指数とは、複数銘柄の値動きをあらわす指標です。株価指数には2種類あります。1つ目は株価平均型と呼ばれる指数です。日経平均株価などが該当します。2つ目は浮動株時価総額加重型と呼ばれる指数です。東証株価指数(TOPIX)などが該当します。
日経平均株価をはじめとした株価平均型の株価指数は、株価の平均値から株式分割など個別銘柄の急激な変動を除数として考慮した数値になっています。株価平均型の株価指数は、3万円、3万ドルなどと金額で表示されるのが一般的です。
東証株価指数(TOPIX)をはじめとした浮動株時価総額加重型の株価指数は、構成銘柄の時価総額の合計値を、ある時点の時価総額の合計値で割って算出します。時価総額加重型の株価指数は、基準値と比べて今の時価総額がどれくらい増えたか減ったかということを表すものであり、株式の価値の変動を示すものといえます。
国内外の代表的な株価指数は、「日経平均株価」「東証株価指数(TOPIX)」「S&P500」の3つです。他にもさまざまな株価指数はありますが、まずはこの3つを覚えておきましょう。
日経平均株価は、1970年より日本経済新聞社が算出・公表を続けている株価指数です。東証プライム市場に上場している企業のうち、市場を代表する225銘柄を対象に算出しています。
東証株価指数(TOPIX)は、基準日を1968年1月4日、基準値を100とした浮動株時価総額加重型の株価指数です。1969年7月1日から公表されています。TOPIXの構成銘柄は2,100銘柄以上あり、日経平均株価の構成銘柄の9倍以上です。
S&P500は、米国の主要産業を代表する500社から算出された指数で、TOPIXと同じく浮動株の時価総額から算出しています。米国株式市場全体の約80%をカバーしており、日本では投資信託のベンチマーク(指標)としてもよく知られている指数です。
株価の分析方法は、主にテクニカル分析とファンダメンタル分析があります。ただし、ここで紹介する方法はあくまで一例であり、分析方法に正解はないことを知っておきましょう。
テクニカル分析とは、株価の値動き(チャート)から株価の動向を予想する方法です。株価チャートにはさまざまなツールが使われますが、よく使われる「ローソク足」「出来高(売買高)」「移動平均線」という3つのツールを、まずは覚えておきましょう。
ローソク足は、株価の値動きを示したチャートです。始値と終値を棒(ローソクのろう)で示し、高値と安値を線(ローソクの糸)で示すことから、ローソク足と呼ばれています。1本のローソク足が示す期間によってチャートが分かれており、主なローソク足は4種類(分足、日足、週足、月足)です。
出来高は売買高とも呼ばれ、一定の時期(1日)に売買が成立した株数を棒グラフで示します。出来高が急増したときは株価の値動きが大きく変わるなどといわれますが、個別の企業業績やニュースで大きく出来高が増えるため信憑性は低いです。
移動平均線は、ある期間における株価(終値)の平均を表した折れ線グラフです。ローソク足とセットで分析することが多く、日足なら5日・25日・75日移動平均線がよく使われます。
ファンダメンタルズ分析は、企業の財務状況をもとに中長期的な視点で株価の値動きを予想する方法です。ファンダメンタルズ分析にはさまざまな指標が用いられますが、ここでは簡単な分析方法を紹介します。
PERとPBRという2つの指標をみて、同業他社と比べる分析方法です。PERは株価収益率とも呼ばれ、株価が1株あたりの利益の何倍になっているかを示します。PBRは株価純資産倍率の略称です。株価が1株あたり純資産の何倍になっているかを示します。
PERとPBRは、業種や企業規模によって数値が大きく異なるものです。たとえば、ベンチャー企業のPERやPBRは高い傾向がある一方で、成熟した大手企業のPERやPBRは、基本的に高い数値は出ません。ベンチャー企業は収益や財務基盤が弱いので、PERやPBRの数値が高くなるのは当然です。
低い方が割安という意見も見かけますが、「万年割安株」といって割安のまま株価が全く上がらない株もあります。PERが高いのに大きく株価が上昇した株があるのも事実です。
PERやPBRで分析するのであれば、基本的には同じくらいの規模同士、そして同じ業種で比較すべきでしょう。一例として、銀行なら三菱UFJと三井住友、商社なら伊藤忠商事と三菱商事との比較があげられます。
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※本記事に掲載されている情報は2023年5月18日時点のものです。
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