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アメリカ ドル / 日本 円【usdjpy】の掲示板 〜2015/04/28

●語られていない懸念

 しかしリニア中央新幹線の場合、首尾よく開業にこぎ着けられても、新幹線のような安定高速輸送機関として定着できるかどうか、そのカギを握る、あまり語られていない懸念事項が2つある。

 それは車内の気圧変動をどこまで抑えて快適な車内環境を提供できるかという車両設計上の課題と、リニアの心臓部であり技術のコアといえる超伝導磁石の冷却に欠かせない、ヘリウムの安定確保という問題だ。

 JR東海が昨年8月に国土交通省に申請した工事実施計画の線路縦断面図という資料がある。それによると地下40mに設置される品川駅を出発したリニアは、首都高速中央環状線山手トンネルの下をくぐるため一旦、地下80mまで下りた後、東京都内から神奈川県にかけて大深度地下で通過。営業線にそのまま転用される山梨実験線を経て海抜約250mの「山梨県駅」(仮称)を過ぎると、40パーミル(1000m進むごとに40m上がる)という急こう配を駆け上がり、山梨県駅から西におよそ40km、南アルプストンネルの中に設けられる海抜1209mのサミットを目指す。

 時速500kmで走るリニアにとっては、山梨県駅から5分弱の距離である。だが乗客は、この間におよそ960mの高低差を強制的に体験させられることになる。

「六本木ヒルズ」をはじめとする国内の主な超高層ビルに設置されているエレベーターの速度は分速360mで、それに比べればリニアの垂直加速度は低いとはいえ、エレベーターの搭乗時間が1分未満なのに対して、リニアはその5倍。しかもサミットを超えると伊那谷に設けられる「長野県駅」(仮称)に向かって、今度は40パーミルで急降下していく。

 さらにこのアップダウンは、南アルプストンネルに続く中央アルプストンネル内でも繰り返される。リニアは水平方向の速度だけでなく、上下方向の移動の面でも「わずか40分の間に地下80mから海抜1200mまで目まぐるしく移動する、世界に例を見ない乗り物になる」(陸運業界紙記者)のだ。

 もちろん、リニアの車体を航空機並みの気密構造にして、軽い与圧をかければ乗客の不快は抑えられるだろうが、果たして、人体に与える影響は無視できるレベルのものであろうか。しかしながら、JR東海の技術力をもってしても解決が難しそうなのが、前述したヘリウムの世界的な逼迫問題である。