自己株の扱いについては、かなり違和感があります。
四季報で確認する限り、同社は2011年3月末時点で自己株を約789万株、発行済株式数の22.5%保有していました。
それから15年近く経った2026年3月末でも、自己株は約747万株、発行済株式数の21%超。
要するに、発行済株式数の2割超に相当する自己株を、長期間ほぼ抱えたままという状態です。
もちろん、自己株を保有すること自体が直ちに悪いわけではありません。
M&A、資本提携、従業員・役員向け株式報酬など、合理的な活用目的があるなら理解できます。
しかし、この会社の場合、問題はその活用方針が株主に十分見えてこないことです。
大量の自己株を長年保有し続けているにもかかわらず、消却するのか、活用するのか、活用するならどの程度・どの期間・どの目的で使うのかが明確ではありません。
一方で、2025年8月には譲渡制限付株式として、取締役12名に自己株76,000株を処分しています。
処分価額は1株375円、処分総額は2,850万円。
株式報酬制度そのものを否定するつもりはありません。
経営陣と株主の利害を一致させる制度として機能するなら、むしろ合理性はあります。
ただし、発行済株式数の2割超に相当する自己株を15年近く抱えたまま、一般株主に対する明確な資本政策の説明より先に、役員向けの自己株処分だけは進めているように見える点は、かなり問題だと思います。
PBR1倍割れや株価低迷を本気で改善するつもりがあるなら、まず説明すべきは、現在保有している約747万株の自己株を今後どうするのかです。
消却するのか。
M&Aや資本提携に使うのか。
株式報酬に使うなら、上限・期間・目的をどう設定するのか。
将来的な処分による希薄化懸念をどう考えているのか。
株主還元方針とどう整合させるのか。
ここを曖昧にしたまま、「必要に応じて自己株取得」や「総還元性向の引き上げ」と言われても、説得力は弱いです。
すでに大量の自己株を持っているのだから、まず既存の自己株の処理方針を明確にするのが先ではないでしょうか。
役員への株式報酬は理解できます。
しかし、長年眠っている大量の自己株について、一般株主に対する説明と還元方針が不十分なままでは、株主目線の経営とは言いにくいと思います。