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タイミーの株価見通し|注目企業の決算レポート
2024年7月、「2024年最大のIPO(株式の新規上場)」として鳴り物入りで東証グロース市場に上場したタイミー<215A>。スキマバイトサービスを展開する同社は、時代にマッチしたビジネスモデルで急成長を遂げてきました。ただ、投資家の期待度も高かっただけに、直近の決算発表を受けて株価は急落してしまいます。将来的には、プライム市場への上場もウワサされる同社ですが、ここから株価の回復は見込めるのでしょうか?
長年にわたって株式市場をウォッチし続けているマーケットウォッチャーの天野秀夫氏にタイミーの魅力と、株価の見通しについてお話を伺いました。
情報提供元:All About編集部
取材日:2025年9月17日
時代のニーズにマッチしたビジネスモデルで急成長
タイミー<215A>は、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービス「タイミー」を全国に展開する会社。従来の求人媒体型サービスとは異なり、「タイミー」でマッチングする業務は、働き手と事業者の1日単位の直接雇用となっています。働き手は、働きたい仕事をネットやスマホで選ぶだけで、履歴書や面接の必要なしに隙間時間を活用して働くことができ、勤務後はすぐにお金を受け取れます。一方、事業者は、来てほしい時間や求めるスキルを設定するだけで、条件に合った働き手が自動的にマッチングします。
仕事内容は、飲食や小売り、物流、オフィスワーク、イベントスタッフ、介護など多岐にわたります。2018年にサービスを開始して以降、人手不足に直面している業界の需要の高まりを受けて急成長を遂げてきました。登録ワーカー数は、2024年12月末には1,000万人の大台を突破し、2025年7月末時点では1,190万人に達しています。
2025年4月には、大手外食チェーンのワタミとの業務提携を発表。ワタミの子会社が運営するサンドイッチチェーンブランド「サブウェイ」の日本国内での事業展開において、「フルタイミー」での店舗運営をスタートさせました。店長・社員と従業員の全員を、現場リーダーとしてタイミーで採用されたタイミー社員や、タイミーを通じてマッチングした働き手によって構築する店舗運営モデルです。
同社の代表取締役である小川嶺(おがわ・りょう)氏は、1997年生まれの28歳。高校時代からリクルートやサイバーエージェントでインターンを経験し、立教大学在学中にアパレル関連事業で起業。その1年後に事業転換し、社名を現在のタイミーに変更してサービスを開始しました。Forbes JAPANが発表する「日本の起業家ランキング2024」第2位に選出された起業家でもあります。「一人ひとりの時間を豊かに」をビジョンに、「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をミッションに掲げています(同社ホームページより)。
同社は、2024年7月に東証グロース市場に上場、公募価格1,450円に対し、初値は1,850円(+27.6%)という好スタートを切りました。グロース市場というと、比較的規模の小さなベンチャー企業やスタートアップ企業が中心というイメージですが、同社の上場時の想定時価総額は最大で約1,360億円、市場からの資金吸収額は約470億円と試算されるなど、2024年の最大のIPO(株式の新規上場)として注目されました。
売上高予想の下方修正で株価は上場来最大の下げ幅に
2025年9月11日に発表した2025年10月期の第3四半期決算では、売上高は248億2,700万円で前年同期比30.5%増、営業利益は50億9,700万円で同82.5%増、四半期純利益は38億2,100万円で同160.5%増という好業績で着地しました。ただ、決算発表と同時に通期(2025年10月期)の売上高予想を従来の「343億9,400万~357億円」から「341億3,900万~343億円」に下方修正したことで株価は急落してしまいました。なお、営業利益予想は従来の「60億~67億1,000万円」から「67億7,300万~71億3,400万円」に上方修正しています。
決算短信によると、「物流業界における一部プロジェクトの収益貢献が本格化するのが来期以降となる見込みであることに加え、飲食・小売業界を中心にコスト抑制の動きが継続しており、回復の見通しが立っていない」ことが売上高予想の下方修正要因です。なお、2025年10月期の通期業績予想については、以下の通りです。
過去3年間の10月期の実績と2025年の10月期の業績予想(出典:同社の決算短信より作成)
「決算発表の翌日12日は、同社株に朝方から売りが殺到し、大引けは前日比454円安の1,708円と急落してしまいました。これは同社株にとっては、1日としての上場来最大の下げ幅です。同社はマーケットの期待も大きかったことから、売上高の伸びなど、成長性に疑問が出たことで必要以上に売られたのではないでしょうか。また、外国人持ち株比率も40.07%(2025年4月末)と高かったため、海外投資家の売りも出たと予想されます。
一方で、広告宣伝費を中心とした費用が当初予想を下回る見込みで、営業利益や当期純利益などは、いずれも従来予想を上回る見通しであることが発表されています。業界ごとのトレンドについては、飲食業界は厳しい環境が継続していますが、物流業界は堅調に推移しています。今年8月に物流倉庫に強いスキマワークスの株式を取得し、完全子会社化したのも物流業界の人手不足ニーズを取り込むための積極的なM&A(企業の合併・買収)として評価していいでしょう。
株価は9月下旬現在、下値模索が続いていますが、買い場探しのタイミングはかなり近づいていると考えています」(天野氏)
昨年も同時期に株価急落。「歴史は繰り返す」が株式市場の経験則
下のチャートは、タイミーの週足チャートです。これを見ると、前年も第3四半期決算の発表直後から株価が大きく下がっていることがわかります。前年の第3四半期決算発表は、9月12日でした。その直前の高値は9月3日の2,235円で、決算発表を受けて株価が急落し、同年11月15日には930円まで売りたたかれました。高値から安値の下げ幅は、実に1,305円です。一方、今年は8月22日に上場来高値の2,502円をつけ、そこから調整に入り、9月11日の決算発表を受けて下落が加速して、9月24日には1,431円をつけています。この間の下げ幅は、1,071円となります。
タイミー<215A>の株価推移(出典:Yahoo!ファインナンス)
「タイミーは、10月に本決算を迎える会社で、今回発表の第3四半期決算は5〜7月期に当たります。昨年もそうだったのですが、この会社の場合、四半期ベースで見ると5〜7月期の業績が伸び悩む傾向があります。一方で、年末年始が含まれる第1四半期(11〜1月)の業績の伸びが顕著です。つまり、第3四半期の決算で失望売りが出たとしても、いったん株価が底打ちすれば、今度は次年度の業績を期待した買いが向かいやすいと考えることができるわけです。今回はすでに高値から1,100円近くも下落していますので、買い場はかなり近づいていると考えていいでしょう」(天野氏)
実は、今回の売上高の下方修正を受けて、同社の株価レーティングを引き下げたアナリストもいました。そのニュースが報道されたことも株価下落の一因になったようです。
「タイミーはグロース市場の上場銘柄ですが、時価総額も大きく、多くのアナリストがカバーしています。それだけに成長鈍化のニュースには敏感で、同社の株価に強気だったアナリストがいったんは評価を中立に戻したと考えられます。ただし、このような銘柄の場合、ひとたび業績の底打ちが確認できると、いっせいにレーティングを引き上げてくる傾向があります。
加えて、同社には、プライム市場への区分変更の期待があります。時価総額や流動性から見ても最上位となるプライム上場の条件は十分に満たしていますので、近い将来、プライム市場に区分変更されるのはまず間違いないでしょう。ちなみに、転職サイト『ビズリーチ』を展開するビジョナル<4194>は、2021年4月に東証マザーズ(現グロース)に上場し、約2年8カ月でプライム市場に区分変更されました。
さらに、これまで手を付けてこなかった株式分割や配当実施の可能性も秘めていますので銘柄としては非常に魅力的です。仮にプライム市場入りとなれば、機関投資家やファンド(投資信託)の買いも期待できますから」(天野氏)
「はたらく=タイミー」というパラダイムシフトも
タイミーは、サービス利用率や求人掲載数で「スキマバイトNo.1」のポジションを確立していますが、新規参入の増加により競争環境に変化が生じているのも確かです。直近では、メルカリ<4385>やディップ<2379>、LINEヤフー<4689>などもスキマバイトサービスに参入してきました。
これについてタイミーでは、「すでに圧倒的な業界プレゼンスを確立しており、先行者優位性や高い業界知名度により、本邦No.1スキマバイトサービスの地位は不変」と「中期成長戦略の進捗」の中で説明しています。
「同社の強みは、29道府県57自治体と連携していることです(2025年9月現在)。しかも、東京や千葉、静岡、広島、熊本などは未連携で、まだまだ拡大の余地は残されています。競合の参入についてもさほど心配はないと思われます。人材不足はまだまだ続きそうですし、個人的には、為替動向に左右されない内需の成長企業として注目しています」(天野氏)
タクシーが「Uber」、宿泊予約が「airbnb」、会議が「Zoom」、映画が「Netflix」へと時代のパラダイムシフトが起こる中、近い将来、「はたらく=タイミー」となりうるポテンシャルは十分に秘めていると言えそうです。
取材・文:三枝 裕介
天野秀夫
マーケットウォッチャー
1987年、証券系新聞社に入社。記者歴は30年超。編集局長などを経て、代表取締役社長を12年間務める。2017年4月に独立。複眼経済塾、東京商工リサーチ「TSR情報」での連載、週刊誌への寄稿のほか、インターネットTV「ストックボイス」のキャスター、コメンテーターとしても活動中。新興市場銘柄を含めた上場企業全般をカバー、IPO情報にも強みを持つ。
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2025/12/18更新