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Memorandumの掲示板

>>920

ローリングちゃんの連載

https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13164

<兼業バーチャル株研究所>
13164
ローリング・ドリーム8月18日 21:59
「店員募集、喫茶『誇張蘭』かー。」
スマホを手に、うさぎはベッドの上で煎餅をかじりながら呟いた。
彼女は大学を卒業後、家業の金魚養殖を手伝っていたが、暇な時にはあちこちのカフェ☕を回ってスィーツを楽しむグウタラ生活を送っていた。

その日も飲食店の口コミサイト『食べグロ』で、スィーツの美味しい店を探していると、喫茶店の求人広告が目に止まったのだ。特に何の変哲も無い昔ながらの喫茶店だったが、彼女は何だか妙に気になった。

だがその好奇心は、これから身に起こる不吉な事件の序章とは、知る由も無かった。

         to be continued.


朝だよさんのリクエストにお応えして、また気の向くままに、創作ストーリーを書いていきますよ📖

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13167

    <兼業バーチャル株研究所>

    13167
    ローリング・ドリーム8月18日 22:48
    「こんにちは。求人広告見て来ました」
    うさぎは、喫茶店に入っていった。

    「ぢょっど待っどっで」
    店の奥の方から女性の低い声が聞こえた。

    うさぎは、店のイスに腰を掛け、辺りを見回した。店内の照明は、ピンク色の妖しい雰囲気を醸し出していた。壁には、有名絵画のコピー作品がいくつか飾られていた。シャガール、モネ、ダリ、そして日本の若冲などなど。

    「何やこれ。全く統一感無いやん」
    彼女は、呆れると同時に、店の主人がどんな人物なのか怖いもの見たさに気持ちが高ぶっていた。

    しばらくすると、目の前にぽっちゃり体型にタンクトップ姿のヒョウ柄が現れた。


           to be continued.

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13170

    <兼業バーチャル株研究所>

    13170
    ローリング・ドリーム8月18日 23:20
    「誰がエロ爺じゃ💢」
    遠くから作者が怒鳴った。いや、違った。


    ヒョウ柄プリントの店主は、うさぎの前のイスに腰を掛けた。
    「お姉さん、仕事の経験は有るのかい。」

    「以前、留学先のフランスの一つ星カフェで働いてたことがあって、簡単なスィーツなら作れるし、コーヒー、紅茶の入れ方にも自信があります。」
    うさぎは自慢げに言った。相変わらずの自信家である。

    店主は、うさぎをジッと見ると、
    「何か可愛げが無いね~。私は、この道40年、仕事には厳しいよ。何でも一流だから。じゃあ早速、働いてもらおうかね。」と言うなり、彼女にバケツと雑巾を渡した。
    「えっ、もう。」
    流石のうさぎも、少し引いていると、
    「もう雇用契約成立。まずは便所掃除から。無断欠勤したら、違約金払わせるからね。」

    うさぎの運命やいかに。

             to be continued.


     今日は、この辺で😪

  • >>1500


    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13174

    <兼業バーチャル株研究所>

    13174
    ローリング・ドリーム8月19日 06:30
    「ここはどこ。私は誰。」
    うさぎは、便座に座って考えた。
    「何でこんなことになるのよ。私の先祖は華族。大坂は中之島の大名で、明治になってからは、あの渋沢栄一に負けず劣らず海運、鉄道事業を起こした有栖川吉宗。通称難波の暴れん坊将軍。何処ぞの貧乏侍とは格が違うわ。その玄孫の私が、、、」
    とブツブツ言っていると、「ガチャーン」と皿が割れる音がした。

    「ごらぁ、お菊。1枚3万円もするワイルドストロベリーに何てことしてくれたんだい。うちは輸入物のカップ&ソーサーが自慢なんだ。丁寧に扱えって、何度言ったら分かるんだよ。」
    「も、申し訳ありません。」
    見ると、厨房には皿の破片が飛び散り、店主が店員らしき女性を罵倒していた。その女性は中年のパート風で、どことなく陰りが感じられた。
    「弁償だよ。代金は、今月のお前の給料から差し引いとくからね。」

    女性は、うなだれながら床を片付けた。
    「あの人、何か訳有りみたいね。明日から速攻辞めるつもりだったけど、もう少し様子を見てみようかな。」

    うさぎの心には、いつもの要らぬ好奇心が入道雲のように湧き上がっていた。
    窓には西日が差し始めた夏の午後だった。


            to be continued.

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13231

    <兼業バーチャル株研究所>

    13231
    ローリング・ドリーム8月19日 19:24
    「あ~、今日は酷い目にあった~。ヒョウ柄のケバばぁに圧倒されて、指示に従ったのが悔しい。しかも、2階の住居の掃除まで言いつけやがって。腹立ったから、トイレ吹いた雑巾で、食卓テーブル拭いてやったぜぃ。」
    うさぎは、初日の仕事を振り返った。
    「昼間は喫茶店、夜はカフェバー。従業員は昼夜で入れ替わりか。まあ、夜は3人のおばちゃんで、さながら妖怪屋敷だな。客も子泣き爺やら、ぬらりひょん。大体、「グー」って呼ばれてたもんぺのおっさんは何やねん。お世辞でおだてられて、鼻の下伸ばして、あれは「グー」じゃなくて「パー」やな。」
    独り言で、悪口三昧である。

    「だけど、お菊さん可哀相だったなぁ。紗理さんは『2カ月前に入ってきた時は明るい人だったけど、オーナーと揉めてからほとんど喋らなくなった』と言ってた。あの2階にあったブランド物の山も気になる。もう少しだけ様子を見て、倍返ししてやるか~。」
    その時「何時まで入ってるの」という母親の声が聞こえた。
    「ザバ~ッ」
    うさぎはパジャマを着て寝室に向かった。

         to be continued.  🙇🙇🙇

  • >>1500


    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13252


    <兼業バーチャル株研究所>

    13252
    ローリング・ドリーム8月19日 22:45
    翌日は10時から出勤した。開店は11時からだが、店のホームページにその日のランチメニューを載せるように言われていた。

    店主は既に仕込みを始めており、お菊さんと調理師見習いの男性も手伝っていた。
    「今日の日替わりランチには、伊勢海老の濃厚ダシラーメンを付けるわよ。それを写真に撮って。」店主は得意気に言った。

    だが、うさぎはその組み合わせに驚いた。
    「Aランチのチキンライスとラーメンはまだしも、Bランチのサンドイッチとラーメンって。」
    思わず声に出しまった。
    「そうよ、美味しそうでしょ。」
    「でも、何かちょっと違う気が。」
    すると店主はすかさず、
    「ボリューム満点。中華は何にでも合うから」と言った。
    どうやら彼女は、中華が料理の王道だと思っているようだ。だが、カフェがやりたかったのでランチメニューには中華料理を一品付けているという。

    「元はオムライスだったんだけど、最近卵が高いからチキンライスに変えたの。これぞ経営者の知恵ってやつよ。」と、店主は自分の頭を指差して言った。言われて見れば、サンドイッチはレタスが半分以上を占め、タマゴは申し訳程度に入っていた。

    「バーはラム酒のカクテルが売りなの。人気あるんだから」

    お菊さんと男性は、黙々と仕込みを続けていた。
    うさぎは「ダメだ、こりゃ。」と呟いた。


            to be continued.

  • >>1500



    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13278


    <兼業バーチャル株研究所>

    13278
    ローリング・ドリーム8月20日 08:15
    昔ながらのひなびた喫茶店にも関わらず、コアなおじさん層のファンが多いのか、ランチタイムはまずまずの客の入りだった。女性が集まる、いわゆる映えるメニューのカフェとは一線を画していた。
    なのに何故か、うさぎは、この店が妙に気になったのだった。

    ランチタイムが終って、店主が居なくなった時、うさぎは例のお菊さんに尋ねた。
    「あのぅ。オーナーは、いつもあんな調子なんですか。」
    お菊さんは、うさぎの声が聞こえていないかのように、黙々と皿を洗い続けた。

  • >>1500


    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13280

    <兼業バーチャル株研究所>

    13280
    ローリング・ドリーム8月20日 18:26
    その後も、うさぎはお菊さんに話しかけたが、彼女は洗い物を終えると、そそくさと帰っていった。昼夜の従業員が交代する時間になっていたのだ。

    うさぎも帰り支度をして、タイムカードを押していると、
    「この前、従業員の家族やお得意様を集めて、オーナーのクルーザーでバーベキューパーティーやってから、彼女おかしいのよね。」と出雲紗理が声を掛けてきた。
    「そうなんですか」
    「お菊さんの旦那は貿易商をしていて店に酒を納めてるんだけど、パーティーの時にお客の茶屋さんて方と揉めちゃったの。それで、」と紗理が話していると、彼女を遮って、もう一人の妖怪、いや熟女の絵口文子が話に割り込んできた。
    「違うわよ。それより前に蘭さんと彼女が2階で言い争ってるのを聞いたわ。あっ、蘭さんってオーナーの名前。原田蘭。彼女が2階の掃除を言いつけられた時に、何かあったのよきっと。キーワードは2階よ、2階。」
    まるで『家政婦は見た』の市原悦子さながらの野次馬っ振りである。

    彼女たちは、他にも聞いてもいないことをベラベラと教えてくれた。それによると、お菊さんの本名は朝田菊。夫が出入りしている関係で、店を手伝いにくるようになったとのこと。
    「旦那の名前は、知的な長男坊で『知太郎』だって。ギャグみたいでしょ。『おい、知太郎。』って。」
    二人は、客が居てもお構いなしに、大笑いしながら話していた。

  • >>1500


    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13286

    <兼業バーチャル株研究所>

    13286
    ローリング・ドリーム8月20日 21:30

    「う~ん。確かに店の関係者がお客さんと喧嘩したらまずいよね。オーナーがお菊さんに怒らざるを得ないのも無理ないか。でも、2階っていうのも気になる。場違いなブランド物のバッグや時計がたくさん並んでたのは胡散臭いしなぁ。誰も真相は知らないから、やっぱり本人に聞くしかないかぁ。」

    「何時まで入ってるの。」
    「は~い」チャポ~ン


    パート体験3日目。
    「今日のランチには、担々麺を付けるわよ。」
    相変わらず、店主の蘭が朝から張り切ってだみ声を上げている。
    「Aランチはロコモコ丼。で、Bランチはなんとカレーライス。経営投げとるな。」
    うさぎは、キーボードの手を震わせながら呟いた。
    外は日ざしがガンガンに照り付ける猛暑。店内は冷房が効いているとは言え、厨房はサウナ状態である。だが、それでも外で働く作業員には、結構売れていた。

    ランチタイムの後、うさぎは菊と片付けをしながら、昨日と同じように尋ねた。
    「お菊さん、何でこんな所で働いてるんですか。」
    「仕方ないから」菊は、ぽそっと言った。
    「ようやく答えてくれましたね。」
    菊は、うさぎの質問に促されるように、ぽつぽつと答え始めた。一方のうさぎの目は、わんぱくに輝いていた。
    「へへっ。さあ、これから、この店に感じる疑問を聞き出すぞ~。」

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13324

    <兼業バーチャル株研究所>

    13324
    ローリング・ドリーム8月21日 22:29
    お菊はうさぎに、彼女と夫はそれぞれ再婚であること、きっかけは蘭のブログ『セレブの城』を見て交流を始め、店の客だった『浅田知太郎』を紹介されたことなどの身の上話をした。

    「ヘ~。でも、蘭さんってお菊さんにかなりきつく当たってるけど、何かあったんですか。」と、うさぎが核心に迫る質問をしたところで、夜間部隊が入ってきたので、場所を変えることにした。

    二人は、300mほど離れたオシャレなカフェに入った。『誇張蘭』とは違い、甘い香りの漂う店内には、アフタヌーンティーで優雅なひとときを楽しむ女性たちで賑わっていた。カフェ巡りの達人であるうさぎには、もちろん馴染みの店だった。

    「ここのパンケーキ、絶品ですよ。」
    「じゃあ、それ頼もうかな。」
    オーダーの後、さっきの続きの話を始めた。
    お菊は、少し顔を強張らせ、
    「あのね。私、見たのよ。」
    「何を」
    「蘭さんの、」とお菊が言ったところで、
    「あれー、もしかして、うさぎちゃん。」
    うさぎを呼ぶ声をした。見ると、高校時代の友人の優子が立っていた。彼女は、高校を出るとアメリカの大学に進学したバイリンガルだった。
    「帰ってきたの。」
    「もう半年くらい前になるけどね」
    「連絡くれれば良かったのに」
    そんな会話を横目に、お菊は
    「私、やっぱり帰ります。」と言って代金を置いて帰って言った。
    「・・・」
    うさぎと優子は、しばらく沈黙していた。その後、気を取り直して、仕方が無いのでオーダーのパンケーキを頬張りながら、昔話に花を咲かせた。

    翌日うさぎは、昨日のことを謝って、パンケーキの代金を返そう思っていたが、お菊は現れなかった。
    「お菊の奴、無断欠勤しやがって。」
    厨房では、蘭が眉間にしわを寄せながら、夫が釣ってきた魚を捌いていた。
    因みに、Aランチは刺身定食と麻婆豆腐、ランチは刺身定食にカレー。

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/cc2a91d8ec878fbbe41d26c8f4f6f9ea/1/13368


    <兼業バーチャル株研究所>

    13368
    ローリング・ドリーム8月22日 20:46
    「お菊の奴、何サボってやがる。お陰で今日は二人前働かなきゃなんないよ。」
    蘭は、忙しそうにタバコを吸いながら、厨房の奥の椅子に座ってぼやいていた。
    その横では、調理師見習いの男性が、汗だくになりながら、動き回っている。
    うさぎは、ぽつぽつと入ってくる客のオーダー取りから配膳、レジまで、テキパキとこなしていた。

    ランチタイムが終わり、後片付けが済むと、蘭がうさぎに声を掛けた。
    「あんだ、お菊のところへ行って、様子を見てきてくれないかい。あいつ電話が繋がらないんだよ。明日出て来なかったら承知しないって言っといて。ちょっとパチスロ行ってくるわ。」と一方的に言い放って、出て行った。
    うさぎは「私が」と思ったが、今度こそ話が聞けると思い直して、蘭から聞いた菊のアパートに向かった。

    彼女のアパートは、店から歩いて5分の距離に有った。
    玄関チャィムを鳴らすと、ドアの向こうから微かに菊の声が聞こえた。
    「1枚、2枚、3枚、、」
    「えっ」。うさぎは一瞬たじろいだ。

    「お菊さん、うさぎです。開けてください。」
    すると、声はやんでドアが開き、中からお菊が現れた。
    「なんだ。うさぎさんだったのか。宅配便かと思ってお金を確認しちゃった。」


    次回からスピードアップ出来るのか?        
              to be continued.

  • >>1500



    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/30c1e6962e69b54b3f41790563b91964/1/104948


    <温故知新>
    104948
    ローリング・ドリーム8月23日 06:52
    「どうぞ上がって、って言いたいところだけど、朝から熱っぽくて。一応お医者さんに行ったら、只の夏風邪だって。」
    「連絡も無しに無断欠勤したって、蘭さん怒ってたよ。」
    「えっ。私、朝1番にラムさん、いやランさんに電話したよ。コロナだといけないから念のため休みますって。蘭さん、『気にせず休んどきな』と言ってくれたのに。コロナは陰性だったけど、明日もう一日様子を見ますってLINE も送ったけど。」
    菊は、少し困惑して言った。

    「あのババァ、騙しやがったな。」
    うさぎが呟いた。

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/30c1e6962e69b54b3f41790563b91964/1/105526

    <温故知新>
    105526
    ローリング・ドリーム8月23日 20:01
    「じゃあ、長居しちゃまずいですね。帰ります。でも、一つだけ聞きたいことが。」
    「何」
    「昨日言ってた、お店で見たものって何ですか。」
    「・・・」
    菊は口をつむんだが、うさぎはマスクをした彼女を気にすることも無く
    「いやその、何だか気になっちゃって。」と尋ねた。
    しばらくして、菊が
    「貴女に言っても信じてもらえないでしょうし、蘭さんを怒らせてしまったから言えない。彼女をこれ以上怒らせると、夫にも迷惑を掛けるから。」
    しかし最早、うさぎは好奇心を抑えられず
    「言いたいことは、はっきり言わなきゃダメよ。話を先延ばししても誰も読まない、いや聞かないわ。私、明日お店を辞めるから、その前に、蘭さんに酷い扱いを受けてる貴女を助けたいのよ。」と、前のめりに言った。それを聞いて菊は、少し迷惑そうに
    「貴女は辞めれば良いけど、私は夫が店への出入りを止められるかもしれないから。」
    「悪いようにはしません。貴女たち夫婦に何かしようとしたら、私が何とかするから。私はそんなステータスなの」
    うさぎの変に自信たっぷりの言葉に促されて、菊は自分が見たことをありのままに伝えた。

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/30c1e6962e69b54b3f41790563b91964/1/105534

    <温故知新>
    105534
    ローリング・ドリーム8月23日 20:07
    次の日(うさぎが働き始めて5日目)、彼女は菊と申し合わせて同時に店に入った。
    「あら、お菊は今日も休みじゃなかったの。しかも有栖川と一緒に来たのかい。」と、蘭は二人を手荒に出迎えた。

    二人が作業を始めると、案の定
    「何、このキャベツの微塵切りは。今日のランチは、カフェの王道メニューのイタリアンとピラフ、それに中華の王道の餃子とスープを付けるんだから、もっと丁寧に切るんだよ。」
    と蘭が菊に絡んできた。
    「お菊さん、私交代するから、メニューのアップお願いします。」
    菊はパソコンの前に座って、キーボードを打ち始めた。すると突然、前のめりに机に倒れ込んでしまった。驚く蘭を尻目に、うさぎは菊に駈け寄り
    「大丈夫、お菊さん、どうしたの。」と大声で叫んだ。
    すると、店のドアが開いて、一人の女性が駈け込んできた。
    「何かあったんですか。外まで声が聞こえてたけど」
    女性は、机に突っ伏している菊を見ると
    「これはいけない。私は看護師です」
    と、菊の口元に耳を近づけ、脈を測った。
    「呼吸してない。脈も無い」
    彼女は菊を床にゆっくり寝かせると心臓マッサージを始めた。
    「蘭さん、どうしてあんなにお菊さんに辛く当たったの。そう言えば、お菊さん、心臓が悪いって言ってた。」
    と、うさぎは蘭を攻めたてた。
    「どうしよう。店の中で」と蘭は狼狽えた。
    その時、店内の明かりが消え、何やら聞き覚えのある声がしてきた。
    「1枚、2枚、3枚、、、」

    「まさか、お菊さんの声。目の前に倒れてるのに、一体どこから。幽体離脱して出て来たのかも。」
    「そんなバカな。何でよ」

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/30c1e6962e69b54b3f41790563b91964/1/105538

    <温故知新>
    105538
    ローリング・ドリーム8月23日 20:14
    「何をバカなこと言ってるの。貴女救急車を呼んで」看護師の女性が叫んだ。うさぎは、スマホで救急に電話した。

    女性は、蘭に
    「この人、体調悪かったの。」と尋ねた。
    電話を終えたうさぎは「何してたのよ」となじった。
    「何もしてないよ。ただ、こいつが、この店に霊が居るとか言うから、『そんなもの居るわけないだろ』って怒ったけど。」
    「お菊さん、何かを訴えてるんじゃ。」
    「止めてよ、そんなこと。バカバカしい。ブランドバッグをローン組ませて売ったことはあるけど。」
    蘭は怯えながら
    「お菊。怒ったり、無理なことさせて悪かったよ。」と声を震わせた。

    次の瞬間、店内が明るくなり、お菊がムクッと起き上がった。
    「何。どういうこと」蘭が驚いていると、
    「ちょっとお芝居してみたの。お陰で、今のを録音してエビデンスが取れたわ。」
    うさぎが得意げに言った。
    「お前たち、騙したのかい。」
    「騙したって人聞きの悪い。少し仕返ししただけよ」うさぎが言うと
    「お前たちクビよ。あんたも仲間かい。」蘭が、三人に向かって言った。
    そう。この看護師を装った女性は、うさぎの友人の優子だった。彼女は、マスコミで働いていて、お菊の声を高性能レコーダーに録音し、うさぎに持たせていた。
    因みに、影の薄い調理師見習いの男性も、彼女たちから連絡を受けて、ライトの消灯、点灯に一役買っていた。
    「こんなことして、あんたたちタダじゃ済まないからね。菊の旦那も出入り禁止だよ。」

  • >>1500

    https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1160004548/30c1e6962e69b54b3f41790563b91964/1/105541

    <温故知新>
    105541
    ローリング・ドリーム8月23日 20:28
    そこに、菊の夫の知太郎が現れた。
    「フン、あんたもグルかい。丁度良いや。ウチは、これから茶屋さんから酒を仕入れるから。」蘭が言い放った。
    茶屋とは、バーベキューパーティーで、朝田と喧嘩をしていた人物で、彼も酒を販売しており、店に来ては仕入れ先を自分に変えるよう蘭に迫っていたのだ。そして、それを知った朝田と口論になっていたのだった。

    「あのな~、オバハン。あんな奴の安いラム酒や、ボジョレーヌーボーもどきを有り難かって飲むのは、酒の違いが分からんグーや、ミーシャのおっさんくらいのもんやで。こんな店との取引は、わしの方から願い下げや。」
    「私たちも、こっちから止めるわ。じゃあ、蘭さん、ご機嫌よう。」
    うさぎが言って、4人は店を後にした。

    「何なのよ。あの連中は。このスカポンタン」
    蘭は、一人残った調理師見習いに怒りをぶつけた。

    外は、太陽がギラギラに照り付け、セミしぐれが止むことなく、暑さを更に盛り上げていた。

    『うさぎが行く(ゆく)』  fin.