シェア

村田製作所が好決算でも株価が上がらないワケと今後の見通し|注目企業の決算レポート

村田製作所が好決算でも株価が上がらないワケと今後の見通し|注目企業の決算レポート

創業から80年超の歴史を持つ村田製作所<6981>。積層セラミックコンデンサ(MLCC)で世界シェアトップを誇るなど、今ではエレクトロニクス分野で日本を代表する企業へと成長しました。7月31日に発表した第1四半期決算はサプライズ決算で、通期業績を上方修正。にもかかわらず、株価は上値の重い展開が続いています。村田製作所の株価展望と、好業績にも株価が反応しないワケを松井証券のチーフマーケットアナリストの窪田朋一郎氏に伺いました。

情報提供元:All About編集部
※掲載情報は2026/8/12時点のものです。

シリコンロードに本社を置く村田製作所は、MLCCの世界トップ企業

村田製作所<6981>は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)で世界シェアトップを誇る電子部品の大手企業です。MLCCとは、セラミック誘電体層と電極層を交互に積層して構成される小型で高性能なコンデンサ(一時的に電気を蓄える電子部品)のこと。高い静電容量と優れた高周波特性を備え、多様な電子機器の安定動作を支える代表的な受動部品として広く用いられています。

MLCCは、電気や電波を扱う機器には必ず搭載され、スマホでは1台当たり約1,200個、ノートパソコンで約800個、自動車には約8,000個が搭載されています。近年では、AI(人工知能)データセンター向けの需要拡大を背景に、村田製作所の業績も過去最高益を更新する見込みです。直近の時価総額はおよそ14兆円で、日本企業のトップ20にランクインしています。

村田製作所の設立は、1950年12月(創業は1944年10月)までさかのぼります。創業者は村田昭氏(故人)で、1950年~1991年まで社長を務めました。今ではエレクトロニクスで日本を代表する村田製作所ですが、当初は陶器を製造する小さな工場からスタートしました。本社は、電子部品や半導体装置、精密機器などのハイテク企業が集積する京都府に位置しています。なお、ニデック<6594>京セラ<6971>といったハイテク企業も京都に本社を構えています。

その後は、創業者の長男である泰隆氏(1991年~2007年)、次男の恒夫氏(2007年~2020年)がそれぞれ社長を務めましたが、2020年から4代目の社長に就任した中島規巨氏は、1985年に同社に入社した生え抜きで、初となる非創業家の出身者です。

データセンター向けの需要拡大で、売上高は過去最高

では、足元の村田製作所の業績を確認しましょう。同社は、7月31日の14時に2027年3月期の第1四半期決算を発表しました。第1四半期の売上高は過去最高となる5,023億円(前年同期比で20.7%増)、営業利益は985億円(同59.8%増)というサプライズ決算で着地、通期では5期ぶりの過去最高益更新を見込んでいます。AIサーバー向けを中心としたデータセンター関連部品の需要拡大に加え、円安による為替差益が収益を押し上げました。なお、今回の決算発表と同時に、2027年3月期の最終利益予想を従来の2,930億円から3,380億円(前期比44.5%増)に上方修正しています。

村田製作所の業績推移

「今回の決算内容は、全体的には良好だったと思います。為替による収益拡大という外部要因もありましたが、AIサーバーを中心とするデータセンター関連の売り上げが前年同期比で81.1%増の697億円に拡大したことであらためて成長を確認することができました」(窪田氏)

ただ、株式市場では、決算発表当日は値幅制限いっぱいのストップ高で引けたものの、翌営業日からは上値の重い展開が続いています。同社の株価は6月22日の上場来高値1万2,895円をピークに調整局面入りし、8月12日現在では7,500円台前半で推移しています。

「村田製作所に限ったことではないのですが、株価の上値が重いのは、需給によるところが大きいと思われます。最近では、AI関連銘柄の多くは、いったん上昇が始まると、上がるから買うというモメンタム勢の買いが殺到し、ものすごいスピードで株価が上昇していました。同社の株価は、2026年4月までは4,000円を天井に打ち返されていましたが、ここを抜けた途端、短期間で株価が約3倍まで上昇しました。MLCCの需要は伸びていましたが、期待先行とモメンタム勢の買いが殺到することで株価は先に先にと織り込んでしまい過熱感が強かったのです」(窪田氏)

確かに、村田製作所だけではなく、AI半導体の指標的な銘柄となっていたキオクシアホールディングス<285A>や、主要株価指数である日経平均株価も6月22日の高値をピークに大きな調整に見舞われています。

「モメンタム勢が好んで売買する村田製作所やキオクシアホールディングスのような銘柄は、高値から短期間で大幅に下落すると含み損を抱えた"しこり玉"が増えることになります。つまり、株価が戻ってくる局面では、高値で買った投資家の売りが大量に控えているというわけです。いくら業績が良くても需給が悪いのですから、それを分かっていてまで買う投資家は少なくなるわけです。これらの"しこり玉"がある程度解消されるまでは、本格的なリバウンドや高値奪回は期待できないと思います」(窪田氏)

足元の需給を確認するうえで参考になるのが信用取引の買い残および売り残のデータですが、これを見る限りでは、8月上旬現在、信用買い残は減るどころか増えています。

「通常であれば、高値から半値まで下がると耐えられなくて投げ売りが発生するのが一般的ですが、一方であまりにも上昇が急ピッチだったことで買いそびれていた投資家が多かったのでしょう。彼らのリバウンド狙いの買いが増えているようです。参加するプレーヤーは変化しているものの、信用買い残の整理は進んでいないのですから、しばらくは戻り売りの圧力は強いままだと思います」(窪田氏)

では、村田製作所の買いは当分、見送ったほうがいいのでしょうか? また、同社の業績を予想するうえで、投資家はどこに注目すればいいのでしょうか?

「目先の需給が悪いとはいえ、同社の業績が好調なのは間違いありません。今後、中長期的に同社の株価が上昇してくるためには、アルファベットアマゾン・ドットコムなど米国の巨大テック企業によるデータセンター投資が減速しないことが条件となりそうです。今後は、村田製作所の業績の推移よりも、それら企業によるデータセンター投資への計画次第で村田製作所の株価が上下動することになりそうです。もっとも、現時点では、データセンター投資を減速するという気配はありませんし、むしろ投資額を増やすという計画が目立っています」(窪田氏)

仮に、データセンターへの設備投資がしばらくは増え続けると仮定して、ライバル企業の台頭や、競争が激しくなることによって利益が出づらくなるという懸念はないのでしょうか?

「現状の最大のライバルは韓国のサムスン電子です。国内では、太陽誘電<6976>がMLCCを手掛けています。そのほか中国企業の台頭も確かにあります。MLCCは価格よりも蓄えられる電気の容量(キャパシタンス)が重要で、信頼できる製品に対しては価格に糸目をつけないで買っているのが米国の巨大テック企業群です。ですので、低価格製品が出たとしてもすぐにそちらに行くということは考えられません。品質が高いうえに薄型という強みを持つ村田製作所の優位性は当分変わらないでしょう。また、サムスン電子は、利益率の高い半導体メモリのDRAMが好調ですので、今後はそちらを優先することも考えられます」(窪田氏)

とはいえ、懸念材料は突然出てくる可能性もあります。例えば、データセンターを使わなくてもAIが処理できるようになったり、ローカル環境で動くようなAIモデルが普及したりということも考えられます。

「確かに、今の環境が10年後も続くことは考えられません。ただ、今は同業他社に対してデータセンターの容量で負けてしまうと、AIの競争で負けてしまうことになります。ですので、巨大テック企業によるデータセンターへの設備投資はチキンレース的に拡張しているのです。いずれは、設備投資が減速するときがくると思われますが、今はそれを心配して投資を控えるのは機会損失だと思います」(窪田氏)

PER50倍水準なら、株価は9,000円オーバーに

村田製作所の直近の株価は7,538円(8月12日現在)。株価指標では、PER(株価収益率)が40.58倍、PBR(株価純資産倍率)が4.97倍ですが、居心地のいい株価水準はどの辺りと考えられるのでしょうか?

「個人的には、株価はもう少し上昇してもいいと考えています。スマホや自動車向けの電子部品だけだと成長性が低いので高いPERはつけづらいのですが、データセンター向けを考えると、もう少し高いPERは許容できます。足元のPERは40倍程度ですが、50倍くらいはあっていいと思います。単純に計算すると、株価で9,300円くらいになります。ただ、これまでのようにモメンタム勢が参加してきた場合には、PERで100倍くらいまで買われる可能性も否定できません」(窪田氏)

モメンタム勢の参戦によって、株価が乱高下している村田製作所ですが、一般的なテクニカル分析は通用しないのでしょうか?

「村田製作所の日足チャートを見てもらえば分かるのですが、テクニカル分析でも十分に勝負になると思います。実際、同社のチャート上では、4月6日に上昇のシグナルであるゴールデンクロスが示現し、下落のシグナルが出たのが7月7日でした。この期間持ち続けていれば、値幅にして5,000円以上は抜けた計算になります。注意したいのは、自分の投資スタンスによって、チャートを使い分けることです。数週間のスイングトレードであれば日足チャートでいいのですが、中長期投資であれば週足チャートもしっかりと確認してください」(窪田氏)

ちなみに、AIや半導体関連銘柄の寄与度が高い日経平均株価は、6月22日に史上最高値の7万2,831円をつけ、そこから調整局面に入っています。6月22日高値は、村田製作所やキオクシアホールディングスと一致しています。日経平均の年内の見通しについて、窪田氏は次のように予測しています。

「8月いっぱいは、戻り売りで上値の重い展開が続きそうです。ただ、企業業績自体は良好ですので、日経平均が6万円の大台を割り込むことはないのではと考えています。本格的なリバウンドがあるとすれば、9月以降になると思います。一方で、足元では、これまで出遅れていた銀行や自動車セクターの上昇が目立っています。株はダイナミックな動きをするモメンタム系の銘柄だけではありませんので、投資家としては視野を広げて相場と向かい合いたいものです。また、同じAI・半導体関連の中でも、パナソニック ホールディングス<6752>のように戻りが顕著な銘柄もありますので、それらに注目するのもいいでしょう」(窪田氏)

株式投資は、「企業を応援すること」とも言われており、「応援したい会社かどうか」ということも投資のポイントになります。創業80年以上の歴史を持つ村田製作所ですが、創業当時に制定された社是に掲げられた「独自の製品を供給して、文化の発展に貢献する」というモノづくりへの考え方は、今も受け継がれています。

窪田朋一郎

松井証券 チーフマーケットアナリスト

松井証券に入社後、ウェブサイト構築や自己売買担当、投資メディア部長を歴任。YouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」の立ち上げなどを手掛け、現職に至る。ネット証券草創期より株式市場を中心に相場を注視し続け、個人投資家の売買動向にも精通。チーフマーケットアナリストとして日々のマーケット解説を行う傍ら、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また松井証券理事として、営業部門全体の方針策定にも参画している。

【編集部より】
記事の内容には万全を期しておりますが、情報の正確性や安全性、有用性を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任で行っていただきますようお願い申し上げます。

取材・文:三枝 裕介

最新記事一覧