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不確実性を乗り越える企業たち 成長銘柄に迫る

不確実性を乗り越える企業たち 成長銘柄に迫る

2025年の株式市場は、衝撃的なトランプ関税の導入、参院選での与党大敗を経てもなお日経平均株価が史上最高値を更新するなど、投資家の旺盛な買い意欲に支えられた。もっとも世界経済の不確実性は根強く、ここからは各銘柄のポテンシャルを精査し、有力株を厳選していく必要がある。中でも高成長が期待される企業を本記事で紹介する。まずは、サイエンスアーツ<4412>を紹介する。

情報提供元:ウエルスアドバイザー株式会社

Buddycom快進撃、グローバル展開も

サイエンスアーツはライブコミュニケーションアプリの「Buddycom(バディコム)」を展開する東証グロース上場企業。ビジネスの現場の最前線で顧客と接する「フロントラインワーカー」を、IP無線の技術で支える。足元では業績成長が本格化しつつあり、株価の飛躍が展望される。

サイエンスアーツ 平岡代表取締役社長

Buddycomはインターネット回線を利用したIP無線アプリ。マイクやイヤホンなどの周辺機器とセットで、小売や運輸をはじめとする様々な業種のフロントラインワーカーが使用する。音声だけではなく、映像や位置情報を複数のユーザーで共有できるほか、会話のテキスト化、さらには自動翻訳やAI(人工知能)機能も搭載した通信サービスだ。利用料も安く、15年の投入からこれまでに1,400社超に採用されてきた。

Buddycomについて Copyright © 2025 Science Arts Inc. all rights reserved.

普及の背景には、優れた機能を生み出してきた開発力に加えて、業界大手へのアプローチを最優先した成果が挙げられる。販売開始から3年の間に日本航空(JAL)やイオン、JR各社との契約を実現。現場での要望に即応できる開発体制も評価され、その後の採用拡大につながる実績をもたらした。

また、ソフトバンクやNTTドコモ系などの通信キャリアを中心とする、強力な販売網を構築したことも競争に勝ち抜く大きな原動力になっている。こうした販売代理店による組織的な営業力が加速度的なユーザーの増加に結び付き、また、直販体制をとらないことで経営資源を製品開発に集中させた。代理店にとっても、訴求性の高いBuddycomは顧客を獲得するための武器になっている。

サイエンスアーツは25年8月期に、営業利益(非連結)4,400万円(前期は3,100万円の赤字)を見込む。期初の段階では先行費用による3,100万円の赤字を予想していたが、Buddycomの売上高が想定以上に好調なため計画を4月に上方修正した。第3四半期累計(24年9月~25年5月)の営業利益は5,700万円(前年同期は3,500万円の赤字)と通期計画を超過しているため、修正予想をさらに上ブレしている可能性もある。

サイエンスアーツFY2025業績ハイライト Copyright © 2025 Science Arts Inc. all rights reserved.

依然としてトップライン(売上高)に重きを置く同社。平岡秀一社長は「顧客は大手企業だけでも(開拓余地が)まだ2,000社あり、中小企業や自治体もこれから。一番大事なのはパイを広げることだ」と話す。一方、利益の成長も始まる点は投資家にとって心強い。増加が続くBuddycomの利用数は、人材や商品開発への投資をカバーする。

サイエンスアーツ 平岡代表取締役社長

サブスクリプション形式のARR(年間経常収益)は、25年8月期末で10億円(前期末は7.4億円)が見込まれる。過去の傾向を踏まえると、26年8月期の売上高は20億円レベル(25年8月期予想は15.7億円、前期比32%増)と考えて良さそうだ。30年8月期までの中期経営計画では、最終年度に売上高50億円、営業利益10億円とする目標を掲げている。

今後の収益の伸びをけん引する戦略として、JVCケンウッド(JVCKW)との取り組みも有望だ。業務用無線を展開するJVCKWはサイエンスアーツと資本業務連携を行い、IP無線機の領域に進出する。両社で共同開発する機器を国内の防災や運輸、製造業向けに展開する見通し。また、海外ではJVCKWが持つ800拠点規模の代理店網により、新製品のグローバル展開を狙う。「スマートフォンに頼らない、衛星通信を使った新たなデバイスの創出も視野に入れている」(平岡社長)。

JVCケンウッドとの資本業務提携 Copyright © 2025 Science Arts Inc. all rights reserved.
出所:株式会社JVCケンウッド 会社開示資料

高成長が期待されるサイエンスアーツ。開催中の関西大阪万博では、セコムやALSOKなどの警備関係者がBuddycomを活用。さらに、リアルタイムで多言語に通訳して配信する新サービスを、国際宇宙ステーションと地上を結んだライブイベントで披露して話題を集めた。投資家目線では、残る期待要素が株主還元だ。

サイエンスアーツの現預金は5月末時点で15.2億円と前期末(5.6億円)から大きく増えた。楽天グループとの資本業務提携に伴う資金調達が背景にあり、成長投資だけでなく、M&A(企業の合併・買収)や株主還元の原資となる。まだ黎明期に当たるサイエンスアーツは無配の銘柄だが、「中計期間中の還元については前向きに考える」と平岡社長は話している。

delyはレシピ動画好調、新規事業も期待

レシピ動画サービス「クラシル」を柱に存在感を強めているのがdely<299A>だ。26年3月期(非連結)は営業利益33.7億円(前期比27%増)を目指す同社だが、来期以降も高成長が継続する公算が大きい。

クラシルは管理栄養士の監修による様々な料理のレシピを、わかりやすい動画形式で提供するサービス。女性を中心に認知度が向上しており、ユーザー数の増加が続いている。また、美容やファッションをはじめとするライフスタイル情報メディア「TRILL(トリル)」も手掛け、広告による収益モデルを展開している。

ユーザーの増加により安定的な収益源に育ったメディア事業に対し、新たな業績の牽引役として注目されるのがマーケティングを支援する購買事業だ。

その基盤となる買い物サポートサービス「クラシルリワード」は、ユーザーが日常生活のついでにポイント(コイン)を貯め、デジタルギフトや電子マネーなどに交換できる。移動距離や特売情報(チラシ)の閲覧数、レシートの送信数などでコインを獲得するポイ活アプリだ。

クラシルリワードにより、ユーザーはポイ活でお得になり、企業は販促効果を享受できる。同社にとっては、アプリの利用増に伴成果報酬型などの広告収入が増える仕組み。同サービス関連アプリのMAU(月間アクティブユーザー数)は、26年4月期第1四半期に243万となり、前四半期比で約20万増加した。これにより、同期の売上高は前年同期比27%増の38.1億円に拡大した。

このほか、ライブコマースなどの新規事業にも伸び代がある同社は、今後もいわゆる「非連続的」な業績成長が見込まれる。「BE THE SUN」という企業ビジョンの通り、太陽のように熱い情熱で世界に大きなインパクトを与える存在を目指す。

巨大市場の宇宙ビジネス、QPS研をマーク

商業化へ向けた各国の開発競争が本格化している宇宙。日本政府も国策として産業振興を後押しする。並み居る強力なスタートアップの中でも、先頭集団に位置するのがQPS研究所<5595>だ。

政府は23年に宇宙基本計画を改定し、国内の宇宙産業の規模を20年の4兆円から30年の早期に8兆円に拡大する方針を打ち出した。また、これに基づき、宇宙開発利用を推進する「宇宙戦略基金」を設置。10年間で1兆円規模の宇宙関連の投資に動いている。

QPS研は16年設立の九州大学発ベンチャーで、23年に東証グロース市場に上場。手掛けるのは、電磁波を用いて地球のデータを観測するSAR(合成開口レーダー)衛星だ。8月には商用では8機目となる第12号機の打ち上げに成功。26年5月期に計6機の軌道投入を見込み、28年までに24機の運用体制を目指している。

SARは宇宙から電波を地表に照射し、反射したデータを取得する。昼夜や天候を問わずに地上を観測できるため、幅広い分野で活用が広がっている。現在の顧客は官公庁で、防衛省のPFI(民間資金等活用事業)案件の拡大余地が大きい。

26年5月期(非連結)は経常損益6.0億円の黒字(前期は2.1億円の赤字)を計画。宇宙戦略基金からの助成金が業績を支える段階ではあるが、中・長期的には衛星数の増加に伴う本業利益の高成長フェーズに入る公算。民間の農業や防災、インフラ関連の需要獲得も視野に入れる。

【ご注意】

サイエンスアーツを除く他2銘柄に関しては、ウエルスアドバイザー株式会社が運営する、株式新聞が独自に注目している企業群としてご紹介しております。

平岡 秀一

株式会社サイエンスアーツ 代表取締役社長

1984年日立西部ソフトウェア株式会社(現・株式会社日立ソリューションズ)入社。主に銀行や証券会社で利用される、OLTPの設計・開発に従事。その後マイクロソフト株式会社(現・日本マイクロソフト株式会社)に入社。2001年株式会社インスパイア取締役、2002年日本駐車場開発株式会社の監査役に就任。自分でソフトウェアをつくりたいとの思いから、2003年当社設立。2015年次世代IP無線アプリBuddycomを開発・販売開始。2021年東証マザーズ上場(その後東証グロースへ移行)。2024年楽天グループ株式会社・株式会社JVCケンウッドと資本業務提携。

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