シェア

300万円から純利益100億円へ──テスタ氏と語る『リスク管理』の選択肢
株式トレーダーとして純利益100億円を実現したテスタ氏は、今では投資信託をはじめとしたさまざまな金融商品を活用して中長期投資も取り入れているという。今年4月に投信の直販型サービスであるベイビュー投信を立ち上げ、個人向けにオルタナティブ商品の提供を始めたベイビュー・アセット・マネジメントの執行役員である植木秀郎氏は、長年にわたってプロの投資家である機関投資家を相手に運用サービスを提供してきた。同じように資産運用を生業としてきた2人だが、この2人が対談して運用について語り合うと、「リスク管理」については一致点がみつかった。2人の対談で明らかになってきた、より大きな資産作りを目指すにあたり、すべての投資家が根幹として心がけるべきこととは?
情報提供元:ウエルスアドバイザー株式会社
300万円の元手が純利益100億円を達成するまで
植木氏 そもそも株式投資を始めたきっかけは何だったのでしょう?
テスタ氏 まだ20代だったのですが、たまたま本屋で株式投資の本をみかけたことがきっかけです。デイ・トレードなら自分にもできるかもしれないと思いました。本当に軽い気持ちで始めました。
植木氏 デイ・トレードは、最初からうまくいったのでしょうか?
テスタ氏 最初はうまくいかなくて、2カ月目くらいまでマイナスの成績でした。毎日いろんな人のブログを見ながらいろんなことを学んで、3カ月目くらいから勝てるようになってきました。
植木氏 数カ月で勝てるようになるのはすごいですね。
テスタ氏 300万円を元手に投資を始めたのですが、人生で初めてお金が減るという経験をしました。やっていることが正しいのかどうかもわからなくて、負けが続くと、ただただお金を捨てるような作業をしているのではないかと思うこともありました。他に収入を得る手段がありません。そこからお金が減り続けていったので、精神的にきつかったです。
それでも1年間のトータルでマイナスになったことはありません。スキャルピング(数秒から数分程度の極端に短い時間に何度も売買を繰り返して利益を積み重ねるトレード手法)だったので、一日に何百回も売買を繰り返し、勝てるようになってからは、1カ月で1日負けるか負けないかくらいの成績でした。ただ、11年目くらいからはスキャルピングの取引限度もあって中長期投資も始めました。そこからは、年間ではプラスでも月間でみるとマイナスの月も増えました。時間軸が長くなると年間プラスを維持し続けるのは難しくなってきたとは感じています。
植木氏 私は銀行員振り出しで資産運用の世界に入り、キャリアは40年くらいになるのですが、私の投資手法としては、基本的に長期保有で、月に1回程度のリバランスはするというくらいでした。テスタさんのスキャルピングから入ったという投資とは全然違う経験をしてきました。
長期投資で劇的に変化した「勝率」、勝率より大事なこととは?
植木氏 10年目にして長期投資を始めたのには何かきっかけがあったのでしょうか?連戦連勝なら、それを続ければ良かったのでは?
テスタ氏 一番大きかったのは2013年のアベノミクスがあって、その時に、年初に1億円くらいの資産が1年で5億円くらいになりました。5億円あると15億円のポジションが作れるようになりました。ところが、15億円買って、15億円売るというようなスキャルピングは不可能でした。結果として資金が余ってきたので、新しい投資を始めるようになりました。それから徐々に中長期の投資の比率が大きくなって、近年では中長期投資から得られる利益の方が圧倒的に大きくなっています。
植木氏 中長期とはどのくらいの期間ですか?1年とか?
テスタ氏 銘柄とか何をするかによって違います。長いものは、何年もずっと配当をもらい続けている銘柄もあります。短いものは決算から決算までの3カ月もあります。様々な時間軸での投資を組み合わせてやっています。
植木氏 やはり運用期間が長くなると勝率は変わりますか?
テスタ氏 中長期の運用では勝率よりもリスク・リターンが大事だという考え方になっています。マイナスが10回あっても、残り1回でそれ以上に勝てばいいと思っています。今は勝率で言うと半分にとどかない水準だと思います。
植木氏 機関投資家の運用は、ベンチマークに勝つことが大事です。日本株でいえばTOPIX(東証株価指数)などのベンチマークがあって、それを上回る勝率が48%以上であれば生き残れるという経験則があります。しかし、48%は実はとても高く上回るのが難しい水準で、それ以下であると運用者として生き残れないと言われています。自分のお金を運用しているテスタさんと委託されたお金を運用している機関投資家では運用の枠組みが違いますから、テスタさんの話はうらやましく聞いていました。
テスタ氏 自分のお金を運用している方が自由ですね。
大きな損失で追い詰められた経験
植木氏 うまくいかなくてつらい経験をなさったこともありますよね。
テスタ氏 さくらインターネットでの損失経験は本当に辛かったです。ブロックチェーンかなんかを材料にして短期に株価が急騰したのです。その時に空売りをして大きな損失がでました。その前の年に1年で1億円くらい勝ったのに、わずか1週間で1億円くらい失いました。当時は血尿が出るくらいストレスを感じました。それまでポジションを翌日に持ち越すということをしていなかったのです。その自分のルールを曲げて、そして大損失を出してしまった。自分の甘さとか、他人に相談できないとか、仲間がいない孤独さとか、今から思うと未熟だったということですが、辛かったですね。
常に相場は新しいことが起こります。ウクライナの戦争も、今年のトランプ関税もそうです。毎年のように予期しないこと、知らないこと、新しいことの連続です。そうなると失敗や予期せぬことはつきものだと今は思うようになりました。今は、何が起きても心が揺らがなくなりました。
植木氏 キーワードは感情を入れない、平常心が重要ということでしょうか。
テスタ氏 4割減ったらやめることは決めています。6割を残して撤退する。ですから、どれだけ資産が増えても、本当に持っているのは、その6割という気持ちです。その6割以上の部分で勝ったり負けたりしてもあまり気にせずできるようになりました。
資金量や年齢で変わる「リスク」との付き合い方
植木氏 テスタさんのリスク管理の考え方は?
テスタ氏 資金の大きさや年齢などで変わってくるのではないかと思うのですが、最初の数百万円の時は、なくなったとしてもまた仕事でもして貯めて戻せる金額だと思っていました。しかし、何十億円というような金額になると、なくなったからまた働いて作れる金額ではありません。どこで守りの線を引くかということを考えるようになりました。
植木氏 攻めと守りでいうと、ずっと攻めてきて資産が大きくなって、そこから守りに入っているのは、年齢も経験も重ねられたことが影響しているということですか?
テスタ氏 投資は守りのことを考えた方が、結果として増えると考えています。増やそうと思うと、どうしてもリスクが高いことをやってしまいがちになります。リスクはなるべく少なくして小さな利益をコツコツ増やした方が、ウサギと亀ではないですが、結果的には増えると思っています。
植木氏 防御が最大の攻撃という感じですね。金(ゴールド)に投資したり、もっとリスクの小さなものにも取り組まれているのですか?
テスタ氏 金(ゴールド)、「全世界株式」、「S&P500」、「アメリカの大型株」などをずっと持っています。それは10億円くらいあるのですが、自分の中で貯金のような感じです。何も考えずに持っています。貯金は日本円でもっていると物価の上昇で目減りしてしまうので、円以外の資産で持っておこうという感じです。
守る資産の選択肢、「プライベート・デット」への注目
植木氏 最近は株式や債券以外にも様々な選択肢の幅が広がってきました。テスタさんは株式が中心かと思いますが、代替資産と呼ばれるオルタナティブ投資を活用したことはありますか?
テスタ氏 REIT(不動産投資信託)は投資していたことがあります。ただ、コロナでオフィスの需要が変わると思って売ってから、REITは持っていません。
植木氏 私は機関投資家の運用をこれまで行ってきた中で、守るための資産としてオルタナティブに注目してきました。オルタナティブといえば、REITやゴールド(金)などが有名な投資手法ですが、当社が特に今注目し、運用をしているのは、銀行以外が主体となって企業に融資を行う「プライベート・デット」というものを活用した投資手法です。お聞きになったことはありますか?
テスタ氏 そこまでのものは知識が足りてないです。株式投資をメインにやってきましたので、分散投資の資産としては「全世界株式」でいいかと思っていました。
植木氏 「プライベート・デット」というのは、上場していない企業などに投資家から集めた資金を直接貸し出し、利息を得る形になっています。一般的には利回りが高くなるとリスクも高くなりますよね。私どもは「貿易」の仕組みを活用して、安定して魅力的なリターンを目指す「プライベート・デット」のファンドをつくりました。
欧米や日本などの先進国の企業は、中国やアジア圏の中小企業と貿易をしています。輸入する先進国側の企業が代金を支払うのは、長いと半年くらい先の話になり、アジア圏の中小企業はその間に資金繰りがひっ迫してしまいます。以前は地元の銀行が融資をしていたのですが、リーマン・ショック以降はリスク規制がかかってしまい、銀行融資のハードルがグッと上がってしまいました。そこに当社の「プライベート・デット」のファンドが入ることで、資金繰りに困る輸出企業に資金を提供することが始まりました。
アジアの中小企業に対する金利水準は、米ドルで9.6%ほどのリターンです。銀行が融資を行う際、資金の回収相手はアジアの中小企業になってしまうことから、リスクが高く、融資から撤退しました。そこで、融資の代わりに、貿易の仕組みを使って売掛債権をアジアの企業からファンドが買い取ってしまいます。売掛債権を保有することで、半年後に輸入を行うグローバル企業から払ってもらえます。欧米を中心とした信用力のある大企業は、倒産するようなことが考えづらく回収できないリスクが低いのです。為替ヘッジをして手数料を差し引いても、年率で3%~4%くらいの利回りの商品を提供できます。または、円ヘッジをしていないドルベ―スで年7%~8%が期待できる商品を提供しています。
2021年からプロの投資家である機関投資家向けに提案し、残高が3,000億円近くになりました。この運用戦略を今年の4月から満を持して個人投資家の皆様に提案を始めました。オンラインの直販で提供しています。「プライベート・デット」には、これまで個人投資家はなかなかアクセスできなかったのです。金のETFやREITが出てきていますが、これらは価格変動率が大きいので、ある程度安定し、信用力対比でリターンが高い選択肢を提供したいと思っています。
テスタ氏 今まで個人には販売されていなかったのですね。面白い商品ですね。
植木氏 個人投資家の皆様にとって、銀行預金のようなキャッシュと、株式などのリスク資産の間にあって、安心感のあるバランスの取れたリスク・リターンの商品はなかなかありません。
2025年以降の資産形成を乗り切るポイントは?
テスタ氏 ニーズはあると思います。昨年新NISAが始まって、投資に興味を持った方は増えたと思いますが、皆さん元本を減らしたくないと思います。投資はいろんな勝ち方があって、十人十色です。商品もたくさんあるので、どれがいいというのかは、人それぞれです。いろんなものに目をつけて分散しておくのは、資産を守る、将来の資産形成につなげるためには大事だと思います。
植木氏 株式投資は「令和のブラックマンデー」といわれた去年8月や今年のトランプ関税のときのように急落することもあります。貿易はなくならないので、枕を高くして眠れる商品として考えていただければと思います。
テスタ氏 今年関税問題で相場は荒れましたけど、その影響はなかったのですか?
植木氏 まったくありませんでした。アメリカへの貿易量は減るのでしょうが、その他の地域への貿易の伸びは安定しています。トランプ関税の時に貿易はだめになるのではないかという問い合わせも受けたのですが、国際貿易は数兆ドルの世界なのです。関税があっても貿易は続きます。
テスタ氏 年3%から4%というのはバランスの良いリターンだと思います。日本の高配当株は4%くらいです。高配当株も業績が悪くなれば減配しますし、全体の株価が下がれば株価下落のリスクがあります。そのような価格変動を考えなくてよいのは、魅力的な商品だと感じます。銀行に預けておいただけではダメなんだということを気づいた人には、すごく良い商品だと思います。投資信託はプロに任せることになるので、長い目で見て安定しているところから選ぶべきだと思います。
植木氏 別の観点でみると、これからのインフレ時代の投資先として当社のこのファンドは非常にフィットすると考えています。インフレになると「何もしないでいるとキャッシュが暴落する」といわれます。今までのデフレの時代とは異なります。
テスタ氏 僕はデフレだったという時にも、ものの値段の上がるペースが落ちるディス・インフレだったと思っています。小さい時に買っていたものの値段は、実は今はずっと値上がりしています。それが去年、おととしから加速しているようです。これからはインフレが当たり前だと思いますので、現金比率をいかに低くするかということを考えた方が良いと思います。現金を多く持っている方が安全だと言われますが、本当は逆なんじゃないでしょうか。新NISAの時代だからというわけではありませんが、まさに「資産運用の時代」になっていると思います。さまざまに知恵を絞って自分の目的に適った投資先を探すことが重要な時代だと思います。
植木氏 おっしゃるとおりです。私どももプロの運用者として知恵を絞って、魅力的な投資の選択肢を提供し続けていきたいと思います。
ベイビュー・アセット・マネジメント株式会社 執行役員
東京大学卒業。1985年に日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)に入行。法人融資に従事後、米国ジョージワシントン大学経営大学院にてMBA経営学修士を取得。その後、長銀投資顧問(現UBSアセット・マネジメント)、ウエリントン・マネージメント・ジャパン、明治安田アセットマネジメントにて様々な運用や投資戦略全般業務に従事。2024年8月に現在のベイビュー・アセット・マネジメントの常勤顧問に就任し、翌年4月に同社執行役員に就任。現在に至る。
投資家
兵庫県生まれ。2005年に株式投資を始めて専業トレーダーに。スキャルピング、デイトレードといった超短期~短期取引から中長期投資まで、様々な手法を用いている。ハイリスク・ハイリターンな株式投資の中でリスクコントロールに長けており、20年間一度も負けた年はない。マネーリテラシー向上のための講演活動、メディア出演も行っている。
- ・投資信託に係るリスクについて
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とし投資元本が保証されていないため、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により投資一単位当たりの価値が変動します。従ってお客様のご投資された金額を下回ることもあります。又、投資信託は、個別の投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なりますので、ご投資をされる際には目論見書、商品説明書、信託約款および契約締結前交付書面をご覧ください。 - ・手数料等について
申込手数料:上限3.85%(税込)以内で販売会社が独自に定める率を乗じて得た額。信託財産留保金:上限0.3%。信託報酬:純資産総額に対して上限 年率2.31%(税込)、実績報酬(実績報酬が設定されているファンドに限る):基準価額がハイ・ウォーター・マークを上回った場合、当該基準価額と当該ハイ・ウォーター・マークの差額の22%(税込) ※ハイ・ウォーター・マークは実績報酬の費用計上時に見直されます。その他の費用等:ファンドの組入有価証券またはデリバティブ取引等の取引の際に発生する委託手数料および委託手数料に係る消費税等相当額等の有価証券取引に係る費用、売建て(ショート)実行に伴う品貸料等の費用、保管費用・借入金の利息・融資枠の設定に要する費用およびその他管理事務等(含、受益権管理)の費用 ※その他の費用等はファンドの運用による取引量等に応じて異なりますので、事前に料率や上限額等を表示することができません。 - 《ご注意》
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、当社が運用するすべての投資信託のうち、徴収する夫々の費用における最高の料率を記載しております。投資信託に係るリスクや費用は、夫々の投資信託により異なりますので、ご投資をされる際には、事前に良く目論見書、商品説明書、信託約款および契約締結前交付書面をご覧ください。
|
|
| 商号 | ベイビュー・アセット・マネジメント株式会社 |
|---|---|
| 金融商品取引業者 | 関東財務局長(金商)第397号 |
| 加入協会 | 一般社団法人 投資信託協会会員 |
カテゴリーから探す
証券会社総合ランキング
2025/12/18更新




