政府がこのタイミングで誘致への意思表明を迫られているのは、20年に始まる欧州の素粒子物理学の次期研究計画の検討が今後、本格化するためだ。ILCを日本が建設するかどうかは、この計画にも影響を与える。ILCは米欧と協力して進めるプロジェクトであり、関係国の動向は無視できない。
こうした状況を見据え、ILCの計画を推進する科学者の国際組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」などは、国際将来加速器委員会が東京で開く会合に間に合うよう、3月7日までに日本政府が誘致に関する態度を表明するよう求めている。期限まで残り1カ月だ。
ただ、多額の国費を要する事業を海外の事情で決めることには疑問の声も多い。政府が3月までに意思表明をするにしても、誘致の是非に関して明確な方針を示すことにはならない見通しだ。柴山文科相の発言にあるように、当面は学術会議を含めて国内で議論を深めつつ、米欧などの意向も探りながら実現性を検討することになりそうだ。
ILCを推進する関係者も、現段階での誘致の意思決定までは求めておらず、その前段階として「まずは政府間で協議を開始すべきだ」と主張している。
重要なのは何が日本の将来にとって最善なのかという視点だ。財政的な余裕が乏しい中、巨額の負担を伴うILC計画を進めるなら相当な覚悟が必要だ。一方で、歴史的発見につながる可能性を秘めたILCのような施設を日本に誘致する機会がそうないのも事実だ。
1月18日にILC計画を推進する産学の会合が都内で開かれ、米カリフォルニア大学バークレー校の村山斉教授は日本の厳しい財政事情に理解を示しつつ「そういう日本だからこそやる価値がある」と訴えた。国の発展や成長を支える科学技術に力を入れることは、日本の将来にもプラスになるという考えだ。
いたずらに結論を先延ばしにするのは好ましくない。政府が最終的に判断を下す際には、どんな結論になるにしても批判は出るだろう。だからこそ議論から逃げず、責任ある決断を下す姿勢が必要だ。
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