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QPSホールディングスはどんな企業?今後の成長と買いのタイミングは?|注目企業の決算レポート
米国では、イーロン・マスク氏率いる「スペースX」が上場し、宇宙関連ビジネスに世界的な注目が集まっています。QPSホールディングス<464A>は、日本を代表する宇宙ベンチャー企業。直近では、防衛省から5年間で697億円の大型案件を受注し、話題となりました。宇宙関連ビジネスは、高市政権が掲げる「戦略17分野」にも位置付けられており、夢のある国策関連として注目度の高いテーマです。ただ、株価は5月に記録した上場来高値から急落し、下値模索が続いています。ファイナンシャルアドバイザーの長谷川伸一氏にQPSホールディングスについてお話を伺いました。
情報提供元:All About編集部
※掲載情報は2026/7/27時点のものです。
宇宙開発事業への期待から、初値は公募価格の2倍超に
QPSホールディングス<464A>は、九州大学発祥のベンチャー企業。小型SAR(合成開口レーダー)衛星を開発・製造し、宇宙から撮影した画像データを販売しています。代表取締役社長CEOの大西俊輔氏は、九州大学大学院(宇宙工学専攻)在籍時から現在に至るまで、10件を超える小型人工衛星開発プロジェクトに従事。特に、大学院在籍時の「QSAT-EOS」(九州大学を中心とした九州地区の大学・企業による50kg級小型衛星プロジェクト)では、学生プロジェクトリーダーとしてシステム全般の指揮を取り、2014年11月に衛星打ち上げを成功させた実績の持ち主です。
同社は、2005年に九州大学名誉教授の八坂哲雄氏と桜井晃氏、三菱重工業のロケット開発者であった船越国弘氏によって「QPS研究所」の社名で創業されました。現在、代表を務める大西俊輔氏は、2013年10月に同社に主任研究員として入社し、2014年4月に代表取締役社長に就任しました。
QPS研究所は、2023年12月6日、東証グロース市場に新規上場し、その後、2025年12月1日に持ち株会社体制に移行し、完全親会社である「QPSホールディングス」として改めて東証グロース市場に上場しました。なお、従来のQPS研究所は上場廃止となりましたが、株式は自動的に新株式に1対1で移行されています。
ちなみに、2023年に新規上場したQPS研究所は、公募価格390円に対し、初値は860円と約120%の上昇となりました。公募価格に対して初値が2倍以上になったのは、宇宙開発事業という成長性や話題性に加え、安全保障など防衛関連の側面も兼ね備えていたためと考えられます。
その後、2025年12月1日にQPSホールディングスとして生まれ変わって新規上場した同社の株価ですが、上場当日の株価は1,798円でスタートし、約6カ月後の2026年5月29日には上場来高値となる4,485円を記録しました。ただ、そこが株価のピークとなり、その後は利益確定売りに押される形で急落を開始、直近の7月27日には初値を下回る1,415円まで売り叩かれています。
「QPSホールディングスの株価急騰の背景には、米国のスペースXの上場もあったはずです。宇宙開発事業には大きな成長性が秘められていますし、無限の夢があるビジネスです。加えて、国内では高市政権が掲げる『戦略17分野』に位置付けられていて、株式市場のテーマ性も十分でした。会社としての業績は赤字でしたが、期待先行でPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった株価指標では考えられない水準まで買い上げられたのです。これはベンチャー企業によくある傾向ですので、今後もPERやPBRといった株価指標で同社を判断すべきではないと思います」(長谷川氏)
なお、スペースX(正式名称は、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ)は、米国の実業家であるイーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業で、ロケット打ち上げ事業や衛星インターネット通信事業を手掛けています。話題の衛星インターネットサービスの「スターリンク(Starlink)」も同社のサービスです。米国ナスダック市場の上場は、2026年6月12日。上場後3日間は株価が上昇したものの、7月24日現在では公募価格の125ドルを割り込み、115ドル近辺で下値模索が続いています。
防衛省から5年間で697億円の大型案件を受注
では、QPSホールディングスの事業内容を見ていきましょう。同社は、地球観測衛星データ事業を展開しており、具体的には、小型SAR衛星を開発・製造し、衛星を打ち上げて地球を観測し、そこで取得した画像データを販売するというビジネスモデルです。同社の強みは、「軽量・低コスト・高精細」な小型SAR衛星で、雲や夜間でも地表を観測できる特徴があります。
主要顧客は官公庁で、2026年2月には防衛省と「衛星コンステレーションの整備・運用等事業」の中で画像データ取得業務に関する委託契約を締結し、5年間で697億円の大型案件を受注しました。このように官公庁を中心とした収益基盤も同社の強みです。ちなみに、同社の小型SAR衛星は5年をメドに設計・運用されているとのことです。
「設計寿命が5年間ですので、継続的に機体をつくって打ち上げる必要があります。5年という限られたサイクルの中で、今後、安定した収益を上げていけるのかがポイントとなりそうです。一方で、5年で機体が入れ替わるため、最新技術の搭載が可能というメリットがあるのも確かです。これから先も官公庁からの受注が継続するなら、同社の収益基盤も安定してくるのではないでしょうか」(長谷川氏)
2031年5月期を最終年度とした中期経営計画によると、「本格的な収益成長ステージへ移行し、2031年5月にはグローバルなインフラとして活用される状態を目指しつつ、2032年5月期以降の新規プロジェクト立ち上げを準備する5年間とする」とあります。なお、2031年5月期には、売上高で300億円、営業利益で30億円を目標としています。
「この手の事業は、参入障壁も高く、ライバルはそう簡単には出現しません。ですので、中期経営計画の数値は実現性が高いと考えられます。今のところ、小型SAR衛星ビジネスを実現可能なプレーヤーは世界でもわずかに5社で、同社は衛星の打ち上げ実績でも3位につけています。今後は積極的に海外展開も行っていくとのことですので業績の拡大に期待できそうです。一方で、懸念材料を挙げるとすれば、衛星を打ち上げるためには巨額の費用が必要なことです。今年3月には、その費用を捻出するためにスカパーJSAT、三井住友海上火災保険、ミツウロコグループホールディングスを割当先とする152億円の第三者割当増資を実施しました。発行済み株式数が増えることで、既存株主が保有する株式に15.08%の希薄化が生じてしまったのです。また、衛星の打ち上げには失敗の可能性もありますので、それもリスク要因となります。もっとも、それらを勘案しても、宇宙ビジネスには限りない可能性と夢があります」(長谷川氏)
前期の業績上方修正は、補助金収入の前倒しによるもの
そんなQPSホールディングスが、7月14日に2026年5月期の決算実績と、2027年5月期の業績予想を発表しました。また、これに先駆けて、7月1日には2026年5月期の経常損益を従来予想の6億円の黒字から11億円の黒字に上方修正しています。
「この上方修正を受けて、7月2日から6日にかけては株価が動意づく場面も見られましたが、これは業績の拡大によるものではなく、宇宙戦略基金の補助金収入を前倒し計上したことによるものです。7月7日以降は、株価の上値は重くなり、7月27日には上場来安値を割り込んでしまいました。ただ、決算短信を読み込むと、今後も防衛省などの官公庁案件の増加などが期待できることや、2027年5月までに7機の小型SAR衛星の打ち上げを予定していることなどが記載されていました。会社側の計画では、2027年5月期は売上高で100億円(162%増)、営業利益で3億円を見込んでいます」(長谷川氏)
大手証券の目標株価は現値の2倍超で上昇余地大
では、足元で上場来安値水準で推移しているQPSホールディングスの株価について、長谷川氏はどのように評価しているのでしょうか?
「チャート的に見てもそろそろ買い場は近づいていると考えています。とはいえ、落ちてくるナイフを掴みに行く行為は危険です。まずは株価の底打ちを確認する必要があります。そのうえで、大きな資金で勝負するのではなく、今はポートフォリオの数パーセント程度で『夢を見る』という投資スタンスがいいでしょう。その後、業績の拡大が数字に表れてきた段階で再度、考えてはいかがでしょうか。宇宙ビジネスは、株式市場の大きなテーマであることは間違いありませんので、今後も折に触れて物色される場面があるはずです。米国のスペースXの株価が上昇してくれば、同社にも思惑買いが向かうことになると考えています。同じベンチャーでも、バイオベンチャーは各企業の個別の材料で株価が上昇しますが、宇宙ベンチャーは、宇宙関連のニュースが出ると一斉に上昇する傾向があります。これも魅力の1つだと思います」(長谷川氏)
ちなみに、国内大手証券では、同社の中期経営計画を受けて、「ポジティブな印象」とのレポートを出し、同社のレーティングを強気の「Buy」に設定、目標株価を3,521円としています。7月27日時点の株価は1,400円台ですので、上値余地は2倍以上という計算が成り立ちます。
「宇宙関連ビジネスに注目が集まるためには、相場環境も大事な要素です。足元では、中東情勢の悪化やAIへの過剰投資懸念などから日米の株式市場が売られる展開にあります。足元の業績がしっかりとした企業なら別ですが、ベンチャー企業のように将来への期待で買われる銘柄の場合、やはり投資環境が"リスクオン"になることが必要だと思われます。個人的には、今後の日米の株式市場にはポジティブな見方をしているのですが、現段階では、全力で同社に投資するのではなく、あくまでも打診買い程度に抑えておいた方がいいと思います」(長谷川氏)
最後に、宇宙ビジネスを展開する関連銘柄には、月面輸送のispace<9348>、宇宙デブリ除去のアストロスケールホールディングス<186A>、地球観測衛星データのSynspective<290A>などが代表的です。それぞれの株価推移を検証すると、どの銘柄もQPSホールディングスと似たような推移をたどっています。今後は、これらの銘柄を比較して、日本を代表する宇宙関連企業を探してみるのも投資妙味がありそうです。
長谷川伸一
アセットマネジメントあさくら専務取締役
ファイナンシャルアドバイザー
1989年に太平洋証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。証券営業や投資アドバイザー業務を経て、2012年11月に資産運用アドバイザリー業務を展開する独立系の会社に転職。ラジオNIKKEIでは、株式情報番組のパーソナリティも務める。著書に『投資でお金を増やす人、減らす人 知識・資金ゼロからの投資超入門』(総合法令出版)YouTubeの「朝倉慶チャンネル」ではわかりやすい銘柄解説に定評。
取材・文:三枝 裕介
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2026/07/09更新