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配当利回りでみると、欧州の銀行株指数が22年初の4%台から24年5月末時点で約7%と伸びた。米国や日本の3%前後を上回る。 これまで欧州銀を取り巻く経営環境は厳しかった。欧州債務危機が10年代前半に発生し、ECBは14〜22年までマイナス金利政策を導入していた。逆風下でリストラなどのコスト削減や負債縮小が進んだ。 「欧州銀は危機時と比べて大きな変革を遂げ、過剰資本にさえ陥るようになった」(JPモルガン・アセット・マネジメントのマイケル・バラコス・ポートフォリオマネジャー) 経営状況が改善したところにECBが22年に利上げに転じた。預金金利と貸出金利の利ざやが拡大して業績が好転し、配当原資が増えた。24年1〜3月期の欧州銀大手5行の純利益の合計は124億ドル(約1兆9400億円)と、QUICK・ファクトセットでデータのある11年以降で前年同期に次ぐ過去2番目の高水準となった。 米国の大手6行では24年に四半期配当を引き上げたのはJPモルガンのみだ。米銀全体の融資は前年比マイナスに転じた。社債発行を通じた資金調達やファンドによる融資との競合で、銀行貸し出しのパイ拡大に歯止めがかかる。 日本は株主還元は比較的低水準だが、日銀の金融政策の正常化期待が強力な追い風となっている。銀行株指数が07年以来の高値圏で推移する。市場では「利上げは十分に織り込まれておらず、中長期的にも買われやすい地合いが続く」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネージャー)との声がある。
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ダブルバガー株には株主還元を強化した銘柄も少なくない。東京証券取引所が資本コスト(期待リターン)を意識した経営を促す点が背景にある。川崎汽船は配当利回りの高さと継続的な自社株買いが材料視される。丸三証券は前期から5年にわたり特別配当を出すとした。 ただ、三井住友DSアセットマネジメントの木村忠央チーフファンドマネージャーは「中長期で最も重視したいのは、既存事業の収益性の向上だ」と指摘する。木村氏は「株主還元は一時的な上昇効果の場合もあり、成長投資の戦略は説得力に乏しい事例も少なくない」と続ける。 実際に株式市場を見渡すと、本業の稼ぐ力を高めて1年で2倍を達成した銘柄はある。代表例が空調設備の工事を手掛ける高砂熱学工業だ。自動化や省力化で業務を効率化し、受注採算が改善している。野村証券の小高貴久氏は「建設や物流のような人手不足の業界は、値上げがしやすくなっている」とも指摘する。 アシックスは主力のランニングシューズで国内外ともブランド力を高める。旧ソニーグループ系で、スマートフォンなどに使うフィルム型の接合材に強いデクセリアルズも連続の純利益最高見通しで投資家をひき付ける。 1年で2倍の潜在可能性を秘めた銘柄もある。例えば88%高で即席めん大手の東洋水産だ。海外でも主力の「MARUCHAN」シリーズを拡販する。 ある運用会社のファンドマネジャーは、ワイパーゴムのフコク(同68%高)を評価する。不良品の低減といった地道な努力を積み重ね、純利益で連続最高益を見込む。 「1年で50%以上高」とすれば日立製作所(93%高)や三井物産(84%高)など約400銘柄もある。どれだけ相場の浮き沈みが激しくとも、じっくり目をこらせば、発掘できるお宝株は眠っている。
だが足元で潮目が大きく変化して…
2024/06/20 09:14
だが足元で潮目が大きく変化している。AIを実装したパソコンやスマホの新モデルの発表が相次ぎ、24年夏以降の需要回復の大きな起爆剤になるからだ。25年に米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」のサポートが終了することを受けた買い替え需要も追い風だ。 「今が買い時」とみる市場関係者は少なくない。なかのアセットマネジメントの山本潤チーフポートフォリオマネージャーは4月から運用を始めた投資信託に扶桑化学株を組み入れた。「高シェアで価格決定力があり、将来的な需要の伸びが確実なのにバリュエーション(投資尺度)では割安」と分析する。 三井住友トラスト・アセットマネジメントで国内半導体関連株に投資するファンド「半導体ジャパン」を運用する佐相兼呂ファンドマネジャーは「半導体の高度化に欠かせない存在として見直される部素材メーカーに投資妙味がある」と指摘する。同ファンドでは5割弱は部素材メーカーに投資し、時価総額が3000億円以下の中小型株も多数組み入れている。 佐相氏が有望視している企業の一つが山梨県上野原市に本社を置くトリケミカル研究所だ。半導体の微細化に欠かせない誘電材料が主力で、先端半導体向けでは世界シェアの半分近くをもつ。会社は公表していないが、米マイクロン・テクノロジーや韓国のSKハイニックスなどが最終的な顧客とされる。