今回の大型原油タンカー(VLCC)🚢運賃の乱高下は、一見すると地政学リスクの高まりを映した不安定な相場に映る。
しかし、僕は今回の動きを「予想されていた最悪の事態が起きなかったことを、良いニュースとして受け取る局面」だと評価している。
市場が最も警戒していたのは、イラン🇮🇷情勢の緊迫化を受けたホルムズ海峡の実質的な閉鎖、あるいは恒常的な通航障害であった。
中東から極東へ向かう原油輸送の大動脈が止まる事態は、原油価格の急騰、インフレ圧力の再燃、ひいては株式市場全体への深刻な悪影響につながりかねない。
そうした意味で、ホルムズ海峡は常に「最後のレッド🟥ライン」として意識されてきた。
結果はどうか。
イラン🇮🇷を巡る緊張は確かに高まったものの、ホルムズ海峡は閉鎖されなかった。
通航は維持され、物流は止まらなかった。
この一点だけで、市場は最悪の連鎖反応を回避したと言える。相場は常に最悪を想定し、その最悪が現実化しなかった瞬間に、静かに安心を取り戻す。
そのプロセスが、今回の運賃急騰と高止まりの背景にある。
足元でVLCC🚢の運賃は10日間で約4倍に急上昇したが、これは実需の急拡大というよりも、「最悪事態に備える保険料」が一気に上乗せされた結果と見るべきだ。
原油価格の先高観を背景に、荷主が早期に船腹を押さえようとしたこと、影の船団への制裁強化を織り込んだ動き、さらには迂回ルートを想定した調達行動が重なった。
重要なのは、それでもホルムズ海峡というボトル🧴ネックが機能し続けている点である。
イラン🇮🇷側にとっても、同海峡の全面封鎖は自国の原油輸出を止め、外貨収入を断ち、中国やインドとの関係を損なう「自爆的な選択肢」だ。
政治的な示威行動として緊張を高めることと、実際に物流を遮断することの間には、大きな隔たりがある。今回も、後者には踏み込まなかった。
この意味で、現在の地政学リスクは「管理不能な危機」ではなく、「管理可能な緊張」に留まっていると評価できる。
市場にとって致命的なのは不確実性そのものではなく、不確実性が制御不能になることだ。
今回は、その一線を越えなかった。
加えて、今回の運賃高騰は、正規のタンカー市場にとっては収益機会という側面も持つ。
ロシア🪆産やイラン産原油の一部は、影の船団によって運ばれてきたが、制裁やリスク意識の高まりにより、正規のVLCC市場へと需要が移行しつつある。短期的には、船主や海運会社の収益を押し上げる要因となる。
地政学リスクは常に「悪材料」として語られがちだが、物流が止まらない限り、それは必ずしも市場全体にとっての致命傷にはならない。
今回のケースは、恐怖が先行し、最悪が想定されたものの、その最悪が現実化しなかったことで、結果的に市場の耐性が確認された局面だといえる。
ホルムズ海峡が閉鎖されるという読みは外れた。
しかしそれは、相場にとって「悪い外れ方」ではない。むしろ、良い外れ方だった。物流は維持され、インフレーションの暴走は回避され、運賃は高水準ながら制御可能な範囲にある。
今回の運賃上昇は、危機の始まりではなく、安心への通過点である。
市場はすでに、その現実を静かに織り込み始めているものと思料します。🧒
投資の参考になりましたか?



