<新興国eye>カンボジアは成長続く―世界銀行、半期経済報告

4/26 8:44 配信

ウエルスアドバイザー

 3月31日、世界銀行は、東アジア・大洋州地域半期経済報告(2024年4月)を発表しました。今回の報告書は「成長の確固たる基盤(Firm Foundations of Growth)」と題されています。

 報告書では、「東アジア・大洋州地域の途上国は、世界の他の地域よりも急速に成長しているが、パンデミック前よりは減速している。中国を除く東アジア・大洋州地域の発展途上国の成長率は、2023年の4.4%から今年は4.6%に上昇する」と分析しています。

 カンボジア経済については、2024年のGDP成長率予測を5.8%(2024年10月予測6.1%)に引き下げました。2025年は6.1%(同6.3%)、2026年は6.4%にまで高まると予測しています。2024年は、世界の主要国の需要減退という逆風の中で、観光セクター等のサービス産業の回復と好調な輸出が成長を支えているとしています。

 物価上昇率は、ロシアのウクライナ侵攻を発端とした資源・食料の値上がりの影響を受け、2022年は5.5%まで上昇したものの、ピークは過ぎて、2024年は2.8%に低下すると見ています。また、2025年は2.7%、2026年は3.0%と安定すると予測しています。

 経常収支(対GDP比)は赤字から黒字に転換するとしています。2021年のマイナス42.6%、2022年のマイナス24.4%から、2023年2.4%、2024年3.4%、2025年3.4%、2026年3.6%と改善すると予測しています。2023年末の外貨準備は、前年比11.7%増の199億ドル(輸入の7か月分)に増加し、非常に安定的なレベルを維持しています。

 金融セクターについては懸念を示しています。建設・不動産の不況を大きな要因として、貸付の伸び率は前年の18.9%から2023年は4.1%と急速に伸び悩みました。この結果、2023年の総資産利益率は、銀行3.8%(前年7.0%)、マイクロファイナンス6.0%(前年17.6%)と大きく減少しました。また、不良債権比率も、銀行5.4%(前年2.2%)、マイクロファイナンス6.7%(前年2.6%)と急上昇しています。

 リスクとしては、世界的な景気後退の悪化、世界的な金融引き締めの長期化、中国の経済状況等をあげています。特に、長引く建設・不動産不況の中で、金融機関の不良債権比率の悪化は重要なリスクとなっていると指摘しています。

【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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最終更新:4/26(金) 8:44

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