<25年相場展望>「治療用アプリ」は巨大市場へ、日本も普及期来るか
スマートフォンなどで治療を支援するアプリの市場が、2025年に大きく広がりそうだ。既に海外では浸透しつつあり、日本も当局の承認次第で本格的に普及期を迎える公算。関連株をマークしたい。
■先行するキュア・アップ
治療用アプリはある疾患に特化した情報を提供することで、病気の改善を目指す。医薬品や医療機器に続く「第3の治療」に位置付けられ、日本では20年に初めて薬事承認され話題になった。厚生労働省はこれまでに3種類のアプリを認可している。
こうしたアプリの国内市場の規模は、22年時点で2億円程度だった。しかし、一部では35年に3000億円近くまで拡大すると予想されている。世界全体では23年で約5兆円で、32年には約14兆円の巨大マーケットに成長するとみられている。
国内では、スタートアップのキュア・アップ(東京都中央区)が先行する。20年に初承認された禁煙アプリ、22年に販売が認められた高血圧対策アプリはいずれも同社のものだ。
キュア・アップはさらに、減酒治療のNASH(非アルコール性脂肪肝炎)アプリの開発に取り組んでいる。同領域ではサワイグループホールディングス <4887> とライセンス契約を結んでおり、今後の薬事承認や保険適用が期待される。
また、キュア・アップには伊藤忠商事 <8001> や第一生命ホールディングス <8750> のほか、コシダカホールディングス <2157> やインテージホールディングス <4326> が出資している。
■サスメドも期待値大
サスメド <4263> も注目の存在だ。
同社の不眠症向けアプリは23年に薬事承認を取得し、保険収載の手続きを進めていたものの、医師の対面療法での保険適用が見送られたことで、24年1月に保険収載の希望書をいったん取り下げた。その後は保険医療材料制度の見直しに伴い当局との協議を重ね、同8月に改めて販売承認を申請した。
不眠症には世界人口の約35%が罹患(りかん)しているとも言われている。富士経済の予測では、2030年に治療アプリで200億円、治療剤で900億円超の市場になる見通し。サスメドがアプリの上市にこぎつければ、販売契約を結ぶ塩野義製薬 <4507> とともに大きな株価材料になりそうだ。
サスメドはほかにも、複数のアプリの開発を進めている。乳がんや腎臓病、耳鳴り治療が臨床試験段階にあり、悲嘆障害や誘発性便秘症、乳がん切除後疝痛(せんつう)症候群、ADHD(注意欠如・多動症)、産婦人科領域向けにも取り組んでいる。
このうち、耳鳴り治療は杏林製薬 <4569> を開発パートナーに選び、22年に共同研究開発・販売契約を締結した。産婦人科領域ではあすか製薬ホールディングス <4886> と23年9月に提携し、アプリを開発中だ。
■ロートや広告分野のGENOVAも
ほかにも、治療用アプリに商機を見いだす企業は多い。塩野義薬は米スタートアップのアキリが開発したADHD患者向けアプリの日本での薬事承認を2月に申請。同アプリは既に欧米で販売承認を取得しており、塩野義薬は日本のほか、台湾での販売権を持つ。
ロート製薬 <4527> は韓国のアプリ開発ベンチャーのS-Alphaと3月に資本提携し、ライセンス契約を締結した。サイバーエージェント <4751> は医師によるオンライン診療や服薬指導サービスを提供しており、23年1月には治療用アプリの企画・開発にも乗り出す方針を打ち出している。
一方、治療用アプリでは、規制緩和によりインターネット広告も解禁される見通しだ。医療分野のマーケティング支援を展開するGENOVA <9341> は、自社内で禁煙アプリを導入した健康促進プランを始めている。(片岡利文)
提供:ウエルスアドバイザー社
ウエルスアドバイザー
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最終更新:1/6(月) 9:06