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34年ぶりの円安、米株・米債券ファンドの運用成績は3年で50%値上がりした米ドルのかさ上げ効果に注意

4/17 15:18 配信

ウエルスアドバイザー

 4月16日の外国為替市場で、ドル円は一時1ドル=154.79円という1990年6月以来約34年ぶりの円安・ドル高水準を記録した。米FRBのパウエル議長が、「(インフレ退治について)確信を得るまでにはさらに時間がかかる可能性が高い」と発言し、より長期間の高金利維持を示唆したと受け取られたことで、ドル高に弾みがついたためだ。日本の金融当局者の発言から為替介入の水準が「155円」をターゲットにしているとみなされていることも円安基調の背景になっているようだ。この為替の変動は、ドル建て資産に投資する投信のパフォーマンスをかさ上げしている。それぞれの資産のパフォーマンスに対する評価を狂わせる要因ともなりかねず、投資計画を考える際などには注意が必要だ。
 

 2021年1月時点で1ドル=102円台だった。現在の154円台まで3年余りで50%もドル高・円安が進んだことになる。この分が、ドル建て資産のパフォーマンスをかさ上げしている。たとえば、「iシェアーズ S&P500 米国株ETF」(為替ヘッジなし)の過去3年間の年率トータルリターンは23.50%だが、同じ運用をして為替ヘッジをした「iシェアーズ S&P500 米国株ETF(為替ヘッジあり)」は7.41%でしかない。「S&P500」の長期リターンは平均すると年率7.5%というデータがあることから、為替ヘッジありのパフォーマンスが実態に合っているといえるが、為替ヘッジのあり・なしによる差は非常に大きい。
 

 また、投資対象が債券になると「iシェアーズ・コア 米国債7-10年ETF」(為替ヘッジなし)は、3年(年率)トータルリターンが6.69%だが、「iシェアーズ・コア 米国債7-10年ETF(為替ヘッジあり)」はマイナス7.44%になっている。過去3年間で米国の政策金利はゼロ%から5%超の水準に上がったため、債券価格は下落し、債券ファンドのパフォーマンスは悪くて当たり前である。にもかかわらず、為替市場の異常な円安・ドル高のために、日本の投資家は米国債に投資していても儲かったことになっている。
 

 これらの事例は、いずれも同じ投資対象、同じ投資手法のファンドが為替ヘッジのあり、なしだけの違いで、パフォーマンスにどれほどの違いが出たのかという事例だ。債券ファンドのように、本来はマイナスのパフォーマンスになるはずだったところが、為替の変動の影響だけでプラスになるというような経験を、何の批判もなく受け入れてしまっていれば、相場感覚やリスク管理の感覚がおかしくなりはしないだろうか。投資するのであれば、「何でもいいので米国の資産を運用対象とすべきだ」という感覚が、現在の日本の投資家の間で「常識」になっているのではないだろうか? 「資産運用立国」などというスローガンが掲げられ、新NISAも導入され、本格的に貯蓄から投資への動きが始まっている日本にあって、「米国資産に投資していれば間違いない」というような「常識」が定着しているとすれば、非常に危ういことといえる。
 

 また、「S&P500」のインデックスファンドのように、年率20%を超えるパフォーマンスが常態化しているかのようなことも。投資に関する感覚を狂わせかねない。「S&P500」のインデックスファンドは、過去5年の年率トータルリターンも20%を超えている。5年前の2019年頃の為替は1ドル=110円台だった。そこから考えても40%程度の円安・ドル高だ。5年間にわたって年率20%以上の高いリターンが実現されてきたことを考えれば、運用プランを立てるにあたって、そのリターンの水準が基準として考えるようになりかねない。毎月1万円を積立投資したとしても、年率20%のリターンがあれば、30年間で1億5700万円の資産がつくれる計算だ。この計算結果は、にわかには信じられないと多くの人が感じるかもしれないが、過去5年間の現実の運用実績を反映したシミュレーションであることに間違いない。
 

 10年前の2014年当時も1ドル=102円台、15年ほど前の2011年に1ドル=75円台の円高のピークがある。それ以来、多少の上下動はあったというもの、円安・ドル高の流れがずっと続いてきた。ドル建ての資産さえ持っていれば、その資産自体が何の価値も生み出さなくても為替変動によって15年足らずで資産価値は2倍になった。
 

 もちろん、現在が34年ぶりの円安・ドル高水準であるということは、34年前の1990年には1ドル=160円台という円安があり、そこから20年近くにわたってドル安・円高が続いたという歴史がある。この間は、ドル建ての資産に投資していても、簡単に儲けることはできなかった。為替ヘッジがある投資の意味も良く理解されていただろう。
 

 今後の為替相場の行方を予想することは難しい。一段と円安が進むのか、あるいは、円高方向に方向転換するのか? はたまた、現在の水準で横ばいになるのか? それに対する正しい答えを持っている人はいないだろう。確かなことは、過去3年にわたって、一方的に大きく進んだ円安・ドル高が、米国資産に対する評価を実態以上に良いものに感じさせているということだ。今後の投資判断において、過去の運用成績を見る時に、そこには為替変動の要素が色濃く反映されていることを忘れてはならない。(グラフは、為替ヘッジの「あり」「なし」による「S&P500」ファンドのパフォーマンスの違い)
 

ウエルスアドバイザー

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最終更新:4/17(水) 15:18

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