米国の恐怖指数が上昇中、多くの投資家のコア資産である「S&P500」はどうなる?

4/16 18:00 配信

ウエルスアドバイザー

 米国の代表的な株価指数である「S&P500」を対象としたオプション取引のボラティリティ(変動率)を基に算出している「VIX(Volatility Index)」が4月15日に20の大台に近づいた。清算値19.23は、2023年10月末以来の水準になる。「VIX」は「恐怖指数」ともいわれる通り、数値が高くなると株価が下落してきた。株価が低迷していた2022年の「VIX」は30を超えるような場面もあったが、株価が安定的に上昇し始めた2023年11月以降は15以下の水準で推移してきた。それが、久しぶりに20超をうかがうような水準に上昇してきた。現在の株式投資の中心は米国株であり、中でも「S&P500」は「コア(核)」といえる存在だ。その行方について、注意を払っておきたい。
 

 4月15日に「VIX」が跳ね上がった理由と考えられているのは、当日発表された米3月の小売売上高が前月比プラス0.7%と予想のプラス0.3%を上回り、2月分も前月比プラス0.6%からプラス0.9%に上方修正されるなど、想定以上に強い消費を示す数値になったためだ。これによって、米国の利下げ期待が後退し、米国10年国債利回りは4.6%を超えた。この10年国債利回り4.6%超えの水準は、昨年11月以来のことで、当時は、インフレ率が高止まりし、FRBのパウエル議長は追加利上げの可能性をすら示唆し、米10年国債利回りは2007年以来の5%に接近するほどに上昇していた。現在のところ、米10年国債利回りは5%の水準には遠いものの、ジワジワと利回り水準が上がっていることは、「利下げ」をある程度織り込んでいた米国株式市場の先行きを不透明なものにしている。
 

 2024年の米国株式市場は、3月FOMCでの利下げを開始し、年間で1.5%の利下げが実施されるとの見通しでスタートした。ところが、その後の米国経済指標は、インフレの高止まりと堅調な景気を示すデータが続き、結果として、CMEの「FedWatch」による6月に0.25%の利下げが実施される見通しは23.1%の水準に低下してしまっている。76.9%が「現状維持」の見通しになっている。7月末でも「現状維持」が52.6%で、0.25%の利下げが39.6%であり、利下げ開始は9月以降にずれ込むのではないかという見方になっている。「FedWatch」の数値は、経済指標やFOMCメンバーの発言などを受けて敏感に動くものであるから、その現在の数値が米国の金利の行方を決定的に示しているというものではない。ただ、遅くとも6月には利下げに動くと想定されていた米FRBの政策変更については、変更時期が後ろ倒しになっている。また、年間の利下げ幅についても縮小する見方が強まっている。
 

 もっとも、米国の利下げが後ズレしていることは、米国株式市場にとって悪いことばかりではない。利下げが先送りされるほどに景気が強いのであるから、企業業績は好調を持続するということにつながる。実際に、2023年10-12月期のEPS成長率は横ばいからプラス8%程度に上方修正された。今後、2024年1-3月期の決算発表が本格化してくるが、これまでは2019年以降最低の3.9%程度の成長にとどまるという見方だったが、それが、上方修正されるという見方もある。3月末までは米国株価が史上最高値に上昇したのは、米企業業績の好調を手掛かりにしていた。
 

 今後の米国株式市場の行方を握っているのは、基本的には米国企業の業績の行方ということになる。米国の金利水準は政策金利が年5.25%~5.50%と、過去の平均と比べると、かなり高い水準にある。この水準は維持されるより、やはり低下する方向にあることは間違いないだろう。ただ、それによって米国株価が再び史上最高値を更新するような活況となり、それによって物価の水準も高止まりするようなことになれば、中央銀行としては政策金利の引き下げに動きづらい状態が続くことになる。金利が高止まりして、インフレ率も高い水準にあれば、いずれ米国景気も腰折れのリスクが高まり、米企業業績の見通しも悪化しよう。株価が4月以降に軟調な展開を続けているのは、米金利の高止まりが示唆する将来のマイナス成長に身構えているようにもみえる。
 

 結果的に、米国株式市場の今後の見通しは、これからの企業業績の発表内容や、その際の企業業績見通し、そして、注目される米国のインフレ指標や経済指標の内容がわからない限り、何ともいえないということになる。世界中の投資家も。その1つ1つの発表を待って、自身の投資戦略を調整している。予め決まっていることや、分かっていることなどないというのが現実だ。そのような不確実な市場と向き合っているからこそ、プロの投資家の間では、投資先を広く分散することが常識とされている。米「S&P500」に全額の投資をしていることは、米国経済や米国企業の業績発展に全ての財産を投資していることに等しい。日本やヨーロッパ、新興国等への地域分散を考えることも一つの方法であり、また、株式への投資だけではなく、債券やREIT(不動産投信)、あるいは、金(ゴールド)などの他の資産へも併せて投資することも検討したい。それが、結果的に投資を長期に継続することを可能にし、長期に投資を継続することによって、資産を運用で増やすことにつながるだろう。(グラフは、「S&P500」と「VIX」の推移)
 

ウエルスアドバイザー

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最終更新:4/16(火) 18:24

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