住信SBI銀の円山社長、「銀行を超えたテック企業」を目指す(2)

3/28 16:37 配信

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(1)からつづく

 住宅ローン以外で今後の成長の核として位置付けているのが、BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス、バース)事業とTHEMIX(テミクス)事業だ。

 BaaSは銀行の機能やサービスをAPI(異なるソフトウエア同士をつなぐ仕組み)を利用してクラウドで提供するものだが、住信SBI銀では単に機能を提供するだけではなく、「『企業の中に銀行を作る』ことをコンセプトとしており、フルバンクサービスを提供している」(円山社長)という。一般的なBaaSは預金機能や決済機能という特定のサービスを提供するものだが、住信SBI銀は預金から決済、ローンまで、すべてのサービスをAPIで提供している。

 銀行業は免許が必要で、黒字化や債務超過の解消などさまざまなハードルがあるが、BaaSによって複雑なライセンスを取ったり、コストをかけたりせず、自社内に銀行を立ち上げることができるようになる。「自社で独自の銀行を立ち上げたい企業は、必ずしも銀行業で利益を得たいというわけではなく、グループ内のシナジーであるとか、顧客満足度の向上、コスト削減など、本業を支えることが主な目的」(円山社長)という。

 同社はJAL <9201> を手始めに、ヤマダホールディングス <9831> 傘下のヤマダ電機、第一生命ホールディングス <8750> 傘下の第一生命など15社と提携。口座数は130万を超え、国内フルバンキング市場ではナンバーワンのシェアを獲得。口座数の伸びに合わせて預金座高も順調に増加しており、アカウント手数料やトランザクション手数料も伸びている。また、証券会社との提携では、預金口座と証券会社の口座をつなぐ「ハイブリッド預金」が24年1月の新NISA開始で利用が拡大傾向にある。

 一方、新たな事業として開始したTHEMIX事業は、テクノロジーと金融をかけ合わせることで、これまでとまったく異なる社会課題を解決するための事業となっている。ひとつがID広告プラットフォーム事業で、銀行として顧客から同意を得たデータを使ったターゲティング広告の展開だ。個人情報保護法の改正で顧客の同意なしでクッキーを利用したターゲティング広告が禁止となり、広告の精度が落ちているとの声もある。同社のサービスを使えば、顧客は見たくない広告を排除でき、企業側は無駄な広告を流さなくて済む。BaaS事業の提携先とも連携して様々なデータを利用することで、精度の高い広告を提供する仕組みを構築する。

 もうひとつは、カーボンクレジット事業だ。CO2(二酸化炭素)を吸収する仕組みを売買できるプラットフォームを提供する事業で、すでに日本国内では4つの自治体と提携、民間企業とも4社以上と提携している。加えて、「水面下では数十の自治体と話が進んでおり、最終的には日本の自治体の3分の1に相当する500以上の自治体と提携できる」(円山社長)とみている。金融関連とは違い、同事業はグローバルに展開していく方針。海外では、カンボジア、ベトナム、フィリピンといった東南アジアを有望な市場とみており、一定のシェアを獲得していくとしている。

 円山社長は最後に、「デジタルバンク、BaaSで新たな領域を開拓してきたが、THEMIX事業などのように金融を超えた新たな産業マーケットを作り上げ、進出していくことで、銀行を超えたテック企業として成長していきたい」と述べた。

提供:ウエルスアドバイザー社

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最終更新:3/28(木) 16:37

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