ブロックチェーン開発会社オフチェーン・ラボ(Offchain Labs)の戦略責任者によれば、フィンテック大手のロビンフッド(Robinhood)は、従来の金融システムをパーミッションレスのエコシステムへと移行させるインフラ整備を進めている。
同社のヨーロッパ向けトークン化株式サービスはすでに上場証券約800銘柄を扱い、非上場株の追加も予定されている。これはパーミッションレスな金融エコシステム構築に向けた3段階ロードマップの第一歩だと、オフチェーン・ラボのA・J・ワーナー(A.J. Warner)最高戦略責任者はブエノスアイレスで開催されたDevconnectの会場でCoinDeskの取材に対して述べた。
オフチェーン・ラボは、ロビンフッドがトークン化株式提供の基盤としたレイヤー2ネットワーク「アービトラム(Arbitrum)」の開発元だ。
ワーナー氏はさらに、ロビンフッドの計画の最終段階ではトークン化株式が完全なパーミッションレス・アセットとなり、ユーザーが外部ウォレットへ引き出して分散型金融(DeFi)アプリケーション間で利用可能になると説明した。
現在、第1段階では欧州連合(EU)域内でロビンフッドのアプリを通じてトークン化された株式を購入できるが、域外への移動は不可能だ。トークンはアプリ内に閉じ込められており、外部プラットフォームやプロトコルへのアクセス権限を持たない。
第2段階ではインフラ整備に注力するとワーナー氏は述べた。今年初めに2億ドル(約310億円、1ドル=155円換算)で買収したビットスタンプ(Bitstamp)を活用し、株式トークンの24時間365日取引を実現する。これは暗号資産(仮想通貨)市場の常時稼働性を模倣し、従来の市場時間枠からの脱却を意味する。
最も重要な変化は第3段階で訪れる。ワーナー氏によれば、トークンがパーミッションレス化され、ユーザーやDeFiプロトコルが自由に利用できるようになる。つまりユーザーはロビンフッドでトークン化されたアップル(Apple)の株式を購入し、引き出して、アーベ(Aave)のような分散型レンディングアプリに担保として差し入れることができるようになる。
これは個人投資家が株式と関わる方法に根本的な変化をもたらす。証券会社のプラットフォームに閉じ込められ、清算機関を経由するのではなく、株式はグローバルでオープンな金融システムにおけるプログラム可能な構成要素となるのだ。
ワーナー氏はこれを長期的な戦略と位置付けた。「フェーズ3では、資産がパーミッションレスになり、ユーザーがDeFiアプリケーションとやり取りできるようになると説明されている」と彼は語った。
これを実現する上での主要な技術的障壁は互換性である。ロビンフッドのマッチングエンジンや台帳システムなど、ほとんどの金融インフラはC++やRustで構築されている。これらの言語は、スマートコントラクトがSolidityで記述されるイーサリアム上ではネイティブに動作しない。これらのシステムを書き直すのは時間がかかり、リスクも大きい。
ワーナー氏はさらに、オフチェーン・ラボが開発した「アービトラム・スタイラス(Arbitrum Stylus)」について言及した。これは開発者がC++、Rust、Pythonといった従来のプログラミング言語でスマートコントラクトを記述しつつ、イーサリアム仮想マシン(EVM)との互換性を保つことを可能にするものだ。
|翻訳:CoinDesk JAPAN|編集:井上俊彦|画像:Shutterstock|原文:'Permissionless Assets’: Robinhood’s 3-Phase Tokenization Plan to Disrupt TradFi
CoinDesk Japan 編集部
最終更新:11/19(水) 19:55