年末が近づき、来年に向けて家計や年金のことを見直す方も増えてきました。「自分が将来どれくらい年金を受け取れるのか」と気になっている人は少なくないでしょう。特に「月20万円以上もらえる人はどのくらいいるの?」という疑問は、多くの世代で関心が高いテーマです。本記事では、最新の厚生労働省データから現在の受給実態を確認しつつ、制度改正の影響や将来への備えについてわかりやすく整理します。
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国民年金・厚生年金、「月額20万円(年間240万円)」もらう人は何パーセント?
今のシニア世代が実際にどの程度の年金を受け取っているのかを見ていきましょう。
厚生労働省が公表したデータによれば、厚生年金受給者(男性・女性の合計)の平均支給額は月14万6429円です。この金額には国民年金(老齢基礎年金)も含まれています。
受給額ごとの人数分布を見ると、以下の実態が明らかになります。
・月額15万円以上の受給者数:502万6090人(全体の約47.6%)
・月額20万円以上の受給者数:261万7157人(全体の約16.3%)
・月額25万円以上の受給者数: 27万6814人(全体の約1.72%)
この数字から、月15万円を超える人は半数以下であり、20万円以上になると全体の2割未満に絞られることがわかります。平均額が14万円台であることを踏まえると、年金だけで生活費のすべてをまかなうには難しいケースも多いと考えられます。
そのため、年金の仕組みを理解しつつ、iDeCoや働き方の工夫といった「自助の取り組み」も計画的に進めることが求められています。
国民年金の第3号被保険者「主婦は約673万人、主夫はどのくらいいる?」
国民年金にはいくつかの加入区分があります。その一つである「第3号被保険者」は、厚生年金や共済年金に加入している第2号被保険者の配偶者で、一定の収入条件(年収130万円未満)を満たす人が対象です。令和5年度末時点では 約686万人 が該当しています。
第3号被保険者の総数:約686万人
・男性:約13万人
・女性:約673万人
大きな特徴は、本人が保険料を負担しなくても国民年金に加入扱いとなる点です。これは、配偶者が加入する制度側で保険料を負担するしくみになっているためです。加入手続きは本人ではなく、配偶者の勤務先を通じて行われます。
また、第3号被保険者の多くが女性である背景には、日本の就業構造が影響しています。
●第1子出産をめぐる女性の就業変化
厚生労働省が公表する「令和7年版厚生労働白書」をみると、第1子出産をめぐる女性の就業変化が見えてきます。
第3号被保険者の多くが女性である背景には、日本の就業構造が影響しています。厚生労働白書によると、第1子出産を機に仕事を離れたり、非正規雇用へ移行したりする女性が多い傾向にあります。
1985~89年生まれの層では、出産前に働いていた女性の約37.4%が「出産退職」 を選択していました。2000年代初頭までは、出産後も継続して働く人の割合は過半数に届いていませんでした。
近年は継続就業率が上昇し、2015~19年では53.8% にまで増加しています。しかし、正規雇用ではなく「パート・派遣」での継続が増えており、収入が抑えられやすい働き方へと移行するケースが多数見られます。これが、年収130万円未満となり第3号被保険者に該当しやすくなる要因のひとつと考えられます。
国民年金・厚生年金、制度の見直し「これから誰にどんな影響が?」
2024年6月13日、働き方や性別に左右されず、さまざまなライフスタイルに対応できる制度を目指した 「年金制度改正法」 が成立しました。
この改正により、働く時間や収入によっては第3号被保険者から第2号被保険者へ移る人が増えると見込まれています。
また、社会保険に加入することで得られるメリットには次のようなものがあります。
●将来受け取れる年金額が増える
たとえば、国民年金のみ40年加入した場合の老齢基礎年金は年間約80万円ですが、厚生年金に20年加入すると年間約92万円(基礎年金+厚生年金)に増えます。
●「障害年金や遺族年金」万が一の保障も手厚くなる
障害年金や遺族年金などの保障が充実し、加入期間が長いほど受け取れる年金額が増える傾向があります。
●休業時の支えとなる「傷病手当金」
社会保険加入者は、病気やケガで4日以上休んだ場合に所得の一部を補う傷病手当金を受け取れます。国民健康保険のみの場合はこの制度がないため、働く人にとって大きな安心材料となります。
また、「年収106万円の壁」の一部である賃金要件(8.8万円以上)は、今後の見直しが検討されています。より柔軟な働き方を選びやすくなることが期待されています。
まとめにかえて
厚生年金の平均受給額は14万円台で、月20万円以上の受給者は全体の一部に限られます。そうした現状を踏まえると、公的年金だけに頼らず、制度の理解と働き方の工夫がますます重要になります。
第3号被保険者制度の背景には、出産と働き方の変化という社会構造が影響しています。今後は制度改正により社会保険の加入が広がり、保障や将来の年金額が変わる可能性があります。自分に合った働き方や資産形成を考えながら、安心につながる準備を進めていくことが大切です。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
・厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
・政府広報オンライン「年金の手続。国民年金の第3号被保険者のかたへ。」
村岸 理美
最終更新:12/10(水) 18:05