暗号資産の価格はなぜ動く? 需要と供給の基本
暗号資産の価格は、基本的に「買いたい人」と「売りたい人」の需給(需要と供給)によって決まります。
「この価格なら買いたい」という注文が増え、買い注文の勢いが強くなると、板に並んだ売り注文を上の価格帯まで消化することがあります。すると、より高い価格で売りたい人の注文が約定し、価格は上昇していきます。
逆に、「今のうちに売りたい」という注文が増え、売り注文の勢いが強くなると、買い注文を下の価格帯まで消化することがあります。その結果、より安い価格での約定が成立し、価格は下落していきます。
この仕組みは株式と同じです。株式も、証券取引所に集まった買い注文と売り注文が、取引所のルールに基づいて合致した価格で取引が成立します。
暗号資産も同様に、暗号資産取引所の板に買い注文と売り注文が並び、需給のバランスによって価格が形成されます。板取引の経験があれば、値動きの基本的なイメージはそのまま通じます。
株式投資で培った需給分析や、金利・為替などの金融環境を分析する視点は、暗号資産投資にも活かせます。ただし、暗号資産と株式では、発行の仕組みや取引環境、価格を評価する際の考え方などに違いがあります。次に、こうした構造的な違いを見ていきましょう。
暗号資産と株式の4つの構造的な違い
暗号資産と株式は、どちらも市場で売買され、需要と供給によって価格が変動する点では共通しています。一方で、発行の仕組みや取引される市場、取引時間、価値を評価する材料などには違いがあります。
以下では、暗号資産の代表的な銘柄であるビットコインを中心に、株式との4つの違いを整理します。
| 項目 | 株式 | 暗号資産(ビットコイン) |
|---|---|---|
| 新規発行のルール | 増資や株式の消却などにより変動する | 発行上限・発行ペースがあらかじめ定められている |
| 価格が形成される市場 | 証券取引所などの市場を中心に形成 | 世界中の暗号資産取引所で売買され、単一の市場に集約されていない |
| 取引時間・値幅制限 | 取引時間や値幅制限がある | 原則24時間365日取引され、株式のような値幅制限がない |
| 価値を評価する材料 | 企業の業績・利益・配当など | 希少性、ネットワークの利用価値、将来への期待など |
違い①:ビットコインでは新規発行のルールがあらかじめ定められている
株式の場合、企業は事業資金を調達するために新たな株式を発行したり、反対に株式を消却したりすることができます。発行済み株式数は、企業の判断や資本政策によって変動します。
一方、ビットコインでは、取引データをまとめた「ブロック」がマイナー(マイニングを行う人や組織)によって生成され、新たに発行されるBTCの量が1ブロックあたりのルールとして定められています。発行上限は2,100万BTCで、新規発行されたBTCはブロック報酬としてマイナーに付与されます。
新規発行量は約4年に一度の「半減期」で減少します。2024年4月の半減期では、1ブロックあたりの新規発行量が6.25BTCから3.125BTCに半減しました。そのため、2026年10月時点では、1日に新たに発行されるBTCは平均約450BTCとなっています。
このように、企業の判断によって発行済み株式数が変わり得る株式に対し、ビットコインでは新規発行のルールがあらかじめ定められている点が大きな違いです。この発行ルールによって、企業の判断による予期せぬ増資とは異なり、想定外の新規発行による保有資産の価値希薄化リスクが抑えられている点も、特徴の一つとされています。
ただし、暗号資産の発行・供給ルールは銘柄によって異なります。ビットコインのように発行上限や新規発行のペースがあらかじめ定められている銘柄がある一方、イーサリアム(ETH)のように発行上限を設けず、ETHの新規発行とバーン(焼却)のバランスによって供給量が変化する銘柄もあります。こうした発行・供給のルールは、銘柄によって変更の仕組みや条件も異なります。
違い②:世界中の暗号資産取引所で売買され、単一の市場に集約されていない
株式は、東京証券取引所などの証券取引所を中心とした市場で売買されます。一方、ビットコインには株式のような単一の取引市場がなく、国内外のさまざまな暗号資産取引所で売買されています。
そのため、暗号資産取引所によって取引される価格がわずかに異なることがあります。ただし、取引所間で価格差が生じると、その差を利用して売買する動きが生じるため、通常は大きな価格差が長時間続くわけではありません。
また、ビットコインは世界中の市場で取引されているため、国際的にはドル建て価格を基準として見ることが多く、日本円で表示される価格にはドル円の為替相場も影響します。そのため、ドル建てのビットコイン価格が変わらなくても、円安になれば円建て価格は上昇し、円高になれば下落することがあります。
違い③:値動きの区切りがなく、大きな値動きにつながることがある
株式市場では取引時間が決められており、日本株の場合、東京証券取引所の現物株式は9:00〜11:30、12:30〜15:30が通常の取引時間です。市場が閉まっている時間帯は、その市場では株式を売買できません。
一方、ビットコインなどの暗号資産は原則として24時間365日取引されています。そのため、夜間や週末に大きなニュースがあった場合でも、市場が閉まることなく、その情報を受けて価格がリアルタイムで変動します。
例えば、株式では取引終了後に重要なニュースが発表された場合、翌日の取引開始時に前日の終値から大きく離れた価格で取引が始まることがあります。一方、暗号資産では市場が常に開いているため、ニュースが発表された時点から売買が行われ、価格に反映されます。
株式市場では、急激な値動きを抑えるための値幅制限やサーキットブレーカーなどの仕組みが設けられています。一方、暗号資産には市場全体で統一された値幅制限がないため、売買が集中した場合には、短時間で大きな価格変動が起こることもあります。
暗号資産では現物取引だけでなく、レバレッジを利用した先物取引なども行われています。レバレッジ取引では、実際に保有している資金より大きな金額を取引できる一方、価格が予想と反対方向に動くと損失が膨らみ、強制的に決済されることがあります。こうした決済による売買が連鎖すると、価格変動がさらに大きくなり、短時間で急落・急騰につながる場合があります。
違い④:利益や配当といったキャッシュフローに基づく評価材料がない
株式の場合、企業の利益や配当などをもとに、その株式の価値を考えることができます。PER(株価収益率)や配当利回りなど、企業の業績や利益、配当をもとに株価を評価する指標もあります。
一方、ビットコインには企業のように利益を生み出し、その利益を保有者に配当する主体がありません。そのため、株式と同じ指標を使ってビットコインの「適正価格」を算出することは難しくなっています。
ビットコインでは、発行上限による希少性、ネットワークへの参加者や利用の拡大、価値保存手段としての普及・採用への期待など、株式とは異なる要素が価値を考える材料になります。
例えば、発行上限が定められ、半減期によって新規供給ペースが低下するビットコインの希少性は、需要が維持・拡大されれば価格への上昇圧力として働く要因とされています。また、中央管理者が任意に発行量を増やせない仕組みは、法定通貨のインフレに対するヘッジ手段として機能し得るとして、価値保存の観点から需要を支える材料の一つとして注目されています。
需要と供給を動かす主な要因
暗号資産の需要と供給は、さまざまな要因によって変化します。ここでは、ビットコインを例に、需要と供給を動かす主な要因を見ていきます。
| 項目 | 主な要因 |
|---|---|
| 需要側 | 金利・ドル相場などの金融環境、機関投資家・ETFによる資金流入、暗号資産の規制・制度に関する動向、企業・金融機関による保有・採用 |
| 供給側 | マイニングによる新規発行、マイナーによる売却、既存保有者による売却 |
需要を動かす主な要因
暗号資産の需要は、暗号資産市場の動きだけで決まるわけではありません。株式などと同様に、金利やドル相場といった金融環境の影響を受けます。一方で、暗号資産市場では、現物ETFへの資金流入や規制・制度の動向、企業・金融機関による保有・採用なども、需要を左右する材料として注目されています。
金利・ドル相場などの金融環境
米国の金融政策や金利の動向は、投資家がどの資産に資金を振り向けるかに影響します。例えば、金利が低下すると、預金や債券などの相対的な魅力が低下し、株式や暗号資産などのリスク資産に資金が向かいやすくなる場合があります。一方、金利が上昇すると、安全性や利回りを重視した資産に資金が移り、暗号資産への需要が弱まる可能性があります。
また、ドル相場の変動も暗号資産市場に影響を与える要因の一つです。ドルの動きは世界の金融市場における資金の流れや投資家のリスク選好に影響するため、暗号資産への投資需要にも波及することがあります。
このように、暗号資産は株式などと同じく、金融市場全体の環境変化によって需要が変化することがあります。
機関投資家・ETFによる資金流入
機関投資家や大口投資家など、大規模な資金を運用する投資家による暗号資産への資金流入も、買い需要を支える要因の一つです。運用する資金規模が大きいため、まとまった資金が市場に流入すると、需給に影響を与える可能性があります。
特に注目されているのが、米国の現物ビットコインETF(上場投資信託)です。2024年1月の取引開始以降、2026年10月7日時点でビットコインETFを通じた累計純流入は約580億ドルに達しています(出典:CoinGlass(外部サイト))。
ETFへの資金流入は、ETF口数の新規発行を通じて現物ビットコインの需給に影響する可能性があります。特に現金による新規発行が行われる場合、運用会社側が現金をもとにビットコインを購入するため、現物市場の買い需要につながり得ます。そのため、大規模かつ継続的な資金流入は、ビットコイン価格を押し上げる要因になり得ます。
暗号資産の規制・制度に関する動向
暗号資産に関する規制や制度の動向も、需要を左右する要因の一つです。規制や制度が整備され、暗号資産を取り巻くルールが明確になることで、市場参加に伴う不確実性が低下し、投資家や企業が暗号資産を取り扱いやすくなる場合があります。
特に米国の法規制は、暗号資産市場から大きな注目を集めています。2025年には決済用ステーブルコインに関する連邦法「ジーニアス法(GENIUS Act)」が成立しました。一方、暗号資産の市場構造を定める「クラリティ法案(CLARITY Act)」は、2026年10月7日時点でも成立には至っておらず、今後の議会審議の行方が注目されています。
企業・金融機関による保有・採用
企業や金融機関による暗号資産の保有・採用も、需要を左右する要因の一つです。企業が資産運用の一環としてビットコインなどの暗号資産を保有したり、金融機関が暗号資産の取引・運用サービスを提供したりすることで、暗号資産市場への参加機会が広がり、需要に影響する場合があります。
2026年現在では、企業が株式や債券の発行などで資金を調達し、ビットコインなどの暗号資産を保有・拡大する「デジタル・アセット・トレジャリー(DAT)企業」の動きが注目されています。こうした企業による暗号資産の保有拡大は、現物の買い需要や市場全体の注目を高める要因になり得る一方、市況悪化時には保有資産の売却や資金調達の難航といったリスクにもつながります。
供給を動かす主な要因
ビットコインの供給を考える際には、新たに発行されるビットコインだけでなく、すでに保有されているビットコインが市場で売却されることによる売り圧力も重要です。
マイナーによる売却
ビットコインの取引を承認し、ブロックを生成する作業は「マイニング」と呼ばれます。マイナーは専用のコンピューターを使って計算処理を行い、取引の承認やネットワークの維持に貢献しています。その報酬として、新たに発行されたビットコインや取引手数料を受け取ります。
マイニングを事業として行う企業は、こうして得たビットコインを電気代や設備費などの運営コストに充てるため、市場で売却することがあります。特に、ビットコイン価格の下落や電気代などのコスト上昇によってマイニングの採算が悪化すると、運営資金を確保するために保有するビットコインを売却する動きが強まる場合があります。
こうしたマイナーによる売却が増えると、市場に出回るビットコインが増え、売り圧力につながる可能性があります。
既存保有者による売却
暗号資産をすでに保有している投資家や企業などによる売却も、価格に影響する要因の一つです。保有者が利益確定や資金需要などを理由に暗号資産を売却すると、市場で売りに出される暗号資産が増え、売り圧力につながる可能性があります。
また、金利上昇などによってリスク資産への投資意欲が低下したり、暗号資産ETFからの資金流出が続いたり、規制・制度をめぐる不透明感が高まったりすることで、暗号資産への需要が弱まる場合があります。企業や金融機関による暗号資産の保有・採用が縮小することも、需要を弱める要因となります。こうした動きが既存保有者による暗号資産の売却につながることで、市場で売りに出される暗号資産が増え、売り圧力を強める要因となる場合があります。
なお、暗号資産によって供給の仕組みは異なります。ビットコインのようにマイニングによって新たに発行されるものだけでなく、ステーキング報酬として新たに発行されるものや、あらかじめ発行上限や発行スケジュールが定められているものなどもあります。そのため、暗号資産の価格を考える際には、それぞれの銘柄がどのような仕組みで供給されるのかを確認することも重要です。
初心者向け暗号資産取引所の選び方
暗号資産の取引を始めるには、まず国内の暗号資産取引所の口座を開設する必要があります。暗号資産取引所によって、取り扱っている銘柄や手数料、取引方法、アプリの使いやすさなどが異なるため、自分の投資スタイルに合ったサービスを選ぶことが大切です。
コインチェック(Coincheck)
国内暗号資産取引所アプリのダウンロード数7年連続No.1の実績を持ち※1、アプリは累計840万ダウンロードを突破しています※2。シンプルで見やすいアプリを提供しており、暗号資産を初めて購入する人でも操作しやすいのが特徴です。500円相当額以上から購入できるため、まずは少額から暗号資産を始めたい人にも向いています。
※1 対象:国内の暗号資産取引アプリ、データ協力:AppTweak
※2 2026年6月末時点
- 取り扱い銘柄
- 36種類
- 取引手数料 ※
- 無料
- ※BTC/JPYの現物取引で10万円分の指値注文が、注文板に並んで約定した場合(メイカー)の例です。注文時点で即座に約定した場合は、手数料が異なることがあります。キャッシュバックなどの関係で、実質の手数料がマイナスとなる場合、手数料の欄をマイナス表記しています。
SBI VCトレード
SBIホールディングス傘下の暗号資産取引所で、SBIグループの信頼性を強みとしています。ビットコインは販売所・板取引ともに1円から購入でき、少額から取引を始められます。
また、JPYSCやUSDCなどのステーブルコインを取り扱っているほか、ステーキングやレンディングなど、購入後の運用手段が豊富なのが特徴です。
- 取り扱い銘柄
- 35種類
- 取引手数料 ※
- -0.01%
- ※BTC/JPYの現物取引で10万円分の指値注文が、注文板に並んで約定した場合(メイカー)の例です。注文時点で即座に約定した場合は、手数料が異なることがあります。キャッシュバックなどの関係で、実質の手数料がマイナスとなる場合、手数料の欄をマイナス表記しています。
よくある質問
Q. ビットコインなどの暗号資産の価格は誰が決めているのですか?
特定の誰かが価格を決めているわけではなく、市場における暗号資産の需要と供給のバランスによって価格が決まります。
Q. 暗号資産取引所によって価格が違うのはなぜですか?
暗号資産取引所ごとに利用者や取引量、買い注文・売り注文の状況などが異なるため、同じ暗号資産でも価格に差が生じることがあります。価格差は通常わずかですが、相場が大きく動く局面では広がることがあります。
Q. 半減期のあとは必ず価格が上がりますか?
いいえ、半減期があったからといって、必ず価格が上昇するわけではありません。市場の需要や金融環境など、さまざまな要因によって価格は変動します。
Q. 暗号資産の価格は株価と連動しますか?
常に連動するわけではありませんが、金利や景気などの金融環境が共通して影響するため、株価と同じ方向に動くこともあります。
まとめ
- 暗号資産の価格は、株式と同じく市場における需要と供給のバランスによって決まる。金利や為替、ETFへの資金流入、規制・制度、企業による保有など、さまざまな要因が需要と供給を動かす。
- 暗号資産は銘柄によって供給の仕組みが異なり、24時間365日取引できるほか、日本円で取引する場合は為替変動の影響を受けるなどの特徴がある。
- 株式投資で培った需給分析や金融環境の見方、分散・資金管理などの知識は暗号資産投資にも活かせる一方、株式特有の指標など、そのまま当てはめられない考え方もある。
CoinPost編集部コメント
暗号資産の価格に影響する材料は、金利やドル相場など株式投資家に馴染みのある指標と重なる部分が少なくありません。一方で、ETFへの資金流入や半減期、規制の動向など、暗号資産特有の材料も価格を動かす要因になります。
株式投資で培った情報の読み方を活かしながら、暗号資産ならではの材料にも少しずつ触れていくことで、価格の動きへの理解も深まっていきます。


