株 vs 暗号資産 税制早見表
税金のルールは、株式投資や投資信託の経験がある方にとって、あまり意識されないものだと思います。利益に対して一律およそ20%が課され、損失は3年間繰り越せる、そして特定口座を使えば証券会社が計算まで済ませてくれる、という枠組みです。
一方で暗号資産(仮想通貨)は、この枠組みの外にあります。利益は原則として総合課税の雑所得となり、給与などと合算され、所得が多い人ほど税率が上がります。
まずは全体像を把握するために、株式・暗号資産(現行)の2列で並べてみます。
| 項目 | 上場株式等 | 暗号資産(現行) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 申告分離課税 | 総合課税(雑所得) |
| 税率(所得税および住民税) | 一律約20% | 約15〜55% |
| 損失繰越 | 3年 | 不可 |
| 損益通算 | 株・投信間で可 | 同一年内に発生した雑所得間のみ |
| 非課税枠 | NISAあり | なし |
| 所得税の申告・納税方法 | 主に特定口座による源泉徴収 | 確定申告が必要: 給与所得者の場合は、給与所得・退職所得以外の所得金額(雑所得等)の合計額が20万円を超える場合 確定申告が不要: 給与所得者で、給与所得・退職所得以外の所得金額(雑所得等)の合計額が20万円以下であり、かつ確定申告義務がない場合 ※これらの要否を判定するためにも、自分で損益を計算する必要がある |
※ 別途、住民税の申告はご確認ください
現行制度で暗号資産を持つと税金の負担はどれくらい?
税率が「最大55%」という数字だけを見ると身構えてしまいますが、実際の税負担は所得の水準によって変わります。たとえば給与収入500万円の方が、暗号資産で利益を得た場合の試算を見てみましょう。
| 暗号資産の利益 | 暗号資産の利益に伴い増える税額 | 実質的な税率(所得税+住民税) | 参考:分離課税(約20%)なら |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 約20万円 | 約20% | 約20万円 |
| 300万円 | 約82万円 | 約27% | 約61万円 |
| 1,000万円 | 約344万円 | 約34% | 約203万円 |
※ 単身の給与所得者と仮定
利益100万円であれば、実質的な税率は約20%です。利益が増えるにつれて差は開いていきますが、それでも利益1,000万円で約34%です。「最大55%」という数字が当てはまるのは課税所得4,000万円超の部分です。暗号資産を含む雑所得は、総合課税であるため、給与などと合算され、合計した課税所得に応じて段階的に税率が上がる仕組みだからです。
所得税の税率表
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
つまり利益が数百万円規模までであれば、現行制度でも「55%」のイメージとは大きくかけ離れた水準で投資できるということです。「税金が高いから」と敬遠していた方にとっては、見直すきっかけになるかもしれません。
2028年の申告分離課税化で何が変わるか
これまで、現状の暗号資産取引に関する税制をご紹介いたしました。
しかし現在、暗号資産の税制改正による申告分離課税への移行が決まりました。本項では、税制改正により何が変わり、何が変わらないかを説明します。
一律約20%と、3年間の繰越控除
今回の税制改正では「特定暗号資産」を新たに定義して、暗号資産の中で、線引き(選別)をしました。今後、分離課税や損失繰越など、金融所得的な取扱いは、原則としてこの「特定暗号資産」に選ばれた暗号資産の中で行われます。
特定暗号資産の税率は、所得の多寡にかかわらず一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税など0.315%、住民税5%)になります。株式で慣れている「利益の約2割が税金」という感覚が、そのまま暗号資産にも当てはまるようになります。
あわせて、特定暗号資産内での損失が出た場合に翌年以降3年間、対象取引の譲渡益から差し引ける繰越控除が創設されます。株式と同じく「負けた年の損を翌年に持ち越せる」仕組みが使えるようになるということです。
ただし1点注意があります。株式の利益と暗号資産の損失を通算することはできません。税率は揃いますが、損益を相殺できるグループは別です。「同じ20%なのに通算できない」という点は、改正内容で誤解されやすい部分です。
分離課税の対象は「国内取引所での譲渡」に限定
分離課税が適用されるのは、特定暗号資産のうち、国内の暗号資産取引業者を通じて売買をした取引に限られます。
| 分離課税の対象 | 対象外(総合課税のまま) |
|---|---|
| ・国内取引業者を通じた対象銘柄の譲渡(=売却) ・対象銘柄のデリバティブ取引 |
・海外取引所での譲渡(=売却) ・DEXやウォレットでの取引 ・ステーキング・レンディング報酬 |
なお、一定の暗号資産ETFについては、その受益権を株式等として扱う税制措置が予定されています。
どの暗号資産が、特定暗号資産に選定されるかは、今後、決定します。
適用開始のタイムライン
税制改正を定めた「所得税法等の一部を改正する法律」は2026年3月31日に成立・公布済みです。適用開始は「金融商品取引法等改正法の施行日の属する年の翌年1月1日」と定められており、同法は2026年7月15日に成立、2027年中の施行が見込まれるため、2028年1月1日以降の取引から適用され、2029年からの確定申告期間で計算するのが有力な見通しです。ただし施行日がずれれば適用開始も動きます。
「暗号資産投資を今から始めても損ではない」理由
ここは株の経験者にとって重要なポイントです。分離課税が適用されるのは「適用開始後の譲渡」であり、「譲渡の時期」で判断されます。つまり2026年や2027年に買った暗号資産でも、2028年以降に国内取引所で売却すれば分離課税の対象になると解されています。
「分離課税が始まるまで待とう」と考える方もいるかもしれませんが、制度上、待つ必要はありません。暗号資産の価格は税制とは別に動くものですし、購入のタイミングを逃すリスクもあります。税率だけでなく市況も含めた総合判断になりますが、「今買うと税制面で損をする」という構造にはなっていない、という点は押さえておきたいところです。
米国ではモルガン・スタンレーをはじめ、大手金融機関などがビットコインETFへの参入を進めています。かつて「投機的」とされた暗号資産に、伝統的な金融のプレイヤーが本格的に資金を投じ始めたことは、資産クラスとしての信頼性が一段上がったことを意味します。
日本でも、金融商品取引法への移管を契機に暗号資産現物ETFの解禁に道が開かれたとされています。
前述のとおり暗号資産の売買について、所得の金額によってはイメージほどの税金はかからないこともわかりました。そのため、税制改正を待たずに市況・トレンドを見極めながら適切に取引を行っていくことも選択肢に入ります。
税制改正による税率の引き下げ、金融商品取引法等改正法による制度基盤の整備、そして機関投資家の本格参入──この3つが同時に進んでいる今は、株式の経験者が暗号資産を「もう一つの資産クラス」として検討し始めるにはちょうどよいタイミングかもしれません。
確定申告は自分で行う
株式の特定口座に相当する仕組みがないため、改正後も確定申告は必要です。具体的には次のような作業が発生します。
- すべての取引所・ウォレットから取引履歴を漏れなく取得する(過去に取引をしていた場合はそれもすべて反映する)
- 1件ごとに取引時点の時価で日本円に換算する
- 原則は総平均法(届出をすれば移動平均法の利用も可能)で銘柄ごとに平均取得単価を計算する
- 暗号資産同士の交換や決済も損益として計算する
- 改正後は分離課税の対象取引と対象外を分けて集計する
株式の年間取引報告書1枚に相当する作業ですが、取引が数十件を超えると手作業では厳しくなります。その場合は、暗号資産の損益計算に対応した専用ツールを使えば、取引履歴の取り込みから時価換算・集計までを一括処理できます。
よくある質問
Q1. 少額の利益でも確定申告は必要ですか。
給与所得者で、給与所得・退職所得以外の所得金額(雑所得等)の合計額が20万円以下であり、かつ確定申告義務がない場合は、所得税の確定申告は不要です(住民税の申告は別途必要)。ただしすでに確定申告を行っている人は、金額にかかわらず暗号資産の利益も申告する必要があります。
Q2. ステーキングやレンディングの報酬も課税されますか。
はい、受取時点の価格×枚数が利益として課税されます。改正後も分離課税の対象には含まれず、総合課税(雑所得)として計算します。
Q3. 株の損失と暗号資産の利益は通算できますか。
できません。税制改正後も株式と暗号資産は異なる課税グループに属するため、損益の通算はできません。
Q4. 損益計算が面倒そうですが、どうすればいいですか。
取引件数が少なければ表計算ソフトでも対応できますが、複数の取引所を使ったり暗号資産同士の交換がある場合は、損益計算に対応した専用ツールの利用が効率的です。たとえば損益計算ツール「クリプタクト」では、国内外の取引所・サービスからの取引履歴の取り込みに対応しており、時価の取得から損益計算までを自動で処理できます。株式の年間取引報告書に相当するものを、自分の手で作らずに用意できるということです。基本機能を試せる無料プランも用意されています。
まとめ
特定暗号資産に限って申告分離課税が導入されることは、暗号資産を株式と同様の「金融所得」として位置付ける制度的な基盤を整えるものといえます。これにより、投資判断において税務上の取扱いが過度に影響する状況が緩和され、価格変動リスクと税負担とのバランスも、より合理的なものになることが期待されます。
今後、証券会社や金融機関が顧客に対して暗号資産を説明・提案しやすい環境が整うことが予想されます。申告分離課税の導入により、暗号資産を金融商品として説明しやすくなることから、「ビットコインを対象とする上場投資信託(Exchange Traded Fund。以下「ETF」といいます。)」をはじめ、これまでにはなかった新たな金融サービスの提供も期待されます。
具体的には、ビットコインETFは、株式等と同じ「譲渡所得の申告分離課税」の対象となる可能性が高く、株式等の譲渡所得との損益通算が認められるだけでなく、損失の繰越控除も利用できる制度となることが期待されます。
それは、暗号資産が「投機」から「資産クラスの一つ」へと位置づけが変わることを意味します。
違いが残るのは、対象範囲と申告の手間です。国内の対象事業者を通じ、税制上の『特定暗号資産』に該当する銘柄を取引する場合には、分離課税の対象となりますが、現状のルールでは自分で確定申告する必要があります。「すべての取引所から履歴を漏れなく集め、1件ごとに取引時点の時価で日本円に換算し、銘柄ごとに平均取得単価を計算する」という作業を自身で行うのは、取引が増えるほど時間と手間が取られるため、これまで暗号資産取引に取り組んできた方々の多くは損益計算ツールを活用しています。
「クリプタクト(外部サイト)」は、国内外の取引所・サービスからの取引履歴の取り込みに対応し、時価の取得から損益計算までを自動で処理できます。基本的な機能を無期限で試せる無料プランも用意されているため、暗号資産に触れ始める段階から準備しておくことができます。税率の面でも、制度の基盤という面でも、今は以前に比べて暗号資産への投資を検討しやすい環境には近づいていると考えられるでしょう。
コインポスト編集部コメント
株式投資の経験がある方にとって、暗号資産の税制は最も分かりにくい部分だったと思います。2028年の税制改正後に税率が一律約20%に揃うことで、これまで培ってきた投資判断の枠組みをそのまま持ち込みやすくなります。ただし、損益を通算できるグループは株式と暗号資産で分かれており、確定申告も引き続き自分で行う必要があります。税率が近づくことと、手続きが同じになることは別の話ですので、その点は区別して捉えておくとよいでしょう。

