取引所と販売所の違い
板取引(取引所)と販売所の違いは、「誰と取引するか」と「コストがどこで発生するか」の2点です。
暗号資産を売買する際、多くの方が暗号資産取引所(暗号資産交換業者)の取引口座を開設します。その中には「販売所」と「板取引(取引所)」の2種類の売買形式が用意されており、同じ口座の中でも使い分けられます。
同じ暗号資産取引所のサービスを使っていても、どちらの形式で売買するかによってコストや操作感が変わります。
※「取引所」という言葉は、暗号資産交換業者そのものを指す場合と、板取引の売買形式を指す場合の2通りで使われます。本記事では前者を「暗号資産取引所」、後者を「板取引」と表記して区別します。
販売所と板取引の違いを比較
| 項目 | 販売所 | 板取引 |
|---|---|---|
| 取引の相手 | 暗号資産取引所 | 原則として利用者同士 |
| 価格の決まり方 | 暗号資産取引所があらかじめ提示した価格で売買する | 利用者同士の希望価格(売値・買値)がマッチすることで決まる |
| 実質的なコスト(※1) | スプレッド:一般的に4〜6%程度が目安 | 取引手数料:0〜0.15%程度が目安 スプレッド:0.005〜0.1%程度が目安 |
| 主な注文方法 | 数量を指定して即時に売買 | 成行・指値など(暗号資産取引所による) |
| 取扱銘柄 | 幅広い銘柄に対応(一部除く) | 主要銘柄のみなど、暗号資産取引所によっては限定的 |
| 向いている場面 | 少額での購入・積立・手軽さ重視 | 売買回数が多い・コスト重視 |
※1 スプレッドは暗号資産取引所および市場の状況によって変動します。
以下では、それぞれの方式の特徴とコストの発生のしかたを詳しく解説します。
販売所は、暗号資産取引所を相手に売買する方式です。買値と売値があらかじめ提示されており、その価格で即座に売買が成立します。たとえば空港の外貨両替所で提示されたレートでそのまま両替するイメージに近い形です。多くの暗号資産取引所では取引手数料を無料としていますが、売値と買値の差である「スプレッド」が実質的なコストとして発生します。
板取引は、利用者同士が価格を提示し合い、条件が合致したところで取引が成立する方式です。注文が価格ごとに並んだ「板(オーダーブック)」を見ながら売買します。板取引では、取引所や注文方法に応じて取引手数料が発生します。スプレッドも存在しますが、販売所と比べて非常に小さく、合計コストは販売所より大幅に低くなるのが一般的です。
国内の主要な暗号資産取引所では、販売所と板取引の両方を提供しているケースが多く、同じ口座の中で使い分けられます。
株の板取引との共通点と相違点
板取引の仕組みは、株式投資の経験がある方にはなじみ深いものですが、暗号資産ならではの違いもいくつかあるため、株式との共通点と相違点を整理しておきます。
共通点:板の考え方は株式と同じ
板取引の板は、株式の板とほぼ同じ構造です。買い注文と売り注文が価格ごとに並び、条件が合致したところで約定します。
注文方法の考え方も株式と同じです。価格を指定せず即座に約定させる「成行注文」、価格を指定して板に並べる「指値注文」という区別は株式と変わりません。板の厚み、つまり各価格帯に並んでいる注文量が多いほど希望する価格で約定しやすい、という関係も同じです。
相違点1:24時間365日動き、値幅制限がない
株式は取引所の立会時間が決まっています(例:東証は平日9:00〜11:30、12:30〜15:30)が、暗号資産は世界中で原則24時間365日取引されています。日本の夜間や休日・祝日にも価格は動き続けます。
また、株式にあるストップ高・ストップ安のような「1日の値幅制限」は一般的にありません。(※1)
相場が急変した場合、1日のうちに10%以上の値動きが起こることもあり、アルトコインでは30〜50%以上の大幅な値動きが生じることもあります。2026年8月には国内上場銘柄でも1日で50%以上、上昇する例がありました。
指値注文を出したまま長時間放置していると、想定していなかった価格帯で約定する可能性もあるため、注文の管理(キャンセル・修正・有効期限の設定など)は株式より意識的に行う必要があります。
※1 ただし、IEO(取引所を通じて企業がトークンを販売し資金調達を行う方法)など、売買が集中して価格が急変しやすい際に、取引を一時停止するサーキットブレーカー制度を導入している場合があります(株式のストップ高・ストップ安とは仕組みが異なります)。
相違点2:レバレッジ取引の上限が異なる
暗号資産のレバレッジ取引は、国内では個人の場合、最大2倍に制限されています(2026年9月時点)。一方、株式の信用取引は手元資金の最大約3.3倍まで取引できます。
暗号資産は値幅制限がなく価格変動が非常に激しいため、2倍でも想定を超える損失が出やすいのが特徴です。
取引に慣れていない段階では、まず現物取引から始めるほうが無理がありません。なお、レバレッジ取引への対応可否や対応銘柄は暗号資産取引所によって異なります。
相違点3:同じ暗号資産取引所でも、板取引に対応していない銘柄がある
株式では、基本的に板に並んだ買い注文と売り注文をマッチングさせて売買します。暗号資産の「販売所」のように業者が提示した価格で直接売買する形式は、一般的な株式取引ではなじみが薄い方式です。
一方、暗号資産取引所の多くで、販売所では取り扱っているものの板取引には対応していない銘柄があります。板取引を使いたい場合は、投資したい銘柄が板取引に対応しているかを事前に確認してください。
株式との違いを踏まえたうえで、株式投資の経験がある方にはなじみ深い板取引と、株式ではあまりなじみのない販売所、それぞれの特徴をより詳しく見ていきます。まず、初めての方が利用しやすい販売所のメリット・デメリットを解説します。
販売所のメリットとデメリット
メリット
販売所の最大の利点は、操作のわかりやすさです。買う・売るといったシンプルな画面設計の暗号資産取引所が多く、初めての方でも迷わず操作できます。板取引では板の見方や注文の出し方を覚える必要がありますが、販売所にはそのようなハードルがありません。
また、取扱銘柄が幅広い点も利点です。販売所のほうが板取引より取扱銘柄数が多い暗号資産取引所もあります。板取引で購入したい場合は、銘柄ごとの対応状況を確認しましょう。
加えて、積立サービスは販売所を経由する形で提供されていることが多く、毎月一定額を買い付けていく長期の資産形成とは相性がよい方式です。
デメリット
販売所の主なデメリットはコストです。販売所では売値と買値の差である「スプレッド」が実質的なコストになります。スプレッドは暗号資産取引所や相場状況によって異なりますが、一般的に4〜6%程度が目安です。
たとえば販売所のスプレッドが4〜6%程度の場合、100万円分のビットコインを購入してすぐに売却すると、買値と売値の差によって数万円程度のコストが生じることがあります。表示上の取引手数料が無料であっても、スプレッドが設定されている場合は、この価格差が実質的なコストになります。
板取引のメリットとデメリット
メリット
板取引の最大の利点はコストの低さです。スプレッドは多くの場合0.005〜0.1%程度が目安で、これに取引手数料(0〜0.15%程度)を加えても、合計コストは1%未満に収まるのが一般的です。販売所のスプレッドが4〜6%程度が目安であることを考えると、コスト面での差は大きいといえます。
また、注文方法の選択肢が広いことも特徴です。成行・指値に加えて、暗号資産取引所によっては逆指値などにも対応しています。「この価格まで下がったら買う」「一定の価格を下回ったら損失を限定する」といった、株式で使っている売買の組み立てをそのまま持ち込めます。
デメリット
板取引は販売所と比べて画面に表示される情報が多く、慣れていないと操作に戸惑うことがあります。また、注文方法も複数あるため、買いと売りを間違えたり、数量や価格を入力し間違えたりするなど、操作ミスによる意図しない約定には注意が必要です。
さらに、成行注文では注文時点の価格と実際の約定価格に差が生じることがあり、相場が急変しているときや流動性が低い場合には、想定より不利な価格で約定する可能性もあります。板取引を利用する際は、注文方法や約定の仕組みを理解したうえで、まずは少額から操作に慣れていくとよいでしょう。
株式投資の経験があり板取引に慣れている方であれば、基本的な操作は大きな障壁にならないでしょう。
販売所と板取引はどちらを使うべきか
販売所と板取引はどちらが優れているというものではなく、目的や状況に応じて使い分けるのが基本です。国内の主要な暗号資産取引所では、販売所と板取引の両方を提供しているケースが多く、同じ口座の中で使い分けられます。
また、暗号資産取引所によって取扱銘柄や板取引への対応状況が異なるため、目的の銘柄に合わせて複数の暗号資産取引所に口座を持って使い分けるという方法もあります。
使い分けの目安
| こんな場合 | 向いている形式 | 理由 |
|---|---|---|
| 手軽に始めたい | 販売所 | 操作がシンプルで板の知識が不要 |
| 積立で長期保有したい | 販売所 | 積立サービスは販売所経由の場合が多い |
| コストを抑えて売買したい | 板取引 | スプレッド・手数料合計で1%未満が目安 |
| まとまった金額で取引したい | 板取引 | 金額が大きいほどスプレッドのコスト差が広がるため |
| 価格を指定して売買したい | 板取引 | 指値・逆指値など株式と同様の注文が使える |
販売所・板取引別おすすめ暗号資産取引所
それぞれの使い分けの基準を踏まえたうえで、実際にどの暗号資産取引所を選べばよいか紹介します。販売所から始める場合は、アプリの使いやすさや少額から購入できるかどうかが重要なポイントです。
板取引を選ぶ際は、投資したい銘柄が板取引に対応しているかどうかの確認が必要です。加えて、まとまった金額で取引する場合は取引量の多さも重要な選択基準になります。
取引が活発で流動性が高いほど、板に並ぶ注文も厚くなりやすく、希望価格に近い水準で約定しやすくなります。そのため、大きな注文でも約定価格が意図した水準から乖離するスリッページを抑えやすくなります。
また、板取引ではメイカー(※1)とテイカー(※2)で手数料水準が異なるため、口座開設前に各社の手数料体系も確認しておくとよいでしょう。
※1 メイカー手数料:板取引で、自分で価格を指定して板に注文を並べる注文(主に指値注文)に対してかかる手数料。ただし、注文時点で即座に約定した場合は、テイカー手数料が適用されることがあります。
※2 テイカー手数料:板取引で、すでに板にある注文に即時に約定させる注文(主に成行注文)に対してかかる手数料。メイカーより高めに設定されているのが一般的です。
販売所から始めたい方におすすめの暗号資産取引所
コインチェック(Coincheck)
国内暗号資産取引所アプリのダウンロード数7年連続No.1、累計825万ダウンロードを突破しています(※1)。初心者でも見やすく使いやすいアプリデザインが特徴で、500円相当額以上から購入可能です。なお、アプリからの板取引には対応していませんが(ブラウザ版のみ対応)、少額からシンプルに暗号資産を始めたい方に適した選択肢です。
※1 対象:国内の暗号資産取引アプリ、データ協力:AppTweak・DL数は2026年3月末時点
- 取り扱い銘柄
- 35種類
- 取引手数料 ※
- 無料
- ※BTC/JPYの現物取引で10万円分の指値注文が、注文板に並んで約定した場合(メイカー)の例です。注文時点で即座に約定した場合は、手数料が異なることがあります。キャッシュバックなどの関係で、実質の手数料がマイナスとなる場合、手数料の欄をマイナス表記しています。
SBI VCトレード
東証プライム上場のSBIホールディングス傘下の暗号資産取引所として、金融機関としての高い信頼性があります。ビットコインであれば販売所・板取引ともに1円から購入可能で、少額からでも気軽に始められます。JPYSCやUSDCなど、ステーブルコインの取り扱いに特徴があり、ステーキング・レンディングなど運用サービスも豊富です。
- 取り扱い銘柄
- 35種類
- 取引手数料 ※
- -0.01%
- ※BTC/JPYの現物取引で10万円分の指値注文が、注文板に並んで約定した場合(メイカー)の例です。注文時点で即座に約定した場合は、手数料が異なることがあります。キャッシュバックなどの関係で、実質の手数料がマイナスとなる場合、手数料の欄をマイナス表記しています。
板取引でコストを抑えたい方におすすめの暗号資産取引所
ビットフライヤー(bitFlyer)
国内の暗号資産取引所でのビットコインの取引量で10年連続No.1の実績を持ちます(※1)。ビットコインの流動性が高く、大口取引にも対応しやすいのが特徴です。また、サービス開始以来ハッキング被害ゼロ(※2)という実績もあり、大きな資産を預ける取引所としての安心感も兼ね備えています。
※1 JVCEAおよび暗号資産交換業者各社が公表するデータを基にbitFlyer調べ(差金決済取引および先物取引を含む年間出来高、2016〜2025年)
※2 サービス開始2014年以来(2026年9月時点。bitFlyer公式サイトより)
- 取り扱い銘柄
- 40種類
- 取引手数料 ※
- 140円(0.14%)
- ※BTC/JPYの現物取引で10万円分の指値注文が、注文板に並んで約定した場合(メイカー)の例です。注文時点で即座に約定した場合は、手数料が異なることがあります。キャッシュバックなどの関係で、実質の手数料がマイナスとなる場合、手数料の欄をマイナス表記しています。
ビットバンク(bitbank)
国内暗号資産取引所のアルトコイン取引量でNo.1の実績を持ちます(※1)。取り扱う全銘柄で板取引に対応しており(※2)、アルトコインのコストを抑えて売買したい方に適しています。ビットコインに加えてアルトコインの取引も検討している方にも適した選択肢です。
※1 2025年5月〜2026年4月のJVCEA統計情報bitbank調べ
※2 2026年9月時点
- 取り扱い銘柄
- 44種類
- 取引手数料 ※
- 無料
- ※BTC/JPYの現物取引で10万円分の指値注文が、注文板に並んで約定した場合(メイカー)の例です。注文時点で即座に約定した場合は、手数料が異なることがあります。キャッシュバックなどの関係で、実質の手数料がマイナスとなる場合、手数料の欄をマイナス表記しています。
よくある質問
Q. 初心者はどちらを使えばよいですか?
A. 暗号資産が初めての方は、操作がシンプルな販売所から始めるのが無理のない進め方です。売買の回数が増えてコストが気になってきた段階で板取引に移行するのがおすすめです。株式投資の経験がある方であれば、最初から板取引を試してみるのもよいでしょう。
Q. スプレッドは手数料とは違うのですか?
A. 別物です。手数料は売買時に明示されることが多いコストですが、取引所や注文方法によって無料の場合もあります。スプレッドは売値と買値の差として組み込まれた実質的なコストです。販売所のスプレッドは一般的に4〜6%程度が目安で、「手数料無料」と表示されていてもこの分のコストは発生します。
一方、板取引のスプレッドは0.005〜0.1%程度が目安で、取引手数料0〜0.15%程度が加わるとしても、合計コストは1%未満に収まるのが一般的です。コスト面では板取引の方が大幅に有利といえます。
Q. メイカーとテイカーの違いは何ですか?
A. メイカーとは、板取引で自分で価格を指定して板に注文を並べる注文(主に指値注文)を出す側のことです。テイカーとは、すでに板にある注文に即時に約定させる注文(主に成行注文)を出す側のことです。
メイカーは板に流動性を供給する役割があるため、手数料がテイカーより低く設定されているのが一般的です。
Q. 同じ暗号資産取引所なら、どの銘柄でも板取引ができますか?
A. できない場合があります。販売所では多数の銘柄を扱っていても、板取引に対応している銘柄は限られるという暗号資産取引所も多くあります。購入前に対応状況を各社の公式サイトで確認してください。
まとめ
- 販売所は暗号資産取引所を相手に売買する方式で、スプレッド(一般的に4〜6%程度が目安)が実質的なコストになる。「手数料無料」と表示されていてもスプレッド分のコストは発生している
- 板取引は利用者同士で売買する方式で、スプレッドと手数料を合わせても合計コストは1%未満に収まるのが一般的で、コスト面で有利
- 板・成行・指値の考え方は株式と同じだが、24時間365日取引・値幅制限なし・銘柄によって板取引に対応していない場合がある点は株式と異なる
- 手軽さや積立を重視するなら販売所、コストや注文の柔軟性を重視するなら板取引と、目的に応じて使い分けるのが基本
CoinPost編集部コメント
株式の経験がある方が暗号資産投資で最初につまずきやすいのが、この販売所と板取引の違いです。板の読み方や注文の出し方はそのまま使えるのに、銘柄によっては板が存在しないという点だけが株式の常識と異なります。投資したい銘柄が板取引に対応しているかを確認するところから始めると、余計なコストを避けられます。




