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投稿コメント一覧 (808コメント)

  • >>No. 495

    今年アステラス製薬が参入を発表して国内の大手医薬会社はほぼが全てCAR-T細胞の開発に関わりを持つ形になりましたが、ヒトの免疫を操作するコンセプトである以上、その安全性の担保は常に重要な課題ですね。海外を見ても「有害事象を伴うT細胞悪性腫瘍のリスクを調査して規制措置の必要性を評価する」という昨年11月のFDAの発表によって、かねて「CAR-T細胞安全性評価のための霊長類モデル」を確立している新日本科学に対する潜在的需要はますます大きくなったわけで、北米の客先に赴く新日本科学の営業担当者にとってこのFDAの方針は必携の関連資料であろうと思われます。
    この手法で安全性を確認済みである信州大学の中沢教授の非ウイルスベクターCAR-T細胞が今後臨床試験に進む一方、ウイルスベクターを使った従来方式のCAR-T細胞を開発している会社は計画の見直しが必要となってくるかもしれません。先日台湾で行われたようなCAR-T細胞のセミナーを海外で広く行えば大きな関心を集めると思われます。

  • >>No. 491

    leoさんがメディポリスの減損処理を言い立てるのを久しぶりに見た気がしますが、昔から内容が代わり映えしないのは残念なことです。長期株主を目指す者の意見としてはバブル期の遺産である巨大保養施設「グリーンピア指宿」と新日本科学の現状のホテル事業の規模には大きなギャップがあり、減損処理を適宜行って資産価値を見直すのは節税にもなり歓迎したいところ。また以前にも指摘しましたが、いくらleoさんが医療ツーリズムが儲からないと文句を言いたいにしても発電・ホテル事業・水産事業の集合体であるメディポリス事業の収支をそのまま使うのは不適当で、たとえば昨年ウナギ完全養殖成功が全国ニュースになったおりにウナギ完全養殖の研究には9年間で8億円が投入されていると報じられたように、メディポリス事業の中で支出が大きいのは水産事業でしょう(もちろん国内1500億円規模のうなぎ市場の未来が完全養殖の成功にかかっていることを思えば非常に良い投資対効果が見込まれ、これに期待する人も多いわけです)。

    メディカルツーリズムに話を戻せばその市場は14~23%の高いCAGR(年平均成長率)が予測され、日本の質の高い医療に対する海外の潜在ニーズを捉えようと政府も成長戦略のひとつとして据えており、この背景の中で高度ながん医療にリゾート滞在型宿泊施設で協業するユニークな取り合わせでメディアにしばしば登場する新日本科学に着目する投資家が居るのは当然のことでしょう。また初期の肺がんが陽子線治療の対象となったことが先日報じられましたが、この保険適用が将来乳がんに拡大すれば世の女性からの注目を集めるのは間違いなく、その見学コースを組み込んだ宿泊プランなどを発表しようものなら申し込み電話が殺到であろうと個人的には予想しています。

  • >>No. 486

    基本的な図式としては「医療ツーリズム」の事業モデルと「陽子線治療」の有効性の両方を理解できない人物が、メディポリス国際陽子線治療センターと協業する新日本科学のメディポリス事業について何か意見を言ってもピントが外れた発言にならざるを得ないわけで、忘れたころにその実例を提供してくれるのがleoさんの書き込みであるとは言えます。

    一般論として「医療ツーリズム」や「インバウンド需要」を投資テーマとして検討したことがある人なら、新日本科学とメディポリス国際陽子線治療センターのコンビを目にする機会は多いと思われ、たとえば株探が医療ツーリズムの関連銘柄を紹介する際に新日本科学を筆頭に挙げるのも今後の発展性を鑑みれば順当な注目度と言えそうです(『再脚光「医療ツーリズム」、インバウンド追い風に活躍舞台に立つ銘柄群』https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202402011095)。ここで頭にきたleoさんが「両者は資本関係が無いから業績に関係ないはずだ」などと株探に文句をつけに行っても、単に医療ツーリズムの仕組みを分かっていないおかしな人が来たと思われるだけでしょう。

    またこれまで陽子線治療についてleoさんは効果がないとか社長の道楽だとか繰り返してきましたが、先日の記事を見ても分かるように国立がんセンターのトップを務めた垣添氏は陽子線治療を評価しており、どちらが知識を元に物事を見ているかは自明でしょう。逆に言うとleoさんが現状の見当外れな状態から脱するには、上の二点について知識の獲得に努めれば良いわけです。

    あとCAR-T細胞については、信州大学の中沢教授と新日本科学の下井・望月両氏が台湾で研究成果を発表したのはつい先月のことで、これを「昔の知り合い」というのもleoさんらしいピントのずれ方。CAR-T細胞の安全性を担保する上では、ヒトに近い免疫反応を持つサルでの検証が重要であり、そのため中沢教授とイナリサーチの下井氏らのグループが国の助成を得て共同開発したのが「CAR-T細胞安全性評価のための霊長類モデル」なわけで、これが今後日本国内のCAR-T細胞開発における標準的な安全性評価となれば事業的にもその意義は大きいでしょう。

  • 日本人の死亡原因で一番多いのが「癌(がん)」で、体の色々な部位に発生するがんの中でも特に死亡数が多く日本人男性で第一位、女性で第二位となっているのが「肺がん」。この恐ろしいがんの宣告は可能性として誰の身にも起こり得ることですが、先進的な陽子線治療の保険診療の対象に今月から早期肺がんが加わるという報道は、この患者さんに新しい希望をもたらす知らせとなるでしょう。
    『早期肺がん治療費330万円→3万円 陽子線治療が今月から保険診療に 鹿児島の陽子線治療の現場から』(MBCニューズナウ 2024/6/3放送)
    https://www.youtube.com/watch?v=AuMaMevz18s

    この保険適用拡大に先立ち、国内有数の陽子線治療施設「メディポリス国際陽子線治療センター」がある鹿児島県の地元紙・南日本新聞は、同センターの理事長でもある新日本科学の永田社長と、国立がんセンター総長などを歴任し現在は日本対がん協会の会長である垣添忠生氏の対談を掲載。早期肺がん陽子線治療の保険収載の意義や陽子線治療の優れた点について紹介しています。この記事にも書かれているように、がんになったら陽子線治療が受けられないかを確認するセカンドオピニオンが重要。日頃からがん早期発見のため検診を心掛ると同時にがんの先進医療に常に関心を持ち、もしがんの発見を医師から告げられた時は自身の命が助かる選択肢に素早くアクセスしたいものです。
    『早期肺がん陽子線治療 保険適用拡大6月から』(南日本新聞 2024/5/26)
    https://medipolis-ptrc.org/cms/wp-content/uploads/2024/05/54fa2bdde47f4fef703fbb81eeddcdca.pdf

  • ①CAR-T細胞療法の急成長
    血液のがんに対してはすでに実用化され、一部の白血病(急性リンパ性白血病)では完全寛解が9割という劇的な効果をみせているCAR-T細胞療法。これを固形がん(胃がん・肺がん・大腸がんなど体組織に生じるがん)退治に応用する技術が完成すれば従来の抗がん剤に取って代わるのは明白で、大手製薬会社が次々とCAR-Tに参入し開発競争が激しくなってきている情勢です。

    ②課題はCAR-T細胞の安全性の確認
    「"CAR-T" "安全性評価"」のワードで検索すれば分かりますが、信州大学とイナリサーチを中心とした研究グループの活動が検索結果の上位に並び、日本国内でこの研究をリードする存在であることが見て取れます。また国が後押しする事業として2018~2023年にかけて行われた「日本発の遺伝子改変T細胞の実用化を促進するための、霊長類モデルを用いた安全性評価系の基盤整備」によってイナリサーチ・ラボが開設され、カニクイザルモデルを用いたいた安全性評価法(https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/release/21/06/07/10849/)が確立されています。

    ③すぐれた新方式のCAR-T細胞療法
    この信州大学の中沢教授が開発したPiggyBacトランスポゾン法によるCAR-T細胞療法は、免疫疲弊が生じにくく効果が長く持続するメリットがあり固形腫瘍にも有効性を示しながら生産コストは従来方式の10分の1。医療機器・試薬の大手であるサーモフィッシャー社が信州大学との共同研究に加わり、国内の企業でもちょうど昨日、帝人が信州大学発のスタートアップと協定を結んで製造工程開発で参加を表明するなど、その有望さに着目した大企業が集まってきています。

    上の①を前臨床CROの仕事の需要、②をその供給能力として捉えれば、需要と供給があるところに何か起きるかはさすがのleoさんでも理解できるでしょう。
    さらに複数の利点を持つ③信州大学の技術をCAR-T細胞医療のプラットフォームとして採用したい製薬会社の視点で考えれば、開発段階から参加してこの方式に多くの経験値を持ち専門のラボまで擁するイナリサーチ(つまり新日本科学)に前臨床を担当してもらうのが堅実な選択肢となるわけです。

  • CAR-T細胞療法の今後の発展と新日本科学の今後の事業との関係が分からない、という合いの手をleoさんが入れてくれたのでさっそく説明を追加いたしましょう。

  • またCAR-T細胞のがん治療には今後の高い市場成長が見込まれれていますが、CAR-T細胞にはもうひとつ別の分野である抗老化(アンチ・エイジング)の面でも大きな応用可能性が生じておりその動向が注目されます。今年のはじめにアメリカのコールドスプリングハーバー研究所から、CAR-T細胞を使ってがん細胞のかわりに老化細胞を除去したらどうなるか→やってみたらマウスが若返りました。という研究成果が発表され(https://www.medicalnewstoday.com/articles/t-cells-reprogrammed-to-slow-down-and-reverse-aging)、これをヒトに適用してCAR-T細胞で老いた細胞を削除し、必要に応じてiPS細胞で若い細胞を補給する時代になれば、ヒトは不老長寿どころか好きなだけ若返ることもできることになります。とはいえそんな時代が来てもそれが高価でごく一部のハイリッチな階層だけ手が届くというのではあまり面白くなく、CAR-Tのコスト大幅ダウンを実現可能な中沢教授のPiggyBacトランスポゾン法の発展に期待したいと思います。

  • CAR-T細胞をテーマにして5/21に開催された日本台湾共催セミナーについて「環球生技」の記事が出ていたので自動翻訳して読んでみました。
    『初の非ウィルス性PiggyBac CAR-Tが臨床試験入り! 新日本科学:オフターゲット毒性防止ため前臨床予防措置を有効に活用』
    https://news.gbimonthly.com/tw/article/show.php?num=67976

    日本側は信州大学の中沢洋三教授、下井昭仁特任助教授、望月秀美特任准教授が参加(下井氏と望月氏は新日本科学の社員でもあります)。このごろ画期的ながん治療として注目されているCAR-T細胞療法ですが、CAR-Tががん以外の正常細胞までむやみに攻撃しないよう安全性を担保しつつ開発することが非常に重要。今回のセミナーではウィルスベクター方式と比較して中沢教授のPiggyBacトランスポゾン法が安全性向上・低コスト化・長期効果持続を期待できることが説明され、新日本科学からは実際の患者さんで治験に入る前にどのようなポイントで霊長類を使った安全性確認が行われるべきか解説し台湾側と意見交換が行われたもようです。

    これまでを振り返るとまだイナリサーチが新日本科学グループに加わる以前から信州大学・イナリサーチは協力してCAR-T細胞療法の開発を進めており、日本国内でCAR-T細胞や再生医療の安全性評価の拠点が必要だねということで、国の「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」でイナリサーチ・ラボが設置された経緯があり、今回のセミナーの記事をみるに新日本科学としてはここで得られた前臨床の安全性評価法をひとつのスタンダードとして海外にも広めようという姿勢に見受けられます。2年前にイナリサーチをグループに迎えた経営判断は新日本科学にさらに大きな発展の可能性をもたらしたと言えそうです。

  • 日経新聞が出しているマーケティング情報誌「日経MJ」に、岡本硝子のガラス工芸ブランド「illumiiro(イルミーロ)」が紹介されたようですね(https://x.com/cementblue/status/1792695245723078691)。この件でXに情報をアップしたのはデザインプロデュース会社「CEMENT PRODUCE DESIGN」代表の金谷勉さん。イルミーロはこの金谷さんが岡本硝子の若手社員と共に進めてきたプロジェクトのようで、大分合同新聞のサイトにその開発の経緯を連載されていました(https://gxbiz.oita-press.co.jp/gxbiz/2024/05/11/JDC2024051000217)。


    金谷さんのXの投稿を見た歌手の矢野顕子さんも「これは実物を手に取ってみたいです」とリツイート(https://x.com/Yano_Akiko/status/1792709942761414675)。岡本硝子の薄膜技術を活かし、光の反射・屈折・干渉が混ざりあう万華鏡のようなグラスは、アーティストの琴線に触れる出来栄えのようです。私もひとつ欲しくなりました(⌒-⌒)。

  • >>No. 193

    テレビ東京の科学番組「いまからサイエンス」でも、先日5/15の放送でハドロン宇宙国際研究センターの石原安野教授を招き、ニュートリノと南極点の地下深くに作られたニュートリノ観測施設「IceCube(アイスキューブ)」をお茶の間に紹介していましたね(テレビ東京のサイトで5/23まで見逃し配信https://video.tv-tokyo.co.jp/imakara_science/episode/00110080.html)。
    番組の26分あたりで岡本硝子が耐圧ガラスを製造し今年から約300基が南極点に埋設されるニュートリノ検出器「D-Egg(ディーエッグ)」も登場しました。もうひとつ注目したのが番組の40分あたりで一瞬登場した「D-Egg」の次の世代となる、光電子倍増管を多数詰め込んで従来比性能5倍を目指していると石原教授が紹介した新型検出器で、このタイプが一般のメディアに登場したのは初めてではないかと思いますが、こちらの新型検出器でも岡本硝子の耐圧ガラスが引き続き採用されれば非常にうれしいですね。
    2028年からの建設が予定される「IceCube-Gen2」の本体計画では総数1万の検出器を新たに南極点に埋めてニュートリノの観測アレイを一挙に拡大するプロジェクト。天文学のみならず物理学の基礎を書き換える大きな発見が期待されます。

    下図はハドロン宇宙国際研究センター(ICEHAP)ホームページより(描かれている東京スカイツリーと比較でもその規模の大きさが分かります)
    http://www.icehap.chiba-u.jp/icecube/detector/d-egg.html

  • 以前はもっぱら中高齢の人が罹る病気だった大腸がんが、さいきん若い世代でも多く見られるようになってきたと世界中で言われており、食生活の変化だろうとか環境に何か未発見の発癌物質が増えているのだろうとか諸説ありますが、いまのところ原因がよく分からないようです。

    栄研化学の便潜血検査を郵送方式で採用している国々でもこの大腸がん低年齢化に対応しようとしており、ニュージーランドは現在60~74歳である便潜血スクリーニングの対象を拡大して50歳から始めるように検討中、イギリスも全土で開始年齢を段階的に下げて50歳からスクリニーングを行う取り組みを進めていますが、先日オーストラリア政府がさらにその先を行く45歳からの便潜血スクリーニング検査開始を発表しました。

    『若年発症患者の急増を受けて大腸がん検診の年齢が引き下げられる』9News 2024/5/15
    https://www.9news.com.au/national/bowel-cancer-screening-age-lowered-amid-surge-in-young-onset-cases/3cfaedbc-e87a-4b26-9b17-948e700c2c59

    2024年7月1日から、45~49歳の160万人のオーストラリア人が2年に1回行われる大腸がんスクリーニングの新たな対象となり、40~44歳の人もかかりつけの医師を通じて検査キットを注文可能とのこと。若い人ほどがんの進行が速いので早期のがん発見がより重要であり、オーストラリアに続いて大腸がんスクリーニング対象を45歳開始へ拡大する国が今後増えると思われます。

  • 白血病など血液がんで大きな治療効果を示したCAR-T細胞が一般の固形がんにも使えるようになれば、命を救われるがん患者の数も生じる経済効果も計り知れない膨大なものになりますが、画期的な治療法だけに実用化に向けたグローバル治験の立ち上げが大仕事となることも事実。今回開催されるようなセミナーを通じて治験の見通しに関するグランドデザインを各国の医療・製薬関係者と共有していくことが重要となるでしょう。なお信州大学×イナリサーチのCAR-T細胞開発に昨年参加しているサーモフィッシャーはPPDの親会社でもあり、CAR-T細胞療法を各種の固形がんに応用していく国際的な治験にはPPDおよび新日本科学PPDが大きな役割を果たす公算が高いと思われます。

  • 最近、台湾のバイオ情報誌「環球生技」のサイトに『非ウイルスCAR-T細胞療法の新たな将来展望に関する台日セミナー』という記事が載り、その内容を見ると台湾の経済省産業発展部の肝入りで日台共同のセミナーが開催されることになり「新日本科学の専門家や関連分野の著名な学者が、非ウイルスCAR-T細胞療法の今後の開発動向やCAR-T細胞療法の開発過程における安全性評価の重要性について議論します」とのこと(https://news.gbimonthly.com/tw/activity/show.php?num=1443)。最初の講演者は、CAR-T細胞療法の固形がんへの応用で著名な研究者である信州大学の中沢洋三教授。ご存じの方も多いと思いますがこの信州大学のCAR-T研究にはイナリサーチが大きく関わっており、2019年にイナリサーチ・ラボが開設された目的も、今後大きく成長するCAR-TとiPSの研究を進めるためでした(https://www.shinshu-u.ac.jp/topics/2019/11/carsto.html)。

    この日本台湾合同セミナーのテーマにある「非ウイルスCAR-T細胞」とは、がん細胞を攻撃すべくT細胞を改造するにあたってAAVなどのウィルスを使う従来の方法に代わり、より安価でより治療効果が持続する中沢教授の「ピギーバック・トランスポゾン法」で作られたCAR-T細胞を意味し、この手法が2021年には日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業にも採択され(https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20210519-01.html)、2023年には医療関連機器の国際的大手である米サーモフィッシャーサイエンティフィックが共同研究に参入するなど(https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/about-us/news-gallery/release/2023/pr051023.html)実用化を視野に入れた研究が進んでいます。

  • はじめて東京で開かれた完全養殖うなぎの試食会、報道によると今回もおいしいと好評だったようで何よりでした。うなぎの完全養殖は1973年に北海道大学が人工孵化に成功して以来、各地の大学や水産試験場が研究を行いニュースになることもありましたが内容はいつも学問的興味を引くものの商業化にははるか遠いという感じでした。このようにウナギ完全養殖の動きが研究室に留まっていた期間が実に50年も続いてきたため、このところ新日本科学によって状況が一変し商業化の道が見えてきたことがなかなか実感を伴って理解できない人の方がまだ多いかもしれません。データの数字を並べるよりもうなぎの重箱を並べて実際に賞味してもらい、おいしいという実感を伴った声を報道してもらうのが公報としてもよい方法と言えそうです。

    私自身の将来的な期待材料としては、まず経鼻デバイスへの期待が一番大きく、シラスウナギ事業はその先のボーナスとしてとらえていますが、おおまかに個人的な今後の想定を書いてみましょう。資源量の先細りが続いているシラスウナギの価格は高騰した年で1キログラムあたり300万円近くになったことがありますが、いちおう1キログラム(約5000匹)を150万円として計算すると、新日本科学が2026年の目標とする10万匹で3000万円。報道などでみると新日本科学はこの10万匹付近を商業化に必要な採算ラインとしており、この採算規模での生産実証が完了したところから本格的なスケールアップに入ると考えています。すなわちこの10万匹のシラスウナギ水槽を横に10セット並べれば100万匹となり3億円、10×10で100セット並べれば30億円・・・といった具合ですが、昨年のTECH+の記事に出たように、大型水槽を大量に導入して行うシラスウナギの養殖は水産会社と提携して行う公算が高いでしょう。また市場規模から見ると日本国内のうなぎの年間消費は3億匹とされ、資源枯渇に伴って今後も価格上昇が避けられない天然ものに代わり、安定した価格で供給できる人工養殖に唯一商業化への目途をつけた新日本科学のシラスウナギ事業は大いに伸びしろがあると考えています。

  • 先日5/9の「東北大学産学連携先端材料研究開発センター内に研究室を開設」はなかなか画期的なIRでした。その内容に「東北大学と共同で素材から差別化した新しい磁性受動部品の研究開発の取り組みを開始しました」とあり、半導体の分野で先端的な研究者と設備を揃える東北大学との共同開発は、タムラ製作所の主力製品であるパワーデバイス群を刷新する上で大きな推進力となりそうですね。

    東北大学といえば、太陽光線の10億倍の明るさの放射光を使い物質構造を100万分の1ミリ単位で解析できる世界最先端の施設「ナノテラス」が先月稼働しており、将来この施設を使えれば酸化ガリウム半導体の多方面の研究が捗りそう。また半導体や先端材料に強い東北大学は「東北大学半導体テクノロジー共創体」という国内有数の開発拠点を擁しており、ここで半導体に関わる産官学共同の大型プロジェクトが次々に立ち上がっています。また東北大学は10兆円規模の大学ファンドの運用益から研究資金の助成を受けられる「国際卓越研究大学」の候補にも昨年選ばれており、これが正式決定すれば大学の研究資金も潤沢になるわけで、東北大学は共同研究の相手先となるアカデミアとして研究力・影響力・資金力を合わせ持った頼もしさがあります。

  • 5/10の「人とくるまのテクノロジー展 2024」に出展というIRには、リケンテクノスが次世代太陽電池の研究に参加するという驚きの内容が含まれてましたね。
    「ペロブスカイトと同様に注目される次世代太陽光発電有機薄膜太陽電池(Organic Photovoltaics : OPV)の産学共同研究に着手しましたので、合わせて展示いたします。」https://www.rikentechnos.co.jp/information/2024/05/10/20240510-02/

    次世代太陽光発電テーマで銘柄を物色したことがある人はご存じと思いますが、現在の太陽光発電で主流となっているシリコン製の太陽電池は、製造に多くのエネルギーを使うため環境負荷が高いという問題があり、コストも高く重量もかなりあるため設置場所に制約があります。これに対して次世代の太陽光発電として現在盛んに開発されているペロブスカイト太陽電池や有機薄膜太陽電池は、製造のエネルギーが少なく材料が安価、軽量でフレキシブルなため曲面や壁面にも取り付け容易と多くのメリットがあり、実用化されればシリコン系太陽電池に代わって太陽電池の主流になると考えられます。

    現在のところ有機薄膜太陽電池よりもペロブスカイト太陽電池の方が実用化に向けて先行していますが、有機薄膜太陽電池にはペロブスカイト太陽電池にない「光を通す」という大きな特徴があり、建物の壁どころか窓まで太陽光発電に使えるのが嬉しいところ。たとえばオフィスビルの窓で適度に採光しつつ発電したり、農業用ハウスの屋根に使って農作物が光合成に使う波長の光だけ透過させ、作物が使わない波長の光を使って発電するなども可能になるわけです。

    有機薄膜太陽電池の課題としてはエネルギー変換効率がシリコン系に及ばないことが挙げられますが、最近では研究が進んだことで次第に変換効率の差を縮めつつあります。もうひとつ克服すべき課題が耐久性で、太陽光に含まれる紫外線に長期間晒されると性能が落ちること。おそらくここで、不要な波長の光をカットする住宅用・自動車用透明フィルムで高い経験値を持つリケンテクノスの出番となったのだろうと想像します。リケンテクノスの透明フィルム技術が有機薄膜太陽電池の保護フィルムとして広く使われる未来がくるか、この件でも長期視点で続報を楽しみにしたいと思います。

  • 今回の決算資料も見どころが沢山ありましたが、まず事業基盤として売上や受注残高が過去最高額を更新し、中期事業計画の売上500億円(FY2028)へ向かって着実に進んでいることを示すよい決算でした。2022年に出されたこの目標は年平均成長率(CAGR)約16%のペースで売上高が成長し続けると達成される計算で、このコース上を進んでいるという事は会社が高成長を続けている事を意味します。

    そして成長率の点でいっそう目を引くのが海外大手PPDとの合弁会社である新日本科学PPDで、売上のCAGRが20%という驚きの速さで新日本科学の本体を追い上げており、今回の決算資料にある新日本科学PPDの売上180億・従業員数1000人というのはつい3年前の新日本科学本体とほぼ同じぐらいの事業規模。いわば新日本科学がもう一個出来た感じすらします。前臨床CROの新日本科学がカニクイザルの安定的リソースという強みを持っているのに対し、臨床CROの新日本科学PPDは親会社PPDをバックにしたグローバル治験が強みとなっており、これに加えて前臨床CROよりも臨床CROの方が市場規模が大きいことが、新日本科学PPDが新日本科学本体を上回る成長率の原動力となっているのでしょう。

    そして今回の決算説明で大きな扱いだったのが先行投資として大きい経鼻投与偏頭痛薬STS101。当初計画からの遅れが出ているのは残念でしたが、今年2~3月にFDAと行われた協議の結果としては申請用の製剤情報のデータ不足を補って再提出すればよいようで、べつに薬自体や製造方法の変更などを求められている訳でないのには安心しました。またSTS101の販売について複数の提携先候補との協議を踏まえてライセンス収入を想定したグラフが決算説明資料に初めて載ったのも興味深い点です(p.45)。将来の収益見込みとトレードオフとなるSatsuma社関連の費用で前期決算と今期予想の利益が減っているのは事実ですが(24/3期実績13.4億+25/3期予想32.9億=46.3億)、その額は新日本科学PPDがもたらす利益(24/3期実績26.3億+25/3期予想27.7億=54億)で十分賄える水準であり、現在の利益でより大きな収益構造を育てる良いサイクルに乗っていると言えます。

  • 今回の決算説明会資料では、アフリカでのLAMP法普及活動がついに成果を挙げ始めたということで、昨年のLAMP法結核検査数が100万を超えたという「ナイジェリアにおけるTB-LAMPの大規模採用」に目が行きました(p.29)。ナイジェリアといえばアフリカで最も多い2.2億人の人口を持ち、経済でも南アフリカのGDPを抜いてアフリカ諸国で最大となるなど近年存在感を増しており、栄研化学がこのアフリカの地域大国でまずLAMP法普及の糸口をつかんだのは将来的に意味が大きいと思われます。アフリカでは結核はもちろんですがマラリアや顧みられない熱帯病(NTDs)の対策も重要で、塩野義製薬エーザイなど製薬各社が新薬を開発中ですが、それらの薬をアフリカに投入するにあたってはまず投薬に先立つ検査が必要で、高価な検査設備がほとんど無いアフリカの奥地でも問題なく使えるLAMP法検査が有用。普及に先鞭をつけたナイジェリアが今後アフリカ全土にLAMP法を広める中心地となってくれれば、理想的な展開と言えるでしょう。

    なお株主としては、年間配当を増配して53円とし、今後もさらなる自己株式取得を検討(p.25)など株主を意識してくれる今回の発表についても、もちろん結構なことと言わざるを得ません(⌒-⌒)。

  • 今日は新日本科学が子会社GEMSEKIを通じて出資しているベンチャー企業のひとつ、トレジェム・バイオファーマがニュースに出てますね。同社が開発している待望の「歯生え薬」の治験が今年9月に京都大学の関連病院でスタートするとのことです。
    『世界初の「歯生え薬」9月に治験開始 京大発新興など』日経新聞 2024/5/3
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF028KP0S4A500C2000000/

    なんとなく今まで歯茎に注射する薬と思っていましたが、実際の治験では腕からの点滴で投与するとのこと。開発者である高橋克氏(トレジェム・バイオファーマ取締役、 医学研究所北野病院歯科口腔外科主任部長、元京大准教授)が記者の質問に答えて、でも頭から歯は生えないので心配ないよと手を頭にやっているのは何かユーモラスな感じがします。まずは先天性無歯症の治療薬として治験を進め、その後で虫歯などで失われた永久歯の再生に活用していく予定とのことで、こういう再生医療で失われたものを取り戻せるという技術の進歩を聞くと未来が明るくなる感じがします。とはいえ今ある歯も歯磨きを欠かさず大切にしましょう。
    『【速報】世界初「歯が生える薬」の治験開始「虫歯」で「永久歯」失っても安心の未来訪れる可能性』関西テレビ 2024/5/3
    https://news.goo.ne.jp/article/ktv_news/region/ktv_news-12099

  • このところの報道にも見るように北アメリカでは生成AIと連動したデータセンターの建設計画が非常に増えており、データセンターが消費する電力消費の将来予測は大きく上方修正されつつあるようですね。半導体大手ARM社のレネ・ハースCEOは今月のウォールストリートジャーナルのインタビュー記事で、10年後までにAIデータセンターは米国の電力需要の20%から25%を消費する可能性があると述べていますが、これは従来の見積もりをはるかに超えるペースで米国の主要産業はデータ処理になってゆくよと言っているようなもので、そのビジョンには眩暈を覚えるほどです。ここで問題になるのがデータセンターの建設ラッシュに伴う電力をどうやって調達するかということで、都市の外に広い土地を買って巨大なデータセンターを建て続けるのは既存の電力網とは別の新たな電力インフラが大量に必要なことを意味します。このような時期にタムラ製作所が北米でトランス・リアクタの生産能力を拡大したのは、まさに需要増に供給増が合致した良いタイミングでした。

    とはいえデータセンターという新しい産業分野の成長でここまで電力需要が増えるのはコスト面からも環境保全の面からも負荷が大きく、データセンターの省電力の取り組みはますます重要になってくるわけで、ここで電力損失を大幅に削減できる酸化ガリウム半導体が大きな役割を果たすと考えられます。データセンター事業者の視点で見れば人件費よりも電気代がかかる事業でこのコストが圧縮できれば利益に直結するのはもちろんですが、近年のサーバーの高性能化・電力消費増大に比例して大型化しサーバーの設置スペースを喰っている電源装置類を酸化ガリウム半導体で小型化できれば、同じ建屋・同じサーバーラックにより多くのサーバーを格納できるようになるわけで設備投資面でも大きな利得となるでしょう。

    AIデータセンターの急拡大という大きな流れとの関連で見れば、現行の製品(トランス・リアクタ)には大きな需要増加が見込まれ、次代の製品(酸化ガリウム半導体)の活躍の場はますます広がるということで、ここタムラ製作所には長期投資の魅力を感じます。

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