証券会社が手数料を無料化するのはなぜ? 背景を理解しよう
証券会社による手数料無料化の流れはアメリカで始まり、その後日本にも波及しました。まずは、証券会社が手数料を無料化する背景を詳しく見ていきましょう。
きっかけはアメリカでの手数料無料化の流れ
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証券会社による手数料無料化の流れは、まずアメリカで始まりました。2019年にネット証券大手のチャールズ・シュワブ社が、株式売買手数料の無料化にふみ切ったことがきっかけとされています。
チャールズ・シュワブ社が無料化を実現できた理由のひとつが、金利収入によって大きな利益をあげていること。顧客に資金や株式を貸し出す信用取引によって得られる金利、顧客の証券口座にある余資を銀行口座に預けることによって得られる金利が大きいため、手数料を無料化できたと考えられています。
ただし、日本では低金利が続いているため、金利による安定した利益を得ることは難しいのが現状。アメリカのようなビジネスモデルを実現することは困難だといわれています。
日本ではSBI証券が手数料無料化を牽引
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アメリカの動きを受けて、日本ではSBI証券が手数料無料化の流れを牽引しています。SBI証券では、2020年から段階的に手数料を引き下げてきました。
- 2020年10月:1日の約定代金合計100万円までの国内株式取引手数料無料化
- 2021年12月:25歳以下の国内株式現物手数料無料化
- 2022年3月:「日計り信用」での買方金利・貸株料を無料化
- 2022年7月:単元未満株の買付手数料無料化
SBI証券の動きを受けて、ほかのネット証券も無料化の流れに追随しています。例えば、楽天証券では2020年12月に、auカブコム証券では2021年7月に、1日の約定代金合計100万円までの国内株式取引手数料を無料化。松井証券も1日50万円までの株式取引は無料です。
ただし、手数料無料化は証券会社の収益減に直結します。すべての証券会社が無料化を実現できているわけではないことも理解しておきましょう。
証券会社が手数料を無料化する理由はシェア拡大のため
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証券会社が収益減のリスクを負ってまで手数料を無料化する目的は、顧客のシェアを獲得するためと考えるのが一般的です。今後は顧客をより多く獲得している会社が、必要最低限の投資で大きな収益を得られる時代が来ると予測されています。
資産運用のAI活用により、今後証券会社の運営コストは減少していくでしょう。加えてネットビジネスでは、顧客の数が増えても設備投資にかかる費用はさほど変わらないため、シェアが増えた分だけ収益を拡大しやすくなるといわれています。
収益の一部を手放してでもシェア拡大を進める必要があると、証券会社が判断したことも、手数料無料化が進められている理由のひとつです。
手数料を無料化した証券会社が収益を得る方法
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手数料無料化を進める証券会社は、手数料以外の方法で収益を得られるビジネスモデルを確立しています。一般的には、以下のような方法が考えられるでしょう。
- 顧客への情報提供料
- 資産運用に関するアドバイス料
- 投資信託の信託報酬
- 信用取引の金利・貸株料
- 投資一任契約の管理手数料
- 自社資金を用いた投資利益
例えば、ネット証券会社では担当のアドバイザーがつかないため、多くの場合、投資に関する助言を行う有料サービスが用意されています。プロの視点でのアドバイスをもらったり、担当者を通じて注文したりすると、手数料が発生する仕組みです。
また、投資信託の信託報酬も収入源のひとつ。投資信託は無料で購入できるケースも多いですが、保有し続けている間は、プロに運用を任せるための信託報酬と呼ばれる手数料が発生します。
手数料の無料化によって顧客基盤を広げることで、上記のようなサービスにおける収益を伸ばす効果も期待できます。
手数料が安い証券会社はどこ? ランキングをチェック
手数料無料で取引できる条件は、証券会社によって異なります。取引する金融商品の種類や年齢などによっても手数料は変動するので、自分に適したサービスを展開している証券会社で口座開設することが大切です。
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