(株)シグマクシス・ホールディングスの決算説明会書き起こし
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2025年3月期 決算概況
田端信也氏(以下、田端):CFOの田端です。シグマクシス・ホールディングス2025年3月期の決算内容について、補足資料を一部抜粋してご説明します。
決算概況です。連結売上高は前期比17パーセント増の262億9,300万円、経常利益は前期比35パーセント増の58億7,600万円で、過去最高となりました。
当連結会計年度において、コンサルティング事業では、顧客の旺盛な需要に伴い社内人財の稼働率が高水準で推移し、外注も増加しました。投資事業では約5億円の新規投資を行い、投資先2社を減損処理しました。また、投資先1社をEXITしています。
2025年3月期 連結業績予想と実績/年間配当金
通期の業績予想の達成率については、売上高は100パーセント、営業利益は101パーセント、経常利益は101パーセント、当期純利益は105パーセントとなりました。
2021年3月期からの年平均成長率については、売上高は17パーセント、経常利益は34パーセントと、力強い成長を継続しています。配当金は、前期から56パーセント増配の1株当たり21円とします。
2025年3月期 連結損益計算書
連結損益計算書についてご説明します。売上原価は前期比17パーセント増、売上総利益率は44.6パーセントとなりました。
コンサルティング事業で、顧客の旺盛な需要に対応するためビジネスパートナーを引き続き活用しており、売上に対する外注の比率は年間を通じて約2割で推移しました。投資事業の減損処理の影響として約2億5,000万円を除いた場合、売上総利益率は前期を上回る水準となっています。
重要業績評価指標(KPI)
重要業績評価指標についてご説明します。連結売上高経常利益率は、前期から3ポイント上がり22.4パーセントとなりました。売上総利益の増加、販管費のコントロールならびに余資運用資産の売却益が主な要因です。
コンサルタント数は3月末時点で625名で、前年同期比9パーセント増となっています。デリバリー品質の指標であるプロジェクト満足度は97点と、過去最高水準となりました。
セグメント情報 コンサルティング事業ハイライト
コンサルティング事業では、運輸、金融、情報通信、小売、商社を中心とした顧客へのプロジェクトが事業を牽引しました。上位10社でSaaS導入支援等の大型案件が増加傾向で、売上高に占める割合が上昇しています。
採用活動
積極的な採用活動の結果、当連結会計年度に経験者73名、新卒59名が入社しました。2025年4月には81名の新卒が入社し、新年度開始時のコンサルタント数は695名でした。新卒採用については、2026年4月入社について90名程度を目標に採用活動中です。
会計業務・システムの標準化 SAP S/4HANA Cloud Public Editionの導入
お客さまに開示を承諾いただいているプロジェクトをご紹介します。
商船三井グループ仕組船会社さまの約250社を対象とした会計業務およびシステムの標準化プロジェクトでは、シグマクシスの知見やプロジェクト推進力などが評価され、SAPジャパンが主催する年間表彰で「プロジェクト・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
その他のプロジェクトも補足資料でご紹介しています。ぜひご一読ください。
セグメント情報 投資事業ハイライト
投資事業は本日(5月8日)をもって事業を停止し、2025年7月に持株会社に吸収合併の予定です。詳細は本日の適時開示「完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ及び特定子会社の異動に関するお知らせ」をご覧ください。
2026年3月期 連結業績予想
2026年3月期の連結業績予想についてご説明します。売上高は300億円、営業利益は69億5,000万円、経常利益は70億6,000万円、当期純利益は49億円です。
コンサルティング事業では、SaaS導入支援やAI活用支援を重点領域とし、コンサルタント能力の拡充を継続していきます。
配当方針
2026年3月期の配当予想は26円とします。この度、配当性向目標を新たに定め、2030年3月期までに50パーセントまで引き上げていく予定です。
シグマクシス・グループ2030 2030年3月期「ありたい姿」
太田寛氏(以下、太田):代表取締役社長の太田寛です。弊社の成長戦略についてお話しします。
2022年に公表した弊社グループの中長期の成長イメージ「2026年3月期『ありたい姿』」については、連結売上高250億円を1年前倒しで達成することができました。お客さまをはじめ、ご支援いただいたみなさまに感謝します。引き続き、2026年3月期の経常利益目標の達成に向けて、社員一同、邁進していきます。
新たに開示した「2030年3月期『ありたい姿』」についてご説明します。現在の日本が置かれている状況は大変厳しいものです。経済成長の鈍化や少子高齢化に代表される数々の社会問題に直面し、世界における競争力を急速に失っています。
このような状況を打開するためには、日本企業の価値創造力を復活させることが急務で、私たちが提唱する「3つの変革」である、デジタルを活用した生産性革命や新規事業の創造、経営モデルの変革を加速させる必要があると考えています。
また、生成AIに代表されるテクノロジーが社会や企業にどのような影響を与えるかについて、昨今、大きな議論が巻き起こっています。私たちはこのような時代だからこそ、テクノロジーを使いこなし、人間の持つ能力で明日を切り拓いていくことにチャレンジしたいと考えています。
シグマクシスグループは2030年に向けて、テクノロジーを活用しながら人財が持つ価値を最大限に引き出し、お客さまとともに価値を共創する企業へと、さらに進化していきます。
シグマクシス・グループ2030 〜成長戦略〜
まず、提供価値の向上と顧客層の拡大に注力します。お客さまとの価値共創の実現とコンサルタントの生産性向上が、価値向上の鍵です。
顧客層の拡大においては、各産業の専門性をより深め、売上拡大につなげていきます。優位性のある成長分野のSaaS導入やAI領域は私たちの成長の重要なエンジンになるため、一層注力していきます。
また、私たちの成長エネルギーの源泉は人財の能力です。より積極的に人財を採用して能力開発の加速に取り組むのはもちろん、外部企業との連携も視野に入れて私たちの価値創造能力を高めていきます。
同時に、2025年7月に投資事業を持株会社に吸収合併し、M&Aや業務提携など、資本を活用した成長にも取り組んでいきます。
さらなる将来の成長に向けて、パートナー企業との連携を通じた海外での日本企業支援や、人月モデルに依存しない事業の開拓についても検討を開始したい考えです。
シグマクシス・グループ2030 ~2030年3月期 ありたい姿~
これらの取り組みを通じて、弊社グループは、売上高500億円、経常利益150億円、経常利益率30パーセント、コンサルタント数1,100名を「2030年3月期『ありたい姿』」として目指していきます。
シグマクシス・グループ2030 〜キャッシュ・アロケーション/株主還元方針〜
続いて、新たな資本政策、株主還元方針についてご説明します。社員・株主のみなさま、そして社会へのバランスの取れた価値還元を継続的に実施するため、持続的な成長のための投資と、リスクを許容できる株主資本の水準を適正に保持することを基本方針とします。
まず、フリーキャッシュフローの約3分の1を成長投資に配分します。人財獲得、能力開発や生産性向上施策に積極的に投資していきます。投資事業を持株会社に吸収し、財務インパクトをコントロールしながら、グループの事業成長に向けたM&Aやお客さまとの共同出資のための価値共創機能として活用します。
株主還元については、この度、配当性向目標を定めました。配当性向を徐々に引き上げ、2030年3月期の目標を50パーセントとし、自己株式取得とあわせてバランスの取れた還元を行っていきます。また、2030年3月期のROE目標水準を、これまでの30パーセントから35パーセントに引き上げることとしました。
新しい「ありたい姿」に向けて、人財が持つ価値を最大限引き出し、お客さまとの価値共創に力を注ぎ、グループ一同、全力で取り組んでいきます。引き続き、ご支援をよろしくお願いします。
質疑応答:2026年3月期の業績予想について
司会者:「2026年3月期の業績予想について、これまでの成長ペースに比べて保守的となっている理由は何でしょうか?」というご質問です。
太田:売上高について、ここ数年、外注費の増加に伴い急速に押し上げられてきました。2026年3月期における外注比率も2割程度と、前期と同水準となる見込みです。したがって、売上高の成長は、コンサルタント数の増加と生産性の向上によって実現していくことになります。稼働率の計画値を70パーセントに引き上げることで、売上高の成長率は14パーセントとしました。
一方、利益成長については、ここ数年、実績が計画を上回っている主要因は稼働率の増加にあります。2025年3月期の稼働率は70パーセントを大幅に超えましたが、当社としては、持続的な成長と足元のビジネスの両立を図る観点から、適正な稼働率は概ね70パーセントと考えています。この前提に基づき、事業計画を策定し、お客さまに提供する価値の向上と生産性の向上を通じて、利益成長20パーセントを目指していきます。
ただし、コンサルティング業界においても競争は激化しており、商圏をしっかりと獲得することが、足元のみならず将来のビジネスにとって重要なケースがあります。そのため、稼働率を一時的に引き上げてでもビジネスを獲得していく姿勢を維持しつつ、人財の採用や生産性の向上によって稼働率を適正水準へと近づけていくことを引き続き検討していきます。
質疑応答:採用方針について
司会者:「2030年3月期のコンサルタント数1,100人に向けて、これまでと採用方針に変更はあるのでしょうか?」というご質問です。
内山その氏(以下、内山):2030年3月期に向けた採用方針について、質を重視するという基本的な考え方はこれまでと変わりません。
ただし、これまでは毎年10パーセント程度の人数増を前提として採用を行ってきましたが、足元のお客さまからの強い需要や、「ありたい姿」に向けてさらなる成長を志向する中で、今後は12パーセント程度の増加を想定した採用計画としています。
採用の中心は、これまでと同様に優秀な新卒人財となりますが、これまで離職者の補充として位置づけていた経験者採用についても、今後は離職数を上回る水準で積極的に進め、全体としての人員増加のペースを引き上げていきたいと考えています。
質疑応答:配当性向について
司会者:「2030年3月期の配当性向50パーセントに向けて、配当性向を段階的に上げていく方針ですか?」というご質問です。
田端:2024年3月期までは稼いだ利益の約3分の1を配当に振り分ける方針で、配当性向は35パーセントでした。2025年3月期は40パーセントに上昇しております。2026年3月期の配当性向の見通しは44パーセント、年間配当金は1株当たり26円まで引き上げていく計画です。
配当性向を徐々に上げていき、2030年3月期までに配当性向50パーセントを達成するように進めてまいります。
質疑応答:投資事業停止の背景について
司会者:「投資事業を停止するとのことでしたが、その背景についてお聞かせください」というご質問です。
太田:2030年3月期「ありたい姿」に掲げた成長戦略の一つとして、「資本を活用した成長」に関してM&Aや業務提携に積極的に取り組んでいくことをお示ししました。この成長戦略の一環であること、また現在のグロース市場を取り巻く環境を踏まえ、投資事業を停止し、シグマクシス・インベストメントを持株会社に吸収合併することにしました。
今後は、財務インパクトを適切にコントロールしながら、投資事業を通じてこれまで培ってきた投資能力を、シグマクシス・グループの事業成長に資する価値共創機能として、持株会社において活用していく方針です。
質疑応答:投資事業における追加投資について
司会者:「投資事業については追加投資を行わない認識でよいでしょうか?」というご質問です。
太田:これまでシグマクシス・インベストメントで実施してきたような投資は追加では行いません。今後は、シグマクシス・グループの成長およびお客さまとのジョイントベンチャーなど価値共創に資するような案件について、投資を行っていきたいと考えています。
質疑応答:シグマクシス・インベストメントの保有有価証券について
司会者:「投資事業の停止に伴い追加の損失は発生しませんか?現在の保有有価証券はどのように取り扱う予定ですか?」というご質問です。
川澤琢也氏:完全子会社の吸収合併となるので、連結ベースの追加損失の発生は見込んでおりません。
シグマクシス・インベストメントが現在保有する株式等は、シグマクシス・ホールディングスの資産となります。今後、投資有価証券として闇雲に処分せず、収益が最大化するタイミングで適時適切に売却していくことを想定しています。
質疑応答:コンサルタントの稼働率について
司会者:「コンサルタントの稼働率はどの程度で推移していますか?」というご質問です。
田端:コンサルタントの稼働率は、2025年3月期は70パーセント台半ばで毎四半期推移していました。前年の2024年3月期は70パーセント程度だったため、5ポイント以上上がっています。
質疑応答:退職率について
司会者:「退職率の進捗はいかがですか?」というご質問です。
内山:事業計画上、退職率は10パーセント前後を想定しており、毎年その程度の退職率で推移しています。
質疑応答:「ありたい姿」の達成に必要なことについて
司会者:「『ありたい姿』で示している2030年3月期の業績予想について、達成するのに必要なことは何だと考えていますか?」というご質問です。
太田:まさに成長戦略で掲げた各項目は、その達成に不可欠であると考えています。まず「高付加価値化」では、お客さまに提供する価値を一層高めていきます。それに加え、生産性の向上も重要なテーマです。昨今話題となっている生成AIをはじめとしたテクノロジーの力も活用し、コンサルタントの生産性を引き上げていきます。
次に「顧客層の拡大」です。私たちはこれまで、主要なお客さまに注力する方針で事業を進めてきましたが、依然として当社がリーチできていない業界や企業は存在します。今後は、そうした新たな顧客層にもアクセスしていく必要があると考えています。
さらに「優位性のある成長分野の伸長」も重要です。SaaSやAIなどの領域は、企業における導入・活用が今後さらに拡大していくと見込まれます。生成AIはテクノロジーの進化が著しく、今後、具体的なビジネスへの適用が本格化していくと想定されます。こうした状況下において、私たちのようにお客さまのビジネスや業務を深く理解していることは、大きな優位性であると捉えています。社内にはSaaSやAIに関する高度な知見を持つコンサルタントが多く在籍しており、その知見を的確にビジネスへと結びつけていくことを考えています。
また「価値創造能力の向上」においては、価値を生み出す力を高めていきます。これまでの成長を支えてきたコンサルタント数の拡大に加え、一人ひとりの人財が持つ能力に着目し、その能力開発をさらに加速していきます。
あわせて、パートナー企業や外部人財など、社外の力も積極的にレバレッジしていくことが不可欠です。これからの時代、お客さまに高い価値を提供していくためには、自社の能力にとどまらず、外部の知見やリソースを柔軟に取り入れていく必要があります。
最後に、「資本を活用した成長」としては、M&Aや資本提携にも本格的に取り組んでいく方針です。
質疑応答:関税の影響について
司会者:「トランプ関税の影響はどのように出ると予想していますか?」というご質問です。
太田:企業のデジタル化が謳われて久しい中にあっても、日本企業の取り組みは依然として道半ばであり、この領域への投資には今後も十分な効果が見込まれると考えています。先行き不透明感を言及する企業も見られますが、私たちが取り組んでいるデジタル化を中心とした変革への投資意欲は、引き続き旺盛であると認識しています。
質疑応答:今期の計画前提について
司会者:「今期の会社計画の前提は稼働率70パーセント程度、採用計画は前期比12パーセント程度増のイメージでよいでしょうか?単価についてはどのように考えていますか?」というご質問です。
田端:そのとおりです。稼働率については、若手の稼働率の目標を高く設定しています。理由としては、若手は実際にお客さまに対してデリバリーを行うことによって学び、成長が早くなります。そのような意味で昨今、新卒採用をかなり増やしており、それに伴い加重平均した稼働率も上昇しています。
昨今のコンサルティング会社の採用競争を鑑み、若手および中堅の報酬レベルをある程度上げていく計画です。その上昇にあわせて、単価も上げていくことを考えています。
質疑応答:若手増加に伴う品質低下の懸念について
司会者:「若手増加に伴い、品質低下の懸念はありますか?」というご質問です。
内山:ここ数年、従来のペースを上回る人数で採用を進めていることは、スライドのグラフからもご覧いただけるかと思います。
私たちがこの方針に踏み切った背景には、2010年から新卒採用を開始し、設立から17年を経て、若手のポテンシャルを十分に引き出し、現場で活躍できる人財として育て上げる力を、当社が着実に確立してきたという自信があります。
過去に採用した若手たちは、現在では中堅として現場をリードし、次世代を育成する立場に成長しています。そのような好循環がすでに数年にわたり機能しており、「自信を持って若手を増やしていける段階に入った」と判断し、新卒採用を含めた採用数の拡大に踏み切っています。
こうした背景から、私たちは若手増加に対して懸念は抱いておりません。
太田氏からのご挨拶
太田:本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。私たちは先ほどお伝えしたとおり、今年度の通期業績予想を提示しております。今年度は、2022年8月に公表した「2026年3月期『ありたい姿』」の最終年度にあたります。
売上高については、すでに1年前倒しで目標を達成しております。また、経常利益70億円の目標に対しては、通期予想として70億6,000万円を掲げており、その達成に向けて邁進してまいります。
加えて本日新たに「2030年3月期『ありたい姿』」を公表いたしました。この「ありたい姿」に向けて、力強く第一歩を踏み出す1年としたいと考えております。
社員一同、お客さまの価値創造に引き続き真摯に取り組み、その結果として業績予想の数字目標の達成につなげてまいります。今後とも、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。