(株)オートサーバーの決算説明会書き起こし
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2024年12月期決算説明
上栁隆裕氏:本日は「株式会社オートサーバー」、2024年12月期決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。
本日は、当社の事業内容や事業領域、事業のつよみをご紹介し、2024年12月期の外部環境と、当社の業績をご説明します。あわせて、2025年12月期の当社の営業施策及び業績見通しについて説明します。
沿革・概要
はじめに、当社の会社概要と、事業内容を説明します。
当社は、1997年、普及が始まっていたインターネットという情報手段にチャンスを見出し、「中古車の流通をもっと円滑にし、在庫回転率を上げることにより、中古車販売業者に貢献したい」という想いで、ASNET事業を始めるべく、愛知県豊橋市にて創業しました。
立ち上げ当初は、利用者間での中古車在庫の売買を仲介する「ASワンプラ」サービスを手掛けていましたが、その後、オークション事業者との提携により、インターネット経由で中古車オークションに参加できる「オークション代行」サービスを開始しました。
これをきっかけに、プラットフォーム上に掲載する中古車情報を増やし、全国的にユーザー層を広げることに成功しました。今日では、インターネット中古車流通プラットフォームビジネスにおいて、最大の事業規模を誇るまでに事業を拡大させています。
当社が運営するASNET事業は、インターネットを用いたプラットフォームであり、より良いサービスづくりを行っていくためには、情報技術を発展させることが必要です。多くのユーザーを獲得し、掲載する中古車情報を増やすための営業活動も欠かせません。
このようなビジョンの下、有能な人材の確保、企業の知名度や信頼性の向上といった狙いにより、2023年9月、東証スタンダード市場、および名証メイン市場に上場しました。
現在は東京本社および愛知県豊橋市の本部を中心に、全国9営業拠点、1海外開発拠点、社員113名にて、事業を運営しています。
事業内容
当社の事業をご紹介します。
当社は、BtoB中古車ECプラットフォーム「ASNET」を運営する、単一セグメントの企業です。
当社は、ASNETを通じて、売りやすい、買いやすい、安心便利な中古車流通サービスを提供すること、中古車の流通をスムーズにすることで、ASNETをご利用いただく中古車取扱事業者様に貢献し、ひいては循環型社会の実現など、社会全般に貢献することが使命と考えています。
ASNETでは主に2つのサービスを提供しています。1つ目はオークション代行サービス、2つめはASワンプラサービスです。
また、この他に、さまざまな付帯サービスや、スマートフォンアプリも開発・提供しています。
ASNET事業領域(中古車の業者間流通の一般的なすがた)
ASNETをとりまく事業環境について、説明します。
わが国の中古車流通は、オークションという取引の場が中心となって循環しています。ASNETは、このような流通構造の中に位置しています。
業者間マーケットにはさまざまなプレーヤーが存在します。たとえば、新車ディーラーは、新車販売時に消費者から下取りした中古車を、オークション会場へ持ち込んで売却しています。
中古車販売業者は、オークション会場で仕入を行い、店舗へ輸送、展示して小売します。売れ残りが発生しますので、これらをオークション会場へ持ち込んで売却しています。
輸出業者は、オークション会場で仕入れを行い、海外へ販売しています。このように、全国各地に存在する中古車オークションが中心となって、流通網が形成されていることが、わが国の中古車流通のすがたです。
このような事業領域において、ASNETは、中古車事業者に、どのような価値を提供し、なぜ支持されるのでしょうか?
オークション代行サービス
オークション代行サービスの概要を説明します。
オークション代行サービスとは、国内146のオークション会場と提携し、「ASNETの会員になれば、どのオークションにも参加できるようになる」サービスです。
2024年において、国内の中古車オークションに出品される情報のうち96パーセントもの情報を受信し、ASNETに掲載しています。
競合他社が数社、存在しますが、当社のオークション代行サービスは、国内最大手オークション事業者である株式会社ユー・エス・エスが唯一提携している外部サービスです。そのため、96パーセントという高いカバー率を誇っていることが、このサービスの強みです。
オークション代行サービスが提供する価値
オークション代行サービスは、どのような価値を提供しているのでしょうか?
中古車オークションは各地に存在しますが、いずれも、オークションに参加するための入会金や月会費が必要となります。またオークションごとに、中古車の検索をし、実際に取引に参加した場合、会場ごとに決済が必要となります。
さらに、現に存在する場所において取引が行われるため、遠隔地のオークションに参加しづらい、といった物理的な制約も考えられます。
このように、オークション取引は中古車流通の中心である一方で、費用的な、あるいは物理的な「カベ」が存在します。オークション代行サービスは、この「カベ」を解消することで、中古車事業者のオークション取引をサポートします。
たとえば、ASNETから全国のオークション情報を横断的に検索し、どの会場にも取引に参加できるメリットを提供します。また、決済の一本化、固定費を不要とするメリットも提供します。
オークション事業者に対しても、遠隔地や小規模な中古車事業者のオークション参加を促し、オークションの魅力向上、というメリットを提供します。
ASワンプラサービス
次に、ASワンプラサービスについて説明します。ASワンプラサービスとは、当社が主体となってASNET上で運営されている中古車マーケットです。
ASワンプラは、オークションで一般的に行われている「セリ方式」による取引方法を採用せず、「固定価格」つまり「ワンプライス」で取引できる点が特徴です。
近年、中古車販売事業者は、キャッシュフローの向上や在庫リスクの抑制が求められています。また中古車の無在庫販売のニーズも強くなっています。
ASワンプラサービスは、このようなニーズと結びつき、大きく成長しています。同業他社もサービス参入していますが、当社は安心して取引できるルールをいち早く確立し、最大規模のマーケットを築いています。
ASワンプラサービスが提供する価値
オークション取引が主流の世界において、なぜASワンプラサービスは、支持を得ることに成功しているのでしょうか?
まずご理解いただきたい点は、ASワンプラは、オークションを代替するものではなく、オークションをおぎなう「新たな取引スタイル」として、中古車流通を円滑化しているものである、という点です。
具体的に説明します。
中古車販売事業者は、これまで、オークションで仕入れた在庫が売れ残った場合、オークションで在庫処分していました。
ASワンプラは、このような事業者に対し、小売しながら業販できる、「販路拡大」という選択肢を提供します。
一方、買い手はどうでしょうか?
従来、中古車の仕入はオークション取引がメインでした。しかし、中古車オークションは、オークション直前に出品情報が公開されるため、クルマ探し、クルマ選びをする時間が限られています。
また、取引の際は「セリ方式」で値段がセリ上がるため、仕入れ価格が固定できません。いうなれば、オークション取引は、仕入れに長けたプロ向けのマーケットといえます。
そのため、中古車販売が主業ではない、仕入れに慣れていない方には、使いづらい面もあります。
一方、ASワンプラは、あらかじめ取引価格が固定されており、出品情報も、長時間、公開されていますので、じっくりとクルマを選び、お客さまからオーダーをいただいた後に仕入れをすることができます。
そのため、中古車販売において在庫リスクを抑えたい事業者にとって、ASワンプラは非常に親和性が高いものとなっています。
ASNET収益構造
ASNET事業の主な収益源は、ご説明した2つのサービスにおいて、取引の都度、ユーザーから受領する手数料です。それ以外のコスト、たとえば入会金や月会費などは不要としています。
スライドにおいて、モデルケースでの収益を説明します。
オークション代行サービスにおいては、ASNET会員による落札の都度、1台あたり約20,000円の手数料を受領し、このうち約10,000円をオークション会場に支払います。従って、1台あたりの利益は10,000円となります。
なお、この金額は、あるオークション会場を利用した場合のケースであり、実際の手数料額についてはオークション会場毎に異なります。
一方、ASワンプラサービスにおいては、ASNET会員間の売買の都度、買い手からは20,000円、売り手からも15,000円の手数料を受領します。そのため、1台あたりの利益は35,000円となります。
このように、ASワンプラサービスは1台あたりの収益が非常に高いサービスとなっています。
ASNET事業の特徴・つよみ①
ここからはASNET事業の特徴やつよみについて説明します。
ASNET事業の特徴、その1つ目は「サービス構成」です。
中古車流通は、数量や価格が変化しますが、当社の業績は安定的に成長しています。この理由の1つは、「サービス構成」にあります。
スライドのグラフは、「オークション代行サービス」と「ASワンプラ」の取引実績の前年比です。ご覧のとおり、2つのグラフの増減は逆相関にあります。
なぜこのようなことになるのか?理由として考えられるのは、中古車事業者が中古車を仕入れる時は、その時点の「オークション相場」が目安となるため、オークション相場で中古車を仕入れた後のオークション価格が上がるか、下がるかによって、どちらのサービスが割安になるかが分かれ、結果、2つのサービスの使い分けが起こる、ということです。
このように、中古車相場が変動しても、2つのサービスのいずれかを使っていただき、安定的な業績となることが当社の強みの1つです。
ASNET事業の特徴・つよみ②
ASNET事業の特徴、2つめは「ユーザー層の厚み」です。
国内には、15万強の中古車関連事業所が存在する、と言われていますが、そのうち8万を超える会員を獲得できています。なおかつ、業種は多岐にわたっています。
会員毎の取引規模も、毎月10台以上の取引をする大手ユーザーから小口ユーザーまで、さまざまですが、月間取引台数が2台以下のライトユーザーが約80パーセントを占めています。
このように、多数の、多種多様な業種の、小口ユーザーが多いため、利用機会の平準化が図れており、安定的な事業運営が可能となっていることが、特徴です。
ASNET事業の特徴・つよみ③
ASNET事業の特徴、3つ目は「安定・堅実な成長」です。
先のスライドの通り、2つのサービス構成と、ユーザー数が多いこと、これが当社の安定業績の「基盤」となっています。
さらに当社は、ユーザー数の継続的な拡大や、ASNETサービス改良などによる「成長のための取り組み」を図っています。
このような「基盤」と「成長要因」が組み合わさることで、当社は、業績を堅実に成長させることに成功しています。
ASNET事業の特徴・つよみ④
ASNET事業の特徴、4つめは「業界内でのポジションの確立」と「参入障壁の高さ」です。
スライドの左側には、当社を含む同業他社を、それぞれの事業者の属性と提供サービスをマトリックスにして示しています。
類似事業のうち、当社以外の事業者は、すべて、オークション運営事業者が母体となっています。
この事業領域においては、ユーザー獲得のための営業コスト、オークション会場との接続に要する開発コストを考慮すると、新規参入は非常に難しいと考えられます。運営母体の属性からも、このことが示されています。
次に、当社のオークション代行サービスは、ユー・エス・エス社との提携により、多数の出品情報を掲載していることがつよみですが、同業他社のうち、ユー・エス・エス社との提携を実現している会社はありません。
なぜなら、同業他社はいずれも運営母体がオークション事業者であり、ユー・エス・エス社とは競合関係にあるからです。このような競合との関係は、サービス利用者や掲載台数の多寡にも表れています。
スライドの右側には、それぞれのサービスの概要を示していますが、当社のASNETは、掲載台数、ユーザー数、いずれも同業他社との比較において優位となっていることが分かると思います。
2024年12月期 通期決算ダイジェスト①
2024年12月期の決算ダイジェストです。
2024年12月期は、中古車流通が横ばいで推移し、かつ不安定な状況にありましたが、当社は、これまで積み上げてきたユーザーによる利用実績に加え、新たな営業施策も奏功し、売上高は62億8700万円と、過去最高を達成することができました。
また高収益サービスである「ASワンプラ」の利用実績が増加したことにより、経常利益は24億8500万円、前期比プラス19.2パーセント、当期利益は15億6200万円、前期比プラス20パーセントと大きな成長を遂げ、過去最高を達成することができました。
2024年12月期 通期決算ダイジェスト②
ASNET事業の業績を振り返ります。
ASNET全体の取引台数は、これまで獲得してきたユーザーが、引き続きASNETをご利用いただいたことに加え、新たなユーザーの獲得も順調であったこともあり、取引台数は23万4774台、前年比6601台アップとなりました。
サービス毎に見てみます。
オークション代行サービスについては、ASNETに掲載したオークション出品データが前年比で7.3パーセントダウン、つまりオークション会場で出品された中古車が減少する厳しい外部環境にありましたが、当社のオークション代行サービスは、5.5パーセントダウンに収まっています。
ASワンプラサービスについては、中古車価格が上昇した状況において利用意向が高まったこと、オークションでの仕入れが困難となった影響が波及し、取引台数は98,893台、過去最高台数となりました。
中古車流通が横ばいで推移した中、当社の取引実績は順調に増加していることから、「中古車流通に対するASNET関与率」は、3.61パーセントに成長させることができています。
参考 2024年12月期 業績見通しの推移
参考として、2024年12月期の業績見通しの推移について、過去2期の実績、当初計画値、修正計画値、最終着地を比較して掲載しています。
事業環境
続きまして、当社を取り巻く外部環境と、2024年12月期の振り返りです。
外部環境について振り返ります。まず新車販売台数です。水色のラインで示しています。2024年の新車販売は、認証不正事件や、生産停止の影響で1月から3月は大きく前年割れすることとなりました。4月以降はやや回復しましたが、トータルでは前年比マイナス7.5パーセントとなっています。
中古車流通はブルーのラインをご覧ください。2024年は、3月以降、新車不足の影響で前年割れし、その後は不安定な状況が続いています。
続いてグレーの点線で価格を示しています。中古車価格は2024年に入ってからは再び価格が高騰しています。
参考として、スライドの左下に、コロナ禍前後の比較を記載しています。新車の販売は、5年前からマイナス15パーセントと、コロナ後も回復には至っていないことが、この数値からも伺われます。中古車も回復はしていませんが、新車に比べた減少幅は半分です。
この数値だけで確たることは言えませんが、自動車販売において、従来よりも中古車の割合が増えている可能性もあると思われます。
事業環境(中古車オークション市場の状況)
中古車の業者間マーケットの状況をもう少し詳しく見てみます。
スライドは、中古車のオークション出品台数を示したグラフです。2024年に入ってからは、前年割れが続き、10月から12月にようやく回復しましたが、年間ではマイナス7.3パーセントという結果になりました。
サービス別取引台数
このような環境下において、主要2サービスの取引台数がどのように推移したのかをグラフに示しています。
グレーのラインは、「過去の平均値」です。薄いカラーのラインは、「2023年の台数」です。そして、濃いカラーのラインは、「2024年の台数」です。
当社は、事業見通しを作成する際、過去の平均値を参照しながら計画を作成しています。したがって、グレーの線をベンチマークとしますと、当社の見通しに対する理解が深まるかと思います。
まず、オークション代行サービスについて見てみます。2024年のオークション代行サービスは、オークション出品台数の減少に伴って取引台数が減少していますが、第3四半期以降は徐々に回復していることが分かると思います。
次にASワンプラサービスです。2024年は、上期は過去平均・前年を大きく上回って推移していることが分かると思います。
その後は落ち着いた推移となりましたが、いずれの月でも過去平均を上回って推移しており、中古車流通においてASワンプラサービスがポジションを確立していると考えられます。
2024.12期の施策事例①
2024年12月期には、さまざまな施策を展開しましたが、そのうちのいくつかをピックアップしてご紹介します。
1つ目は、大手輸出事業者と、ASワンプラサービス分野において提携を行いました。これは、ASワンプラサービスと輸出事業者さまのECサイトを連携させ、過去最高レベルとなっている日本車の輸出需要を、ASワンプラサービスに取り込む狙いです。
右側では、金融支援サービスの取り組みとして、クレジットサービス「のるmycar」のリリースを行いました。これは、株式会社アプラスと提携し、ASNETの小売支援ツール「店頭商談NET」からオートクレジットサービスの審査や申し込みができるようにするものです。
また中古車販売店の店頭在庫の商談時にもローンサービスを使えるようになります。ASNET会員の中古車販売を支援することにより、ASNETの取引実績の拡大を図ると共に、ユーザーの囲い込みを狙うものです。
2024.12期の施策事例②
続いての事例は、AI出品機能の開発です。
ASワンプラサービスでは、WEB上で操作する「かんたん入力」や、スマホアプリで操作する「かんたん入力アプリ」を提供しており、ASNET会員はこれらを通じてASワンプラに店頭在庫の登録、出品作業を行っていただいています。
登録作業には、文字情報の登録に加え、最大で50枚の写真を登録していただけることとなっていますが、多数の中古車を保有する中古車販売店にとっては、これらの作業工数は決して無視できるものではありません。
当社は、従来から車販システムとのデータ連携など、DX促進と、データ登録作業の省力化によってASワンプラマーケットの拡大に努めてまいりました。
今回リリースしたAI出品機能は、PC上に保存された最大50枚の画像を、AIが自動で認識し、適切な順序に並び替えた上で、「かんたん入力」に登録できるという機能です。これにより、さらなるASワンプラマーケットの拡大を狙います。
また、右側には、昨年10月に実施した当社の本社移転を記載しています。
従来、当社は東京都中央区の晴海地区に本社を構えていましたが、オフィス環境の整理、生産性向上や働きやすさ向上、採用強化など、さまざまな狙いを持ち、中央区日本橋室町地区に移転しました。移転後には、採用への応募数が増加する等、移転効果が着実に表れているものと思われます。
売上高・利益
財務成績についてご説明します。
2024年12月期は、売上高は62億8700万円と、過去最高を達成することができました。
また高収益サービスである「ASワンプラ」の利用実績が増加したことにより、経常利益は24億8,500万円、当期利益も15億6,200万円と、過去最高を達成することができました。
この結果、売上高経常利益率は39.5パーセントとなっています。
貸借対照表の概要
当社の貸借対照表の概要です。
当社の貸借対照表には、未収入金・未払金が大きいという特徴があります。これは「立替金需要」によるものであり、実質的には財務的な影響はありません。
立替金需要とは、ASNET会員が車両を落札した場合、当社は車両代金等をオークション会場やASワンプラサービスの出品者に立て替え払いした後、落札者から支払いを受けることがあり、その間、一時的な立て替えを行うために必要な資金です。
この金額は、取引台数の増加や、中古車価格の高騰により、年々増加する傾向にあり、現状では80億円程度の金額が運転資金として必要となっています。
また、BCP対策の一環として愛知県豊橋地区に、新たなデータセンターの構築を進めており、これが固定資産に計上されています。
その他には特段の変化はなく、安定したキャッシュフローの下、獲得した利益が現金資産として加算され、堅実な財務構成となっています。
配当状況
株主還元についてご説明します。
当社は、期末時点の株式数をベースに、配当性向30パーセントという基本方針のもと、安定的な配当を目指すことを株主への還元施策としています。
2024年度の配当額については、前期の通常配と比較してプラス10円、通常配66円とさせていただく予定です。
社会課題と成長可能性
成長戦略について説明します。
中古車流通を取り巻く社会課題や、それを踏まえた当社の成長可能性をご説明します。物流キャパシティー不足により、中古車流通においても、輸送日数の増加等の影響が生じています。今後は、ASワンプラのような、売り手から買い手へダイレクトに中古車を輸送することに対するニーズが高まると思われます。
中古車流通マーケット内では、中古車取扱事業への参入プレーヤーの増加も考えられます。
中古車全体では、2024年10月から始まったOBD車検により、徐々にではありますが、検査情報の電子化が進んでいます。中古車流通への波及はこれからですが、今後のEC取引の拡大のきっかけになると考えています。
一方、社会全体をみれば、国民の実質収入が伸び悩む中で、新車の価格が高騰しています。また、価格だけではなく、新車供給についても、自動車メーカーによる安定供給に対する懸念もあります。
これに伴い、中古車マーケット自体が拡大する可能性もあります。
成長戦略のイメージ
当社の成長戦略の概略を、3つのステージに分けて説明します。
まず、中短期においては、「取引台数の拡大」と「手数料単価のUP」による収益拡大を計画しています。なお手数料単価のUPについては、手数料の値上げによるものよりも、むしろ、高収益サービスであるASワンプラサービスの比率を高めることで果たしたい、と考えています。
つぎに、長期戦略においては、国内の中古車流通におけるASNETの関与率をもっと伸ばすことを計画しています。これについては次のスライドにてご説明します。
さらに長期的な展望としては、新たな取引サービスの開発や、海外展開、あるいはM&Aの検討も考えられます。
ただし、M&Aについては、当社の事業領域や、当社の置かれた状況等に鑑みて、案件ごとに慎重に検討する方針としています。そのため、M&Aを計画に盛り込む、あるいはM&Aの目標は設定していません。
ASNETの存在感は着実に高まっている
「中古車流通におけるASNETの関与率」について、さらにご説明します。
スライドのグラフは、国内の中古車流通において、ASNETがどの程度の関与をしているかを示したものです。
中古車の流通は、自動車税の年度更新となる3月や4月に多くなる、といった季節変動や、コロナ禍における一時的な変動等がありましたが、中古車流通においてASNETが関与した率は、一貫して伸びていることがわかります。
この理由は、当社がASNETユーザーを獲得していること、既存ユーザーによるASNET利用頻度が向上していることによるものです。
このように、中古車流通において、ASNETの存在感は着実に高まっています。当社は、この関与率を、まずは10パーセント程度までは高めたいと考えています。
ASNET事業の成長余地
当社が経営資源をASNET事業の成長に投下する理由を、成長余地の視点からご説明します。
先ほどのスライドで、中古車流通におけるASNETの関与率は3.61パーセントと述べました。一方、国内におけるBtoB取引において、EC取引の普及率は2022年において37.5パーセントという経済産業省のレポートがあります。
この調査結果などを参考にしますと、国内の中古車市場において、BtoB取引は、もっとEC化が進むと期待できます。これが、当社が、中短期戦略として、ASNET事業の拡大を掲げている理由となります。
ASNET会員の「仕入/販売/業務」を支えASNETの利用機会拡大をはかる
具体的に、どのようにして関与率を上昇させるのでしょうか?
ASNET事業はプラットフォームビジネスであり、多くの方に集まっていただくことに加え、繰り返しASNETを使っていただくこともポイントだと考えています。実は、ASNETは、2つの取引サービスを提供しているだけでなく、それを支えるさまざまなサービスや機能も提供しています。
たとえば、仕入面では、2つのサービス以外にも、情報提供サービスや、金融支援サービスを展開しています。また小売面では、小売システムのOEM提供を通じて、仕入れから販売までをトータルにサポートする仕組みを整えています。
このように、当社はASNET単一セグメントの企業ではありますが、ASNET上に新機能を開発したり、新たなサービスを提供することで、まだまだこのセグメントの拡大ができると考えています。
2025.12期の主な営業施策
最後に、2025年12月期の、当社の重点施策、業績見通しについてです。
これまでご説明したような成長戦略に基づき、当社は、今期もさまざまな営業施策を講じることとしています。
たとえば、「ASNETの魅力を向上させる取り組み」としては、小売支援サービスの強化や、新たな提携の取り組みなどを計画しています。
またASNETの利便性向上にも引き続き取り組むこととしており、ASワンプラサービス拡大のための機能改良も行っていきたいと考えています。
さらに、今期は、企業力強化のうちBCP対策として、新データセンター稼働を予定しており、ASNETの安定稼働力を向上させることとしています。
2025年12月期 業績見通し
2025年12月期の業績見通しです。
今期は、オークション取引環境が前年より回復する見込みの下、ASNET会員の獲得活動などにも努めることとしています。
その結果、ASNETにおける取引台数は24万1,837台、前年比プラス3パーセントを計画しています。
売上高については、取引台数の成長によって、通期では64億8,900万円、前年比プラス3.2パーセントを計画しています。
一方、経常利益については、23億8,400万円、前年比マイナス4.1パーセントの計画となっています。
減益計画としている大きな理由は、将来の成長のための設備投資、具体的にはBCP対策やサーバー能力向上のために、新データセンターの構築を行うため、一時的な費用が発生するためです。
ASNETの2つのサービスのうち、高収益サービスであるASワンプラの利用比率が平年並みに落ち着くこと、つまり前年よりは利用比率が下がる見通しであることもやや影響しますが、最も大きな理由は設備投資によるものです。
このように若干の減益を計画していますが、配当については、減益の理由が一過性の費用であることから、1株当たり66円、2024年12月期と同額に据え置いた配当を予定しています。
今期の期中平均株式数の見通しをベースに計算した配当性向は、31.2パーセントとなります。また、今回の決算より、配当方針に「前年度実績以上を維持しつつ」という方針を追加させていただきました。
将来企業価値のイメージ
今期の業績見通しを踏まえ、スライドにおいて、当社の将来的な企業価値のイメージを示しています。
グラフは、2020年から2024年の実績と今期の見通しに加え、将来的な売上高と利益高のイメージを示しています。
事業をとりまく様々なリスク、たとえば中古車流通市場が変動する、あるいは事業領域への新規参入リスクも限定的である、なども考慮しながら、当社は、ASNET事業を継続的に成長させ、中長期的に企業価値の向上を図りたいと考えています。
ご説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:1月の月次決算が好調だった要因について
「1月の月次決算が好調でしたが、理由はどのようなものですか?」というご質問です。
トレンドとしては、基本的にオークションの取引が非常に好調です。12月と11月の流れを受けて、1月のオークションが好調でした。また、これまではこの時期は「ASワンプラ」が落ち込んでしまう流れがありましたが、1月は意外と「ASワンプラ」も踏ん張ったため、好調になったと考えています。
質疑応答:今後の業務提携について
「昨年は『ASワンプラ』の提携が複数行われたのですが、下半期はありませんでした。今後はどうなりますか?」というご質問です。
当社は「ASワンプラ」に限らず、さまざまな提携を実施しています。たまたま昨年の下半期にはありませんでしたが、現在も提携することでどのようなシステム開発ができるのかといった話は、水面下で行われています。先方とのお話やシステム開発の内容等、現時点ではまだ開示できる段階ではないのですが、今後リリースできるタイミングになれば、その都度、開示していく予定です。
質疑応答:「ASワンプラ」のクレーム発生率と対策について
「『ASワンプラ』のクレームの発生率はどの程度ですか?クレーム率を下げるためにどのような対策を取っていますか?」というご質問です。
具体的な発生率はこの場でご回答できないのですが、一定程度のクレームは絶対に発生してしまいます。過去10年を見ても、クレームがゼロになることはありませんでした。
私どもも、クレームの発生については、そのままでよいとは思っていないため、構造的にクレーム発生率を下げる努力をしています。
例えば、当社の「ASワンプラ」は、オークションと同様、BtoBの取引となっています。BtoBの取引においては規約やルールが重要になりますが、このようなルールが十分に認識されないまま取引が行われ、トラブルが発生することがあります。そのため、ルールをその都度わかりやすくご説明していくことが、クレーム発生を防ぐ上で大切なことの1つだと考えています。
加えて、何度も同じクレームを発生させてしまう売り手に対しては、定期的に営業訪問を実施したり、出品のどこがいけないのか、指導を行ったりします。何度指導しても改善されない場合には、出品を取り消します。最悪の場合には「ASNET」から退会していただくことで、不良出品店を排除する働きかけも行っています。
一方で、たくさん車を販売しているものの、クレームが少ない優良出品店を表彰する制度が当社にはあります。実はこの制度が、大手出品店や販売店から非常に評価されています。「ASNET」上でランキングを作成し、優良店のマーキングをするのですが、このマークを付けたいといった希望により、クレームを減らす努力をされている販売店が非常に多いのが実情です。
しかしながら、このような努力をしていても、クレームが発生してしまうことはあります。それは仕方のないことですので、そのような場合には、いかに丁寧に対応するかが、私どものできることだと思っています。
とはいっても、最終的には規約に沿って処理することがプラットフォーマーとしての宿命ですので、お取引における規約をいかにご理解いただけるか、ここに尽きると思っています。
質疑応答:「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の公表予定について
「『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』の開示が求められていますが、東証が発表した資料によると、御社は検討中になっています。いつ公表するご予定でしょうか?」というご質問です。
一斉に開示するものではないと思いますが、内容によって検討を進めているものと、検討がなかなか進んでいないものがあります。具体的な公表の時期はまだ決まっていません。
質疑応答:「ASワンプラ」に導入したAIツールの今後の展開について
「『ASワンプラ』に導入したAIツールは、今後も他のツールに展開していく予定ですか?」というご質問です。
これはAIが入り込める余地がどこにあるのか、そして私どもがノウハウを持っているかどうかによると思います。今回はAIのノウハウを写真の並び替えと画像認識に取り入れましたが、現在、文字認識の分野でも開発中ですので、今後はそのような領域にAIを積極的に導入していきたいと考えています。
質疑応答:データセンターの構築にかかる費用について
「データセンターを構築する費用はどれくらいかかるのでしょうか?費用は削減できるのでしょうか?」というご質問です。
現在建設中のデータセンターは、2025年の夏頃に竣工する見込みです。私どもは愛知県や東京にデータセンターがありますが、新しいデータセンターが稼働するようになると、愛知県にある複数の拠点を統合することができ、管理機能の強化や費用の削減が見込めます。
一方で、データセンターを建設することで、建物の減価償却費や光熱費がかかってきます。その塩梅で費用が削減できるかというとそうではなく、費用はとんとんぐらいで、BCP対策が強化できるようになると見込んでいます。
質疑応答:「ASワンプラ」が好調の要因について
「今期の『ASワンプラ』の好調は、オークション台数が減った逆相関によるものなのか、それとも『ASワンプラ』自体の魅力が上がっているのか、どちらに手応えを感じていらっしゃいますか?」というご質問です。
どこまでがオークションの影響で、どこまでが「ASワンプラ」自体の魅力なのかは数字でお出しできないのですが、感触としては、半々ぐらいだと考えています。
オークションが減って、オークションで仕入れられない方々が、「ASワンプラ」で仕入れているという声も聞きます。「今まではオークションメインで仕入れていたけれども、これからは『ASワンプラ』で積極的に仕入れたい」とおっしゃる方もいます。その声が全体のどの程度を汲んでいるかにもよりますが、私としては本当に半々ぐらいだと思います。
「ASワンプラ」自体の魅力も底上げされていて、オークションの影響もあったことが、昨年の「ASワンプラ」の好調の理由だったと思っています。
質疑応答:同業他社と比べてPERやPBRが低い理由と株主還元の強化について
「同業他社のユー・エス・エスやオークネットに比べて、PERやPBRが低い理由はどこにあると思いますか?株主還元をより強化することは検討されていますか?」というご質問です。
PBRとPERは、当然、株価に非常にヒットするものですから、要は株価についてのご質問だと思います。私どもは、配当のところで、今回新たな考え方を1つ示しました。株主還元については、業績をどのように伸ばし、それによって配当をどのように伸ばすのか、というところが、まず1つの大きな考え方だと思っています。
従来から、「株主優待を行ってほしい」「自社株買いはどうなっているのか」といったご意見をいろいろといただいています。選択肢の1つとして排除はしていませんが、まずは業績を伸ばして、配当額をどのように伸ばしていくのか、といったところが、第一優先だと考えています。
自社株買いや優待は、いろいろと検討する候補の1つではありますが、今時点では行う予定はありません。
質疑応答:データセンターの費用の発生の仕方について
「データセンターのための費用は、今期だけの費用で来期以降はかからないのでしょうか?」というご質問です。
基本的には、費用は一過性で大きく発生します。固定資産にならない小型の什器や器具、備品を今期に大量に買わなければいけないためです。この費用が非常に大きくなります。
その後は、減価償却費は増えますが、これまで外部のデータセンターを使っていた分の費用が浮きます。それで相殺し合うか、プラスになるかということなので、費用が大きくかかるのは、基本的に今期だけだと考えています。
例えば、データセンターのサーバーを入れ替える、サーバーを増やすというのは、新データセンターがあろうとなかろうと、当然、今後も発生するものです。新しいデータセンターに限って言うと、一時的に発生する費用は、初回が一番大きいとお考えください。
質疑応答:2025年の計画を保守的に見込んでいるのかどうかについて
「計画に対して業績が上振れる傾向にあると思いますが、今期2025年の計画についても保守的に見込んでいるのでしょうか?」というご質問です。
実際に過去に2年連続で、私どもは上方修正をしているので、「そもそも最初に出す数字が保守的すぎるのではないか?」といったご意見をいただくことも少なくありません。保守的に数字を出すのが好きなわけではなく、これには理由があります。私どもの事業は、中古車流通がどうなるかによって非常に影響を受けやすい傾向があります。
台数が増えるのか減るのか、といったところもありますし、2つのサービスの利用割合が変わることもあります。例えば「ASワンプラ」の利用比率が大きく上がる、あるいはオークションの相場が来年はこうなる、ということを、計画を出す際に論理的に見込むことがあまりできません。
その状況で計画を立てる根拠にするのは、過去数年の平均値です。「会員数は伸ばせるだろうから、台数も一定程度は伸ばせるだろう」というような計画はあります。しかし、その台数の内訳については、過去の平均値を用いらざるを得ません。それが、結果的に保守的になってしまっている理由だとご理解ください。
今年2025年の計画もあえて保守的に見込んでいるわけではなく、過去の平均値を用いています。会員増によって台数はこの程度伸びるだろう、という見込みの下で立てています。
「オークション代行」と「ASワンプラ」の比率を過去の実績に基づいて出した結果、売上は若干伸びますが、利益は若干減少します。さらにデータセンターの費用がかかるため減益になる、というものを結果として出している状態です。
質疑応答:2025年のBCP対策の一時的な費用について
「2025年の減益に関して、BCP対策の一時的な費用というのはおおよそどの程度ですか?」というご質問です。
昨年の販管費と今年の販管費の差について、今具体的な数字を出すことができず、申し訳ありません。増加している販管費の半分は、台数が増えることによる流動費用です。
残りのその半分がBCP対策の強化による費用です。最後の残りの半分は、システムの開発に伴って増える償却費です。そのため、BCP対策による一時的な費用は、減益の理由の約半分だとお考えください。
質疑応答:株主の期待収益率もしくは株主資本コストの割合について
「株主の期待収益率もしくは株主資本コストは何パーセントと考えていますか?」というご質問です。
今、私の手元に数字がないため、この場でご紹介することができず申し訳ありません。今後のIRの中で、例えばROICが何パーセントだといった数字を出していきます。
質疑応答:昨年の中古自動車販売店の不正の影響について
「昨年の中古自動車販売店の不正の影響は何かありましたか?」というご質問です。
一昨年はビッグモーターという大きな会社による事件があり、昨年も名古屋のとある会社で同様のことがありました。ビッグモーターの時もそうでしたが、現状、私どもには何の影響もありません。
なぜかというと、私どもには多数の中古車販売店に参加していただいているからです。当然ビッグモーターも、昨年不正を行った名古屋の会社も大きな会社ですが、私どもと直接取引いただく台数や、私どものプラットフォームを使っていただく台数というのは、全体の中のごくわずかです。
そのため、その2社が不正をしても、私どもの業績に与える影響は、非常に小さくなります。流通全体に関しても、ビッグモーターの時も昨年も、何の影響も出ていません。ごく一部の業者の不祥事で終わっているため、流通にも特に大きな影響はないと考えています。