重要ポイント
- 2026年3月期は、システム構築の伸長と採算改善により増収増益を達成
- 新中期経営計画では100億円規模の投資により企業価値向上とPBR改善へ
- 2027年3月期は増収を見込む一方、先行投資の拡大により小幅増益を見込む
- DOEを新たな指標として導入し、株主還元の強化を進める
要約
2029年3月期にPBR1.0倍以上、2032年3月期にROE8.0%を目標に掲げる
さくらケーシーエス<4761>は、三井住友フィナンシャルグループ<8316>(以下、SMBCグループ)の総合情報サービス会社である。1969年に神戸で計算センターとして設立され、システム構築やデータセンターサービスへ事業領域を拡大してきた。神戸と東京に本社を置き、金融・公共・民間企業向けにシステム開発・運用、セキュリティ対策、BPOなどを提供している。SMBCグループの一員としての安定した経営基盤と、富士通<6702>のコアパートナーとしての高度な技術力を併せ持つ。創業以来、金融・公共・産業の各分野で培った業務知識、システム開発・運用力を強みとしている。
1. 2026年3月期業績と前中期経営計画の評価
「中期経営計画2023-2025」(2024年3月期〜2026年3月期、以下、前中期経営計画)の最終年度である2026年3月期業績は、売上高23,790百万円(前期比5.6%増)、営業利益1,404百万円(同1.9%増)、経常利益1,605百万円(同7.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,224百万円(同6.9%増)となった。金融・公共・産業の各部門で収益性改善が進んだことにより、経常利益は2期連続、親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続で上場来最高益を更新した。前中期経営計画では売上高目標こそ未達となったものの、営業利益やROEは計画を上回り、株主還元も当初の目安を超える水準となったため、収益力と資本効率の面では一定程度の成果を上げたと評価できる。一方、ROEは中長期目標の8.0%に届かず、PBRも1.0倍を下回ることから、資本効率改善と企業価値向上が引き続き課題となっている。
2. 新中期経営計画における成長投資と企業価値向上策
前中期経営計画の評価を踏まえ、「中期経営計画2026-2028」(2027年3月期〜2029年3月期、以下、新中期経営計画)では、AI利活用を前提とした事業ポートフォリオの変革と人的資本経営の進化を進める。企業価値向上を重要経営課題と位置付け、ROE(2032年3月期に8.0%以上)とPBR(2029年3月期に1.0倍以上)の達成を重要目標として掲げた。また、同社は2024年4月の加藤貴紀(かとうたかのり)社長就任以降、経営改革を加速させている。CTO(最高技術責任者)、CAXO(最高AI変革責任者)、CISO(最高情報セキュリティ責任者)を新設し、技術戦略・AI変革・情報セキュリティを横断的に統括する体制を整備したほか、IR活動や株主還元方針も投資家視点を重視する方向へ転換し、資本効率や株価を意識した経営姿勢を鮮明にしている。こうした経営改革の下、新中期経営計画では3ヶ年で100億円の成長・基盤投資を実施する。SMBCグループ向け「開発内製化支援ビジネス」に加え、「ソリューションビジネス」「セキュリティ・デジタル基盤ビジネス」を重点領域とし、事業ポートフォリオの変革を進める。同計画は、「2035年にめざす姿」※の実現に向けた第一のフェーズとして位置付けられ、2029年3月期には、売上高280.0億円、営業利益19.0億円、営業利益率6.8%、ROE6.4%、DOE3.5〜4.0%を目指す。
※ 社会や顧客ビジネスの発展に貢献する高付加価値ソリューションの提供を通じた高い収益力の獲得と企業価値の向上により、ステークホルダーからの揺るぎない信頼を獲得すること。2035年度(2036年3月期)目標は売上高300.0億円、営業利益32.0億円、営業利益率10.7%。
3. 2027年3月期業績見通しと第1四半期の進捗
新中期経営計画初年度である2027年3月期は、売上高25,700百万円(前期比8.0%増)、営業利益1,420百万円(同1.1%増)を見込む。増収ながら微増益にとどまるのは、金融・公共・産業の各部門は堅調に推移するものの、人材・研究開発などの先行投資が利益の伸びを抑える見通しであるためだ。
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高5,175百万円(前年同期比4.3%増)、営業損失4百万円(前年同期は64百万円の営業利益)となった。営業損失の主因は計画的な人材投資や研究開発投資などの先行投資によるものであり、売上高・利益はおおむね計画どおりに進捗していると考えられる。
4. DOE導入による株主還元の強化
同社は株主還元を重要な経営課題と位置付け、高水準かつ安定的な配当を基本方針としている。2026年3月期は、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益が上場来最高益を更新したことを踏まえ、連結配当性向を50%水準まで引き上げ、1株当たり年間配当55.0円(配当性向50.3%)を実施し、5期連続の増配となった。新中期経営計画では、従来の配当性向から、DOE(株主資本配当率)を重視する方針へ転換し、新中期経営計画期間中はDOE3.5〜4.0%を目標としている。2027年3月期は年間62.0円配当(配当性向56.5%)を予定しており、6期連続増配を見込んでいる。
IR活動や経営方針の参考とさせていただくために、皆さまの貴重なお声をお聞かせください。
(所要時間:2〜3分)
会社概要
SMBCグループの信用力と富士通連携を強みに、総合ITサービスを提供
1. 会社概要
同社は、SMBCグループの総合情報サービス会社である。富士通グループのコアパートナーとしても位置付けられており、ユーザー系企業としての安定した経営基盤に加え、メーカー系企業が持つ高度な技術力も備えている。SMBCグループや富士通グループ向けを中心に、システムの企画・構築からパッケージソフト開発、クラウドサービス、BPOサービスなどのアウトソーシングまで幅広く手掛ける。創業以来培ってきた金融・公共・産業分野における業務知識とシステム開発・運用ノウハウが競争力の源泉となっている。
経営理念として、「IT価値を提供することにより、社会・お客さまの発展に貢献する」「変化に対応できる強靭な企業体質を構築し、企業価値の向上を図る」「個人価値を自ら向上させ、組織貢献できる社員に活躍の場を提供する」の3つを掲げている。
同社グループは、三井住友フィナンシャルグループと三井住友銀行の2社をその他の関係会社とし、同社及び連結子会社の(株)KCSソリューションズが事業を担っている。本社を置く神戸と東京、事業所を置く大阪と姫路の4都市を拠点に、日本全国で事業を展開している。
事業は、情報サービス事業とシステム機器販売事業からなる。情報サービス事業では、システム構築やシステム運用管理のほか、セキュリティ・BPOなどの各種ITサービスを提供する。セグメントは組織上の事業部門である「金融関連部門」「公共関連部門」「産業関連部門」に区分され、主要顧客には、三井住友銀行や富士通のほか、兵庫県などの地方公共団体も含まれる。
経営体制は、代表取締役社長の加藤貴紀氏を含む取締役4人(うち社外取締役2人)と、監査役4人(うち社外監査役2人)で構成されており、監査役会設置会社としてガバナンス体制の強化にも取り組む。さらに、現場における迅速な意思決定と監督機能の充実を目的に執行役員制度を導入しており、加藤取締役社長兼社長執行役員、由井真二(ゆいしんじ)取締役兼常務執行役員CTO※1・CAXO※2のほか、19名の執行役員を配置している。2026年3月末時点の連結従業員数は1,056人、単体では961人である。
※1 Chief Technology Officer(最高技術責任者)。
※2 Chief AI Transformation Officer(最高AI変革責任者)。
2. 沿革
同社の前身は1969年3月に、神戸青年会議所などの地元有志が地域経済の発展を目的として設立した、地域のための計算センターである。設立当初は、(株)神戸コンピューターサービスとして、データ入力サービス(パンチ業務)及び計算受託サービスの提供を行っていた。1971年9月には(株)神戸銀行(現 三井住友銀行)と富士通が資本・経営参加し、金融機関とITメーカーを背景とする経営力と技術力を備えた事業基盤を確立した。1973年には(株)姫路電子計算センターとの合併により事業拠点を拡大し、兵庫県下最大級の計算センターへ成長した。
1979年にケーシーエスソフト(株)、1980年にケーシーエスデータ(株)(現 KCSソリューションズ)を設立し、システム構築や機器販売へと事業領域を広げた。1988年には社名を「(株)ケーシーエス」へ変更し、1991年にはケーシーエスソフトを吸収合併した。1992年には(株)太陽神戸三井銀行の商号変更にあわせ、「(株)さくらケーシーエス」へ社名を変更した。
1998年以降は、プライバシーマーク(1998年)、情報セキュリティマネジメントシステムISMS※1(2002年)、ITサービスマネジメントシステム規格ISO/IEC 20000※2(2012年)、事業継続マネジメントシステム規格ISO22301※3(2014年)などの認証取得を通じて、品質、セキュリティ、BCP体制を強化してきた。これにより、運用サービスに強みを持つ総合ITサービス企業としての基盤を構築した。
※1 ISMSは現在、情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格ISO/IEC 27001へ移行している。
※2 ITサービスを提供している組織が、サービスの内容やリスクを明確化することで、ITサービスの継続的な管理、高い効率性、継続的改善を実現するための国際規格である。
※3 事業継続を困難にする地震や火災、ITシステム障害や金融危機、取引先の倒産などの災害・事故・事件などに対して、事業継続能力を効果的かつ効率的に維持・改善するための国際規格である。
また、1999年にアウトソーシングセンターを開設し、2025年にはJDCCティア4※相当の新データセンターを開設してサービス提供体制を強化した。2013年には(株)シィ・エイ・ティを子会社化し、2014年にはケーシーエスデータとシィ・エイ・ティを統合してKCSソリューションズへ商号を変更し、グループ再編と事業効率化を進めた。さらに、2025年には労働者派遣事業及び有料職業紹介事業を開始し、拡大するIT人材ニーズへの対応力強化に取り組んでいる。
※ JDCC(日本データセンター協会)のティアは、データセンターのインフラ水準を一貫した基準で示すための指標であり、ティア4はデータセンターファシリティスタンダードにおける最高基準である。
事業規模の拡大に伴い、2000年6月に大阪証券取引所市場第2部へ上場した。2013年7月に東京証券取引所と大阪証券取引所の統合に伴い東京証券取引所市場第2部へ移行し、2022年4月には東京証券取引所の市場区分見直しにより東京証券取引所スタンダード市場へ移行している。
事業内容
金融・公共・産業向けに、情報サービスの提供やシステム機器販売を行う
1. 事業の概要
同社は、金融機関・地方自治体・民間企業を主要顧客として、情報化の企画段階からシステム構築、システム機器販売、システム運用管理までの総合的なITサービスを提供している。
報告セグメントは、組織上の事業部門として「金融関連部門」「公共関連部門」「産業関連部門」の3区分としている。金融関連部門は金融機関向け、公共関連部門は地方公共団体向け、産業関連部門は一般事業法人向けの事業を担っており、顧客属性ごとに営業体制及びサービス提供体制を構築している。なお、2026年3月末時点の連結従業員数1,056人(単体961人)のセグメント別内訳は、金融226人(182人)、公共271人(248人)、産業396人(379人)、全社共通163人(152人)となっている。
2026年3月期におけるセグメント別の売上高構成比(営業利益構成比※)は、金融関連部門27.5%(29.6%)、公共関連部門30.0%(28.4%)、産業関連部門42.5%(42.0%)となった。特定部門への依存度は低く、バランスの取れた収益構造を形成している点が特徴となる。
※ 営業利益構成比は、セグメント営業利益の単純合計に占める割合で算出している。
2. 顧客基盤と主要取引先
同社の顧客基盤は、金融機関、製造業、流通業、サービス業、地方自治体、学校法人など多様な業種・業態により構成される。
金融分野では、三井住友フィナンシャルグループ及び三井住友銀行を中心に、(株)日本総合研究所、三井住友ファイナンス&リース(株)のほか、地方銀行や信用金庫とも取引を行う。自治体向けでは、兵庫県内の自治体を中心に、全国の大学も顧客に含まれている。民間企業向けでは、化学メーカーなどの製造業をはじめ、流通業やサービス業などの非製造業にもサービスを提供している。
顧客層は幅広いものの、売上高ベースではSMBCグループ及び富士通グループが主要な取引先となっている。2026年3月期において、三井住友銀行(日本総合研究所・日本総研情報サービス含む)向け売上高は全体の22.2%、富士通(富士通Japan含む)向けは15.3%を占めた。SMBCグループの取引は主として金融関連部門が担う。一方、富士通グループとは、金融関連部門、公共関連部門、産業関連部門のすべての部門で取引を行っている。
主要取引先2社向け売上高の推移を見ると、三井住友銀行(日本総合研究所・日本総研情報サービス含む)向けは2023年3月期の4,133百万円をボトムに増加へ転じ、2026年3月期にはSMBCグループの情報化投資拡大を背景に5,280百万円(前期比19.5%増)まで拡大した。過去6期で最高水準を示しており、中期的にも拡大基調が継続する可能性が高い。富士通(富士通Japan含む)向けは2026年3月期に3,631百万円(同3.4%減)となった。直近2期はおおむね横ばいで推移しており、当面は現行水準での推移が続くと見られる。
なお、売上高上位10社が全売上高に占めるウエイトは約5割に達し、上位20社では約6割を占めている。
3. 品目別のサービス内容
同社は各セグメントで顧客属性は異なるものの、提供するサービスは共通しているため、事業内容は品目別にも整理できる。品目は「情報サービス」と「システム機器販売」に大別される。
2026年3月期の品目別の売上高構成比は、情報サービス88.0%、システム機器販売12.0%であった。情報サービスの内訳を全体に占める比率で見ると、システム構築62.7%、システム運用管理17.9%、その他情報サービス7.3%である。情報サービスが全体の約9割を占め、その中でもシステム構築が主力サービスとなっている。品目別の内容は以下のとおりである。
(1) 情報サービス
情報サービスは同社の中核事業であり、顧客の情報化ニーズに対して、企画段階からシステム構築、運用管理、デジタル基盤整備・保守まで、幅広いサービスを提供する。金融、公共、製造、流通、サービスなど多様な業種を対象に、受託開発、クラウド・BPO・データセンターサービス、ネットワーク環境の設計・構築などを組み合わせ、継続的なIT支援を行う。
a) システム構築
システム構築は、全体の売上高の6割強を占める同社グループの主力品目である。金融、公共、製造、流通、サービスなど幅広い業種の顧客に対し、アプリケーション・ソフトウェアの受託開発、パッケージソフトの開発・販売、技術者派遣などを行う。主要取引先は、SMBCグループ、富士通グループ、金融機関、地方公共団体、一般事業法人である。
自社開発のパッケージソフトとしては、国公立大学においてトップクラスのシェアを有する「授業料債権管理システム」に加え、自治体向けの子育て支援・学童保育など周辺業務パッケージ「Sossian」シリーズ、金融機関向けの「決算システム」、民間企業向けで、SMBCグループの決済サービスとの連携が可能な「さくらUTOPIAゲートウェイ(債権管理・入金消込)」などが挙げられる。
b) システム運用管理
システム運用管理は、クラウドサービス、BPOサービス、ハウジングサービスなどのデータセンターサービスに加え、データ入力、印刷などを含めたアウトソーシングサービスで構成されている。主要取引先は、SMBCグループ、金融機関、地方公共団体、一般事業法人である。
c) その他情報サービス
その他情報サービスでは、システム基盤やネットワーク環境など、デジタル基盤に関する設計・構築のほか、有料職業紹介を行っている。また、システム構築、システム運用管理、システム機器販売の取引先などに対し、コンピューター保守業務なども提供している。
(2) システム機器販売
システム機器販売では、各種コンピューター機器の選定・販売に加え、関連する周辺機器や備品などを取り扱っている。主要仕入先は富士通Japan(株)であり、主要販売先はSMBCグループ、金融機関、地方公共団体、一般事業法人である。
信用力・業務ノウハウ・事業ポートフォリオが競争優位性の源泉
4. 強み・特徴
同社の強みとして、(1) SMBCグループの信用力と協働シナジー、(2) 創業以来蓄積してきた豊富なノウハウ、(3) バランスの取れた安定した経営基盤の3点が挙げられる。
同社はSMBCグループの一員として培ってきた高い信用力を持ち、グループ各社との連携によるシナジーを発揮している。金融分野で求められる高い信頼性や安全性への対応力を強みとして、公共分野や産業分野へも事業領域を拡大してきた。また、金融機関、地方自治体、民間企業との長年の取引を通じて、業務知識やシステム開発、運用保守に関する豊富なノウハウを蓄積している。さらに、「金融」「公共」「産業」の3分野がそれぞれ収益基盤を形成しているため、特定業界への依存度が低く、景気や業界動向の影響を分散しやすい。
5. 事業等のリスク・課題
同社を取り巻く事業環境では、生成AIをはじめとする技術革新の進展が大きな変化要因となっている。特に、AIの進化は、システム開発や運用業務の効率化、新たなサービス創出につながる可能性を持つ。一方で、既存のビジネスモデルや顧客ニーズに与える影響については不透明な部分が残り、先行きは見通しにくい。こうした変化へ的確に対応するためには、AIを活用できる高度IT人材の確保・育成に加え、社内体制の整備や業務プロセスの見直しが不可欠となる。対応が遅れた場合には、競争力の低下や成長機会の逸失につながる可能性があるため、同社はこれを重要な経営課題として認識している。
このため同社は、新中期経営計画において、全社業務でAIを利活用し、その実践知の蓄積と共有を進めることで、「ビジネスプロセスの変革」と「新たな価値の創造」を実現するAX(AI Transformation)戦略を推進している。2028年までにAIを全社のビジネスプロセスへ浸透させ、顧客価値及び事業価値の向上に向けて戦略的に活用できる体制を構築することで、競争優位性の確立を目指している。
業績動向
2026年3月期は、システム構築の伸長と採算改善により増収増益を達成
1. 前中期経営計画の概要
同社は前中期経営計画(2024年3月期〜2026年3月期)で、「情報セキュリティが確保され続けることを前提としたうえで、収益力の大幅な飛躍とその利益を源泉とした投資サイクルの確立によりサステナブルな成長を目指す」ことを基本方針として掲げた。そのうえで、(1) 情報セキュリティ強化、(2) 原点回帰、収益基盤の維持・強化、(3) 創造的分野や自社製品・技術による事業拡大、(4) 人(社員等)への投資強化、(5) 社内インフラ投資の強化、の5項目を重点施策として取り組んだ。
具体的な計数計画について見ると、最終年度である2026年3月期に、売上高242.0億円、営業利益9.2億円(営業利益率3.8%)、経常利益10.0億円、親会社株主に帰属する当期純利益6.9億円、ROE3.5〜4.0%、配当性向30〜40%を目指す計画であった。利益を源泉とする投資サイクルを確立する方針の下、計画期間の3ヶ年では売上高・利益ともに着実な成長を目指していた。ただし、計画の起点である2023年3月期の実績は、売上高23,588百万円、営業利益993百万円、営業利益率4.2%、経常利益1,038百万円、親会社株主に帰属する当期純利益748百万円であった。最終年度計画はこれに対して、売上高こそ612百万円の増加を見込む一方、営業利益は73百万円の減少、営業利益率は0.4ポイントの低下を前提とする内容であった。
2. 2026年3月期の業績概要
前中期経営計画最終年度である2026年3月期の連結業績は売上高23,790百万円(前期比5.6%増)、営業利益1,404百万円(同1.9%増)、経常利益1,605百万円(同7.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,224百万円(同6.9%増)となった。経常利益は2期連続、親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続で上場来最高益を更新した。期初予想との比較では、売上高が3.9%、経常利益が3.5%、親会社株主に帰属する当期純利益が14.4%それぞれ上回った。営業利益は0.3%上回り、ほぼ予想どおりの着地となった。
売上面では、金融・公共・産業の各部門でシステム構築が好調に推移したことに加え、公共・産業部門でシステム機器販売が伸びたことが増収に寄与した。売上総利益は、増収効果に加え、収益性の高い案件獲得や不採算案件の抑制がプラスに寄与したことから6,854百万円(前期比9.6%増)となり、売上総利益率は28.8%と前期比1.1ポイント改善した。
利益面では、販管費が前期比11.8%増の5,450百万円となり、売上総利益の伸びを上回る2ケタの増加となった。積極的な採用活動に加え、教育研修拡充やベースアップ(2期連続の約5%の引き上げを実施)などの人材投資、AIをはじめとする研究開発投資を行ったことが費用増加の主因となった。この結果、営業利益の伸びは前期比1.9%増にとどまり、営業利益率は5.9%へ低下した。営業外損益では、資金運用による受取利息が前期の27百万円から107百万円へ増加したことから、経常利益は前期比7.5%増の1,605百万円となった。特別損益では、連結子会社であるKCSソリューションズにおいて減損損失51百万円を計上した一方、投資有価証券売却益94百万円を計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は同6.9%増の1,224百万円となった。
前中期経営計画の最終年度目標と比較すると、売上高は24,200百万円の計画に対して23,790百万円にとどまり、未達となった。一方、営業利益は920百万円の計画に対して1,404百万円、営業利益率も3.8%の計画に対して5.9%と、いずれも計画を大きく上回った。経常利益は1,000百万円の計画に対して1,605百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は690百万円の計画に対して1,224百万円と、いずれも計画を大幅に上回った。ROEは3.5〜4.0%の計画に対して6.0%、配当性向は30〜40%の計画に対して50.3%となり、資本効率と株主還元の面でも計画を超える水準となった。同社はほぼすべての財務目標を達成したと総括している。
なお同社は、2025年4月1日付の組織変更に伴い、2026年3月期より金融関連部門の一部を産業関連部門に集計する方法へ変更している。以下の増減率は、前期の数値を変更後の区分に組み替えたうえで比較したものである。
金融関連部門は売上高6,541百万円(前期比8.0%増)、営業利益1,444百万円(同10.4%増)となり、増収・増益を確保した。SMBCグループ向け情報化投資案件が好調に推移し、システム構築が増加したことが寄与した。
公共関連部門は、売上高7,141百万円(同3.5%増)、営業利益1,386百万円(同21.3%増)となり、増収及び2ケタ増益となった。自治体情報システムの標準化案件が順調に進捗し、システム構築が増加したほか、機器更新案件によるシステム機器販売の伸びも業績を押し上げた。
産業関連部門は、SAPビジネス案件によりシステム構築が増加したことに加え、システム機器販売やそれに付随した機器設定案件などが寄与した。売上高は10,107百万円(同5.5%増)、営業利益2,054百万円(同5.3%増)となり、増収増益を確保した。
品目別売上高は、情報サービスが20,928百万円(前期比4.5%増)、システム機器販売が2,860百万円(同14.1%増)となった。情報サービスの内訳は、システム構築が前期比6.7%増の14,928百万円と好調に推移したほか、その他の情報サービスも同6.9%増の1,741百万円へ伸びた。一方、システム運用管理は同3.3%減の4,259百万円へ減少した。なお、システム構築の受注高は前期比4.8%増の15,344百万円、期末の受注残高は前期末比10.6%増の4,320百万円となった。
高い自己資本比率を維持し、ROEも小幅に改善
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比1,347百万円増加し、26,904百万円となった。主な増減要因を見ると、現金及び預金は減少したものの、売上債権や有価証券の増加が資産を押し上げた。負債合計は前期末比146百万円増加の5,836百万円となった。主な増減要因として、有利子負債が144百万円減少した一方、流動負債のその他が261百万円、繰延税金負債が129百万円増加したことが挙げられる。純資産合計は、主に利益剰余金の増加により、前期末比1,201百万円増の21,067百万円となった。
経営指標では、自己資本比率が前期末の77.7%から78.3%へ上昇し、財務の安全性は引き続き高い水準を維持した。収益性については、人材投資や研究開発投資などの成長投資が増加したため、営業利益率は前期の6.1%から5.9%へ低下した。一方、ROEは5.9%から6.0%へ小幅に改善した。
4. キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、収入が前期比739百万円増加し1,098百万円のプラスとなった。資金の主な増加要因は、前期末の売上債権の回収により2026年3月期の資金流入が増加したためである。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは1,800百万円の支出となり、前期比で支出が4,616百万円減少した。支出が縮小した主な要因は、有価証券の償還による収入があったことに加え、前期に投資有価証券の取得による支出があったことの反動である。財務活動によるキャッシュ・フローは、前期から118百万円支出が拡大し、708百万円の支出となった。主な支出要因は、リース債務の返済及び配当金の支払いである。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は前期末の3,703百万円から2,293百万円へ減少した。
中期経営計画
新中期経営計画では100億円規模の投資により企業価値向上とPBR改善へ
1. 新中期経営計画の概要
前述のとおり、前中期経営計画期間中に金融・公共・産業の各分野でビジネス拡大と価格適正化が進み、収益力が改善した。その結果、最終年度である2026年3月期は、売上高を除く主要な財務目標をおおむね達成した。収益改善に伴ってROEも2023年3月期の4.3%から6.0%へ上昇し、株主資本コストを上回る水準まで向上した。ただし、同社が将来の目標とする8.0%には届いておらず、情報・通信業の平均も下回っている。また、PBRも1.0倍を下回る水準にあることから、同社は中長期的な企業価値の向上を今後の重要な経営課題として改めて認識した。
こうした課題認識を踏まえ、同社は「2035年にめざす姿」として、社会や顧客ビジネスの発展に貢献する高付加価値ソリューションを提供し、高い収益力と企業価値の向上を通じて、ステークホルダーから揺るぎない信頼を獲得することを掲げている。2032年3月期のROE8.0%の達成を目安として、100億円規模の積極的な成長投資を行い、さらなる収益力の拡大を図るとともに、より株価水準を意識した経営を行うことで企業価値を向上させ、2029年3月期にPBR1.0倍以上の実現を目指す。
今後は、高収益が期待できるソリューションビジネスやセキュリティ・デジタル基盤ビジネスの拡大により利益率の向上を図る。また、DOEを軸とした株主還元の強化や政策保有株式の縮減を進めることで資本効率を改善し、ROE向上とPBR改善につなげる考えである。
今回策定した新中期経営計画「中期経営計画2026-2028」は、「2035年にめざす姿」の実現に向け、AI利活用によるビジネスモデル変革を前提に、事業ポートフォリオの変革と人的資本経営の進化に挑む最初の重要な期間と位置付けられている。具体的には、事業戦略、人材戦略、投資・財務戦略、AX戦略の4つの基本戦略とサステナビリティ基本方針を軸に、収益力拡大と企業価値向上を推進する。
同社では、経営環境は不確実な状況が続くものの、セグメント別に見たIT投資需要は堅調に推移する前提としている。金融関連部門ではSMBCグループ向け情報化投資案件が当面継続するほか、公共関連部門では自治体情報システムの標準化案件が2028年まで継続する。産業関連部門でもSAPのS/4HANA移行、サイバーセキュリティ対策、DX推進などによりIT投資需要は堅調に推移すると見ている。
これらを踏まえて、新中期経営計画最終年度の2029年3月期には、売上高280.0億円、営業利益19.0億円、営業利益率6.8%、ROE6.4%、DOE3.5〜4.0%の達成を経営目標として掲げている。
事業、人材、財務、AXの基本戦略を基に成長基盤の再構築を図る
2. 4つの基本戦略
(1) 事業戦略
事業戦略では、同社の強みを生かせる分野に経営資源を集中投下し、成長領域へのシフトと収益性の高い事業ポートフォリオへの転換を進める。具体的には、SMBCグループ向け「開発内製化支援ビジネス」を安定成長の基盤として拡大するとともに、「ソリューションビジネス」と「セキュリティ・デジタル基盤ビジネス」を高収益化の柱として育成する。これら3つの重点ビジネスに投資とリソースを積極的に振り向けることで、収益力の向上を図る。同社は各ビジネスを、市場性と自社の強みの2軸で4つの領域に区分している。ともに高い「コア・注力事業」には前述の3ビジネスを位置付けてリソースを積極投入し、強みはあるものの市場性が限られる運用支援などは「安定事業」として効率性を重視する。市場性は大きいが強みが確立していない領域を「育成事業」、いずれも低い領域を「構造変革事業」とし、上位領域への移行を進める。
ソリューションビジネスでは、SAPなどのERP、自治体、地銀・信金、学校、化学、経理業務などの自社及び他社ソリューションの販売・導入・保守に注力し、顧客のDX推進や業務課題の解決を支援する。SMBCグループ向けビジネスでは、データガバナンスやEUC(エンドユーザーコンピューティング)領域など、同社の強みを生かせる分野へ注力する。AI活用の拡大とも連動し、従来の労働力提供型から、AIを活用した価値提供型のビジネスモデルへの転換を図る。一方、セキュリティ・デジタル基盤ビジネスでは、サイバーセキュリティリスクやサプライチェーンリスクの高まりを事業機会と捉える。金融機関向けサイバーセキュリティフレームワークに則した自社対策ノウハウと、2025年10月に開設した新データセンターの強固なファシリティを活用し、セキュリティ対策からデジタル基盤の構築、運用サポートまでを一体で提供する方針である。
(2) 人材戦略
人材戦略においては、事業戦略を実現する源泉として人材を位置付け、「新しいことに果敢に挑戦し、自ら主体的に行動できる自律的な人材」の獲得・育成・定着を進める。これにより、事業成長を支える人材基盤を強化する。事業成長で得られた成果は、賃金、賞与、福利厚生、教育研修などを通じて従業員へ還元する方針である。また、成長と挑戦を適切に評価へ反映できるよう、人事評価制度を抜本的に見直す。なお、2027年3月期には3期連続となる平均約5%のベースアップを実施している。
さらに、AIなどの新技術に実際に触れる機会を提供し、基礎から実務レベルまで段階的に学べる学習プラットフォームを整備することで、一人ひとりの成長を後押しする。働きやすい職場環境の整備も重視しており、フリーアドレス化、リラックススペースの拡充、在宅勤務やフレックス勤務制度の活用、出産・育児・介護との両立支援、健康経営の推進を通じて、多様な人材が活躍できる組織づくりを進める。
(3) 投資・財務戦略
投資・財務戦略では、PBR1.0倍以上の実現に向け、収益力の強化、資本配分の適正化、資本市場からの期待値最大化に取り組む。前述のとおり、収益性は改善しているものの、資産効率や財務レバレッジには改善余地があるとの認識から、適切な資本配分を通じて企業価値の向上を目指す。
新中期経営計画期間中の営業キャッシュ・フローは、人材投資・研究開発費を控除する前の段階で約125億円を見込んでいる。そのうえで、人材投資に約45億円、研究開発に約5億円、商品力強化に約15億円、設備投資に約40億円を配分する計画である。さらに、M&Aやアライアンスによる資本提携も選択肢に含め、将来の成長に向けた投資を進める。
株主還元の詳細については後述するが、DOEを新たな指標とし、キャッシュ・アロケーションにおける投資計画と余剰資金の状況を踏まえながら、株主還元を実施する方針である。2027年3月期から2029年3月期までの計画期間においてDOE3.5〜4.0%の水準を確保することを目指す。
(4) AX戦略
AX戦略では、全社業務でAIを利活用し、その実践知の蓄積と共有を継続することで、ビジネスプロセスの変革と新たな価値創造を実現する。
事業面では、エンジニアの役割を「実装者」から「価値創出の設計者・指揮者」へ再定義し、開発品質と生産性の飛躍的な向上を目指す。2025年時点のAI成熟度を準備・PoV※段階と捉え、2028年には戦略的活用段階へ到達する目標を掲げている。業務面では、AIとの共創により営業を高度化し、営業効率の向上と営業力の強化を両立させる。間接業務についても、AIによる支援を受ける段階から従業員がAIを指揮する段階へ転換し、属人化の排除と生産性の向上を図る。
※ 「Proof of Value(価値実証)」の略で、製品やサービスが実際にどれだけの価値を提供できるかを検証するプロセスを指す。
推進体制としては、CAXOの統括の下、AX推進部(AI専任組織)と事業部推進リーダーで構成するAI CoEが、AI・セキュリティ統合ガバナンス体制を構築し、AXのけん引役を担う。AI利活用に伴うリスクを情報セキュリティと一体で捉え、倫理性、透明性、安全性、法令遵守、公平性、説明責任、人間中心の設計を重視しながら、AIの活用を進める方針である。
3. サステナビリティ基本方針
サステナビリティについて、同社はSMBCグループの一員として同グループの方針に沿いながら、同社グループの経営理念に基づく企業活動を通じて、持続可能な社会の実現と自社グループの持続的成長の両立に取り組む。
重点強化テーマには、持続的成長の源泉である人材への積極投資、多様な人材がいきいきと活躍できる就労環境と企業風土の醸成、深刻化するサイバーセキュリティリスクへの継続的な対策強化を掲げている。
これら3つのテーマには、2029年3月期末時点の目標を設定している。人材への投資では、1人当たりの年間教育投資を12万円以上とし、売上高比率0.6%以上を目安に継続的な投資を実施する。就労環境では、従業員アンケートにおけるエンゲージメントスコアを指標とし、アンケートを年1回以上実施して結果を施策へ反映する。併せて、男性の育児休暇取得率100%、管理職に占める女性の割合10%以上を目標としている。セキュリティでは、連結売上高セキュリティ投資比率について、(一社)日本サイバーセキュリティ・イノベーション委員会が大企業向けに推奨する0.5%以上の水準を維持する。
また、具体的な取り組みとしては、社内手続きや取引書類の電子化、再生可能エネルギー利用率の向上、ITサービスを通じた貢献、キャリア形成支援、ダイバーシティ推進、健康経営、DX・AX・セキュリティ対策ソリューションを推進する計画である。
今後の見通し
2027年3月期は増収を見込む一方、先行投資の拡大により小幅増益を見込む
1. 2027年3月期業績見通し
新中期経営計画の初年度である2027年3月期の業績予想は、売上高25,700百万円(前期比8.0%増)、営業利益1,420百万円(同1.1%増)、経常利益1,620百万円(同0.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,230百万円(同0.5%増)となっている。増収を見込む一方で、利益面では小幅な増益にとどまる見通しである。
前期比8.0%の増収を見込む主な要因として、金融関連部門においてSMBCグループを中心とするIT投資の継続が見込まれること、公共関連部門で本格化した自治体システム標準化案件の継続が期待されること、産業関連部門では収益性の高いSAPビジネスの拡大が想定されることが挙げられる。
損益面では、増収効果に加え、収益性の高いビジネスに注力することによる売上総利益率の改善を見込んでいる。一方で、人材確保に向けた処遇改善として3期連続で平均約5%の給与ベースアップを実施したほか、積極的な採用活動、生成AI活用推進、新データセンター関連など、将来の収益獲得に向けた先行投資を拡大する計画である。この結果、営業利益の伸びは前期比1.1%増にとどまり、営業利益率は前期の5.9%から5.5%へ低下する見込みである。
2027年3月期第1四半期は、成長投資の増加により利益は前年同期を下回る
2. 2027年3月期第1四半期の業績概要
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)業績は、売上高5,175百万円(前年同期比4.3%増)、営業損失4百万円(前年同期は64百万円の営業利益)、経常利益103百万円(同24.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は71百万円(同22.6%減)となった。売上高は前年同期を上回ったものの、営業損益は赤字に転じ、経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益は減益となった。もっとも、減益の主因は計画的な成長投資によるものであり、売上高・利益面ともにおおむね会社想定に沿って進捗していると考えられる。
売上面は、産業関連部門においてシステム構築及びシステム機器販売が減少したものの、金融関連部門においてシステム構築が増加したことにより増収となった。
利益面を見ると、増収効果や収益性の高い案件の寄与により売上総利益は前年同期比5.9%増となり、売上総利益率も同0.4ポイント改善し26.3%へ上昇した。しかし、販管費の増加が売上総利益の伸びを上回ったことで営業損失に転落した。販管費は、オフィス環境整備などの設備投資に加え、給与のベースアップや人材育成のための教育研修など、成長に向けた先行投資を実施した結果、1,365百万円(同11.9%増)へ増加した。営業外損益では、期末に係る受取配当金及び資金運用による受取利息が増加したものの、先行投資による営業損失の影響を吸収するには至らず、経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益ともに2ケタ減益となった。
なお2027年3月期第1四半期より、2026年4月1日付の組織変更に伴い、産業関連部門の一部を金融関連部門に集計する方法へ変更している。以下の増減率は、前年同期の数値を変更後の区分に組み替えたうえで比較したものである。セグメント別に見ると、金融関連部門はSMBCグループ向けの収益性の高い情報化投資案件が寄与し、売上高2,064百万円(前年同期比24.2%増)、営業利益507百万円(同51.2%増)と2ケタの増収増益となった。公共関連部門は自治体情報システムの標準化案件が計画どおりに進捗し、売上高1,246百万円(同0.8%増)、営業利益67百万円(同0.6%増)と、前年同期並みの水準を確保した。一方、産業関連部門は前期にあった高採算の大口システム構築案件やシステム機器導入案件の反動減に加え、SAPビジネスに関わる人材育成のための成長投資が影響し、売上高1,864百万円(同9.6%減)、営業利益280百万円(同28.3%減)の減収減益となった。
AI活用、人的資本、株主還元を軸に中期経営計画は計画どおり進展
3. 中期経営計画の進捗状況
第1四半期における中期経営計画の主な取り組みについて、同社は計画どおりに進捗しているとの認識を示している。株主還元では、DOEを指標とする方針の下、2027年3月期は年間62.0円の配当を予定しており、6期連続増配を見込んでいる。
新たな収益獲得に向けた研究開発については、システム開発の要件定義から運用保守までAIと協働する新プロセスの検証に着手し、第1四半期に41百万円を研究開発に投資した。また、AI利活用に関してはCAXOとAX推進部を新設し、AI CoEと連携してERP人材育成、案件マッチング、契約事務効率化など複数のテーマを始動させている。さらに、AIプロンプトコンテストを通じて現場発の知見共有も進めている。
人的資本経営の進化に向けては、3期連続で平均約5%のベースアップを実施したほか、オンライン学習サービスを導入し、勤続3年以上の社員を対象とするキャリアデザイン休職制度も整備した。これらにより、人材の獲得・育成・定着を支える基盤を一段と強化している。
株主還元策
DOEを新たな指標として導入し、株主還元の強化を進める
同社は株主還元を経営上の重要課題の1つと位置付け、「高水準かつ安定的な配当」を基本方針として積極的に推進している。前中期経営計画では、連結配当性向30〜40%を目安とした安定配当を掲げていた。
前述のとおり、2026年3月期の業績拡大を踏まえ、同社は業績や財務状況、投資計画などを総合的に勘案し、連結配当性向を50%水準まで引き上げた。1株当たり年間配当55.0円(中間配当17.0円)を実施し、5期連続の増配となった。これにより、配当性向は50.3%、DOEは3.2%となった。
一方、新中期経営計画では、従来の配当性向に基づく利益連動型の還元方針から、DOEを重視する株主還元方針へ転換した。これは、成長投資を積極的に進めるなかで、利益水準の変動に左右されやすい配当性向から、DOEに転換することで、高水準かつ安定的な配当を積極的に推進する姿勢を投資家へ明示するものである。資本政策の面では、保有意義が低下した政策保有株式を計画的に売却するとともに、ROEが資本コストを上回る水準を確保しながら、余剰資本については株主還元及び成長投資へ配分する方針である。また、キャッシュ・アロケーションや余剰資金の状況を踏まえ、新中期経営計画期間中にDOE3.5〜4.0%の水準を維持することを目標としており、株主還元のさらなる拡充・強化を図る。
こうした方針を反映し、2027年3月期の年間配当は6期連続の増配となる1株当たり62.0円(中間配当31.0円)を予定している。これに伴い、配当性向は56.5%まで上昇する見込みであり、引き続き高水準の株主還元が期待される。
IR活動や経営方針の参考とさせていただくために、皆さまの貴重なお声をお聞かせください。
(所要時間:2〜3分)
プロフィール
1985年に和光証券(現みずほ証券)入社、86年和光経済研究所に出向、日本興業銀行、和光証券アメリカ出向。96年より情報サービス、ゲーム等の企業調査を開始し、東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、クレディ・スイス証券で情報サービス・セクターのアナリスト業務に従事し、みずほ証券ではIPO・中小型株を担当。日経アナリストランキングで上位の評価を得る(2006年情報サービス・ゲーム部門1位)。2020年からのSBI証券を経てフィスコ客員アナリスト。
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