プロフィール

総合保険代理店で個人を対象とした家計相談やライフプランニングを約10年経験。2021年以降は金融専門ライターとして複数メディアで活動しており、大手証券会社・保険会社や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。 暗号資産や投資信託、国内株式などによる資産運用も積極的に行っている。
国為替市場とは、世界各国の通貨を売買する市場のことです。株式を売買する証券取引所のように特定の場所にあるわけではなく、銀行間取引を通じて世界中の金融機関が電子的に取引を行っています。世界各地の外国為替市場が絶えず通貨の売買を行っているため、外国為替取引は24時間可能です。取引はオセアニア地域から始まり、アジア、ヨーロッパ、最後にニューヨーク市場と続きます。平日であれば外国為替市場はいつでも取引できますが、値動きは一定ではありません。各市場の取引時間や重要な経済指標、各国の金融政策の発表によって、値動きが活発になる時間帯があります。各時間帯で主となる市場の特徴を知っておくことは、効率的な取引を行うために大切な情報です。本記事では、上述の4つの地域における代表的な市場と、その時間帯の特徴をわかりやすく解説します。

日付変更線に最も近いオセアニア地域は、その日の最初にスタートを切る市場です。主にオーストラリアとニュージーランドの市場が中心となり、この地域には以下のような特徴があります。
世界で最も早く取引が開始される:オセアニア市場は、ほかの主要市場に先駆けて取引が始まる市場です。そのため、週末やほかの市場が閉まっている間に出てきた新しい情報が、最初に反映されることがあります。
取引量は少なめ:ほかの地域と比べて取引量が少ないため、流動性は低いといえるでしょう。金融市場において「流動性が低い」とは、取引が活発でなく、売買がスムーズに行われにくい状態を指します。売買が成立しづらい状況や、価格の変動が大きくなりやすい傾向が生じるため注意が必要です。
コモディティ価格に敏感:オーストラリアやニュージーランドは天然資源が豊富な国々であるため、原油や金属、農産物などのコモディティ(原材料)価格に特に敏感です。
為替市場が開いている時間:一般的に日本時間の5:00〜14:00頃です。
以下で、オセアニア地域の代表的な市場を紹介します。
ウェリントン市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:ニュージーランドドル(NZD)
・中央銀行:ニュージーランド準備銀行(Reserve Bank of New Zealand:略称「RBNZ」)
ウェリントン市場は、日本時間の早朝に開き、世界の取引の始まりを告げる市場として機能しています。ニュージーランドの主要産業である酪農業は、乳製品の輸出が輸出全体の約3割を占め、輸出先の多くが中国やオーストラリアです。そのため、ニュージーランドドルは、乳製品、農業物価の変動、中国・オーストラリアの景気動向などに影響される傾向があります。また、ニュージーランド準備銀行の金融政策も、ニュージーランドドルの価格変動に大きな影響を与えます。
シドニー市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:オーストラリアドル(AUD)
・中央銀行:オーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia:略称「RBA」)
シドニー市場も、日本時間の早朝に取引が開始されます。オーストラリアの主要産業は資源産業が中心で、特に鉄鉱石、石炭、天然ガスなどの資源輸出が輸出全体の約7割を占めています。これらの資源商品の価格の動きは、オーストラリアドルの価格変動の大きな一因です。また、中国をはじめとする主要貿易国の経済状況や、オーストラリア準備銀行の金融政策も、オーストラリアドルの価格変動に大きな影響を与えます。

アジア地域は、日本から地理的に近く時差が少ないため、日中に取引が活発に行われる地域です。東京、香港、シンガポールの市場が中心となり、この地域には以下のような特徴があります。
・日本時間の日中に取引が活発に行われる:この地域では前日のニューヨーク市場の動きを引き継ぐ形で取引が始まることが多く、午前中に市場参加者が増え、日本時間の日中での取引が活発化します。
・ヨーロッパ、ニューヨークに続く規模の大きい市場:外国為替市場での取引全体の2割程度を占めます。
・工業製品の輸出が多い:自動車、電子機器、半導体など工業製品の輸出が多く、為替や経済指標に影響を大きく受けます。
・為替市場が開いている時間:一般的に日本時間の9:00〜18:00頃です。
以下で、アジア地域の代表的な市場を紹介します。
東京市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:日本円(JPY)
・中央銀行:日本銀行(Bank of Japan、略称「BOJ」)
東京市場の取引時間は、市場参加者が増え、流動性が高くなる時間帯です。アメリカの経済指標や金融政策による影響度合いが高く、為替の値動きが企業の株価にも影響を与えます。日本国内の経済指標や政策決定に関するニュースや、日本銀行の金融政策も日本円への影響力も大きいです。
香港市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:香港ドル(HKD)
・中央銀行:香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority、略称「HKMA」)
香港市場は、アジアの新興市場や中国本土との関係が強く、中国の経済指標や政策発表の影響を受けます。午前中の取引が一段落した後、欧州市場が開く時間帯に近づくにつれて、午後の時間帯も取引が活発化する傾向があります。
シンガポール市場の特徴
シンガポール市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:シンガポールドル(SGD)
・中央銀行:シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore、略称「MAS」)
シンガポール市場は、アジアのハブとして国際企業や金融機関が集まり、取引量が多い市場です。アジア全体の経済状況や国際ニュースに敏感に反応し、特に東南アジア、中国、インドの経済動向の影響を受けます。また、シンガポールドルは「通貨バスケット制」に基づいて管理されており、シンガポール金融管理局が複数の貿易相手国の通貨を基準に為替レートの変動幅を調整し、通貨の急激な変動を防いでいます。

ヨーロッパ地域は、世界の為替取引の約半数近くの取引が行われる市場規模が最も大きな地域です。フランクフルト市場やロンドン市場が中心となり、次のような特徴があります。
・日本時間の夕方から夜にかけて取引が行われる:アジア市場の動向を引き継ぎ、アメリカ市場が開く前の最も活発に取引が行われる時間帯として注目されます。
・流動性が高い:市場が活発で取引量が大きいため、取引のスプレッド(買値と売値の価格差)が小さく、効率的に取引が進む傾向にあります。
・地政学リスクに敏感:中東やロシアの情勢は、エネルギー供給に関連する地政学的リスクとしてヨーロッパ市場に大きな影響を与えます。特に石油や天然ガスの価格に影響し、市場の変動要因となります。
・為替市場が開いている時間:一般的に日本時間の17:00〜翌1:30頃です。
以下で、ヨーロッパ地域の代表的な市場を紹介します。
フランクフルト市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:ユーロ(EUR)
・中央銀行:欧州中央銀行(European Central Bank、略称「ECB」)
フランクフルト市場は、米ドルに次ぐ世界第2位の基軸通貨であるユーロ(EUR)が主要通貨です。欧州連合(EU)の加盟国数は27カ国であり、フランクフルト市場はユーロ圏最大の金融市場として機能しています。ドイツの経済指標や政策決定が市場に大きな影響を与える一方、ほかの欧州諸国の動向からも影響を受け、相互に関連しあっている市場といえるでしょう。欧州中央銀行が市場を監督しており、金融政策の決定が取引に大きな影響を及ぼします。
ロンドン市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:英ポンド(GBP)
・中央銀行:イングランド銀行(Bank of England、略称「BoE」)
ロンドン市場は、長い歴史を持つ世界最大の外国為替市場です。地理的にアジアとアメリカの市場の間に位置しているため、両市場と重なる時間帯には取引が特に活発になります。英ポンドに加え、ユーロやアメリカドルなどの主要通貨が盛んに取引されています。ロンドン市場は、イングランド銀行の金融政策や国際的な経済ニュースの影響を強く受けるのが特徴です。
また、金の現物価格は、「ロンドンフィキシング」というロンドン貴金属市場協会(LBMA)がロンドン時間の午前と午後に金の取引価格を決定するプロセスで開示され、この価格は金取引の基準として世界中で使用されています。そのため、ロンドン市場は金のトレードにおいても重要な役割を果たしているといえるでしょう。

アメリカ地域は、地理的に1日の世界の取引を締めくくる市場として活発に取引が行われます。ニューヨーク市場が中心となり、次のような特徴があります。
・大企業が集結:世界的に名の知れた企業が上場しており、これら企業の巨大な資金移動や貿易取引が米ドル(為替)の動きに強い影響を与えます。
・取引量と流動性が高い:米ドルは世界で最も取引される通貨であり、ニューヨーク市場は為替取引の中心的な役割を担っています。そのため、市場の流動性が高く、取引がスムーズに行われやすいのが特徴です。
・世界中から注目が集まる:雇用統計や国内総生産(GDP)、連邦準備制度理事会(FRB)の政策発表といったアメリカの主要な経済指標やニュースは、相場に大きな影響を与えます。ほかの市場からも注目が集まり、特に4年に1回のアメリカ大統領選挙は、政治的な変化が市場に大きく反映される重要なイベントです。
・為替市場が開いている時間:一般的に日本時間の21:00〜翌6:00頃です。
ニューヨーク市場の特徴を見ていきましょう。
・主要通貨:米ドル(USD)
・中央銀行:アメリカ連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board、略称「FRB」)アメリカ連邦準備制度(Federal Reserve System、略称「FRS」)
ニューヨーク市場は、世界の外国為替市場でロンドン市場に次いで2番目に取引量が多い市場です。主要通貨である米ドルは、世界の基軸通貨としての機能も持ち、グローバルな取引において為替市場における影響力が最も大きいといえるでしょう。
そのため、アメリカの経済指標やFRB(アメリカ連邦準備理事会)の金融政策発表に注目が集まります。特に、ロンドン市場と取引が重なる時間帯は取引量が最も多く、値動き幅(ボラティリティ)が高くなる傾向にあります。また、ほかの市場と同様に、国際的な地政学的リスクが米国経済や金融市場に影響を与えることがあり、その代表的な例として中近東の情勢が挙げられるでしょう。中近東の不安定な状況が石油価格に影響を与え、それが米国市場に波及し、さらにほかの地域にも影響を及ぼすことがあります。
為替市場は24時間取引できますが、取引が特に活発になる時間帯が存在します。市場の開始直後や他市場と重なる時間帯は、注目すべき時間帯といえるでしょう。
市場の開始直後は、各市場が開くと、新しいニュースや情報が最初に反映されます。そのため、取引が活発になり、値動きが大きくなる傾向があります。また、他市場との重なる時間も取引量が増加します。ロンドン市場とニューヨーク市場の取引時間が重なるときは特に増加し、流動性が高まります。
各市場の特徴を知り、取引が活発になる時間帯やイベントに注目することで、効率的な投資が可能になりますので、ぜひ今後の為替取引の参考にしていただけたらと思います。
記事公開日:2024年12月24日
記事更新日:2026年8月12日